退職所得の受給に関する申告書の書き方|出さないと20.42%、出し忘れの戻し方

【この記事でわかること】
・退職所得の受給に関する申告書が何のための書類か
・出す場合と出さない場合で、源泉徴収がどう変わるか
・書き方で迷いやすい欄と、出し忘れたときの取り戻し方

退職や転職が決まると、手続きの書類が一気に増えます。その中に、見落としやすいのに金額への影響が大きい書類が1枚あります。それが「退職所得の受給に関する申告書」です。
「会社が処理してくれるはず」と思っていると、提出のタイミングを逃すことがあります。信託実務で退職金や年金のお話に触れていると、この書類の名前は聞いたことがあっても、中身まで知っている方は多くないと感じます。
この記事では、国税庁の公式資料だけを根拠に、書類の役割・出さなかった場合・書き方・出し忘れたときの取り戻し方を順番に整理します。個別の税額の判断には踏み込まず、ルールの読み方に絞ります。
📌 退職所得の受給に関する申告書とは?
退職金などの退職手当等を支払う側は、所得税と復興特別所得税を源泉徴収して納めます。その計算方法は、退職する人から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けているかどうかで変わります(国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収・令和8年4月1日現在法令等)。
つまりこの申告書は、「退職金から引かれる税金の計算方法を決めるための書類」です。国税庁の手続案内では、国内で退職手当等の支払を受ける居住者は、この申告を行わなければならないとされています(国税庁 A2-29 退職所得の受給に関する申告)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出が必要な人 | 退職手当等の支払を受ける居住者(国内で支払を受ける場合) |
| 提出時期 | 退職手当等の支払を受ける時まで |
| 提出先 | 退職手当等の支払者(勤務先など)。税務署への提出は、特に求められた場合を除き不要 |
| 出さなかった場合 | 退職手当等の金額に20.42%の税率で源泉徴収される |
出典:国税庁 A2-29・国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収
提出先は税務署ではなく、退職金を支払う側です。支払者は、税務署長から特に提出を求められた場合以外は、税務署へ出す必要がなく、自分で保管します。なお、支払者が所定の要件を満たしていれば、申告書は電磁的方法で提供することもできます(国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収)。
💰 出す場合と出さない場合で、源泉徴収はこう変わる
提出した場合は、勤続年数から退職所得控除額を出し、(収入金額-退職所得控除額)の2分の1を課税退職所得金額として、速算表で税額を求めます。控除額の計算式は、勤続20年以下なら40万円×勤続年数、20年超なら800万円+70万円×(勤続年数-20年)です(国税庁 No.1420)。
提出しなかった場合は、こうした控除を使った計算は行われず、退職手当等の支給額に一律20.42%の税率を乗じた額が源泉徴収されます。
| 申告書を提出した場合 | 申告書を提出しなかった場合 | |
|---|---|---|
| 源泉徴収の計算 | 退職所得控除と2分の1を使った課税退職所得金額に、速算表の税率を適用 | 退職手当等の支給額に一律20.42% |
| 国税庁の計算例(退職金800万円) | 91,890円 | 1,633,600円 |
| 確定申告との関係 | 医療費控除などで確定申告をするときは、退職所得も含めて申告する | 本人が確定申告をして精算する |
出典:国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収の具体例(退職金800万円・勤続期間10年2か月)。提出した場合は、勤続年数11年・退職所得控除額440万円・課税退職所得金額180万円として国税庁が計算しています。
この比べ方は、国税庁が同じ退職金800万円で示した具体例どおりの数字です。差額は1,541,710円(1,633,600円-91,890円)になります。ただし、これは源泉徴収の段階での差です。提出しなかった場合も、本人が確定申告をすれば、提出した場合と同様の計算で精算できます(次の節で触れます)。

✍️ 申告書の書き方、迷いやすいのはここ
令和8年1月1日以後の分の様式が、国税庁のページに載っています(国税庁 A2-29)。国税庁の記載要領から、迷いやすい欄だけ拾うと次のとおりです。
| 欄 | 書くこと | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| ① | 退職年月日 | 決議で金額が決まる役員の退職手当等は、決議の年月日 |
| ② | 障害者になったことで退職した人は「障害」、その他は「一般」に○。生活扶助の有無も | 障害の状態や手帳の交付年月日の記入が必要な場合がある |
| ③ | 今回の退職手当等の勤続期間とその年数 | 1年未満の端数は切上げ |
| ④〜⑤ | 本年中に支払を受けた他の退職手当等の勤続期間と、通算した勤続期間 | 重複部分は二重に数えない |
| ⑥ | 前年以前の退職手当等の勤続期間 | 前年以前4年内・9年内・19年内のどれが対象かは、受け取る一時金の種類で変わる |
出典:国税庁 退職所得の受給に関する申告書(令和8年1月1日以後分)の「申告書の書き方」(2026-10-05確認)
とくに⑥欄は、iDeCoなどの老齢一時金や、複数の退職金を受け取る人ほど悩みやすい欄です。本年にiDeCoなどの老齢一時金を受け取る場合は、前年以前19年内に受け取った退職手当等が重複調整の対象です。逆に、前年以前9年内にiDeCoなどの老齢一時金(令和8年1月1日以後に受け取ったもの)を受け取っていて、本年に退職手当等を受け取る場合は、令和8年1月1日以後に受け取った前年以前9年内の退職手当等が対象になります(国税庁 No.2735)。仕組みの詳細は、あわせて読みたい記事で整理しています。
同じ年にほかの退職手当等を受け取っている場合は、その退職手当等の「退職所得の源泉徴収票」(またはその写し)を申告書に添付します。また、この書類の注意事項には、提出しない場合の20.42%のほか、市町村民税・道府県民税について延滞金を徴収されることがある、という記載もあります。住民税の扱いが気になる方は、お住まいの市区町村にご確認ください。
⚠️ 記入の可否は、あなたの状況で変わります
勤続期間の通算や、前年以前の退職手当等との重複は、人によって扱いが異なります。この記事は国税庁の記載要領の紹介までです。実際の記入は、支払者の担当部署や税務署、税理士など専門家にご相談ください。
😱 出し忘れた・出さずに受け取ったらどうする?
申告書を出さずに20.42%が源泉徴収された場合は、受給者本人が確定申告をして、提出した場合と同様の計算で精算します(国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収)。払いすぎていた税金は、還付申告で戻る仕組みです。
還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁 No.2030 還付申告)。「確定申告の時期を逃したから、もう無理」とは限りません。
📅 出し忘れたときの流れ
20.42%を源泉徴収
還付申告ができる
提出できる
確定申告書では、退職所得は申告書の第三表と第二表を使い、「退職所得に関する事項」欄も記入します。具体的な記入方法は、国税庁の退職所得の記入方法等(令和7年分の確定申告の手引き)に載っています。
一方、申告書を提出済みの人でも、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告をするときは、退職所得の金額を含めて申告する必要があります(国税庁 A2-29の注意書き)。「申告書を出したから確定申告はいつも不要」ではない点にご注意ください。
なお、令和9年分以後は、源泉徴収の対象に防衛特別所得税が加わる旨が国税庁のページに書かれています。20.42%という数字そのものがどう扱われるかは、今回確認した資料には記載がありませんでした。受け取る時期が近い方は、最新のページで確認してください。

🙋 よくある質問
Q1. 申告書は税務署に提出しますか?
提出先は退職手当等の支払者です。支払者は、税務署長から特に提出を求められた場合以外は、税務署へ出す必要がありません(国税庁 A2-29)。
Q2. いつまでに出せばいいですか?
退職手当等の支払を受ける時までに提出します。出さなかった場合は、退職手当等の金額に20.42%の源泉徴収が行われます(国税庁 A2-29)。
Q3. 紙ではなく電子で出せますか?
支払者が所定の3つの措置を講じていれば、申告書は電磁的方法で提供できると国税庁は説明しています(国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収)。使えるかどうかは、勤務先の運用で決まります。
✅ この記事のポイント
- 申告書は、退職手当等の支払を受ける時までに、支払者へ提出する
- 出さないと、退職手当等の金額に一律20.42%が源泉徴収される
- 国税庁の例(退職金800万円)では、提出ありは91,890円、提出なしは1,633,600円
- 出し忘れても、確定申告(還付申告)で精算できる。還付申告は翌年1月1日から5年間
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🌱 まとめ
退職所得の受給に関する申告書は、退職金から引かれる税金の計算方法を決める、1枚の書類です。退職手当等の支払を受ける時までに支払者へ出せば、控除を使った計算で源泉徴収されます。出さなければ、一律20.42%です。
元国税職員として源泉徴収の仕組みを読むときは、「誰に」「いつまでに」「出さなかったらどうなるか」の3点を先に押さえます。出し忘れても確定申告で精算できますが、手間が増えます。自分で学ばないと、だれも教えてくれないからこそ、このブログをきっかけに学ぼうと思っていただけると嬉しいです。
次回は「社会保障協定とは?脱退一時金との違い」について解説予定です。お楽しみに!


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