遺族年金とは?いくらもらえる?2028年の大改正を解説
【この記事でわかること】
・遺族基礎年金・遺族厚生年金それぞれの受給要件と令和8年4月分の金額
・自分の老齢年金と遺族年金は両方もらえるのか、65歳の壁
・遺族年金に税金はかかるのか、確定申告は必要か
・2028年4月から遺族厚生年金が大きく変わる「男女差解消」の中身
「遺族年金は、夫を亡くした専業主婦のための制度」——そんなイメージを持っていませんか。国税局に勤めていた頃、確定申告の時期には「遺族年金をもらっているのですが、申告は必要ですか?」という質問を受けることがよくありました。遺族年金はそもそも税金がかからないので申告の必要はないのですが、それだけ仕組みがわかりにくい制度なのだと感じていました。
実は2028年4月から、この制度は大きく変わります。長年「妻のための制度」だった遺族厚生年金が、共働き世帯が当たり前になった今の時代に合わせて作り直されるのです。共働きだから自分には関係ない、と思っている方こそ知っておいてほしい制度改正です。今日は基本の仕組みから2028年の改正まで、一緒に整理していきましょう。
遺族年金とは?遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い
遺族年金は、国民年金・厚生年金の被保険者や年金受給者が亡くなったとき、遺族の生活を保障するために支給される年金です。「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2階建て構造になっており、亡くなった方の働き方や、受け取る遺族の状況によって、もらえる金額・期間が大きく変わります。
| 区分 | 受け取れる遺族 | 主な要件(亡くなった方) |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 18歳年度末までの子がいる配偶者、または子本人 | 国民年金の被保険者中の死亡、または保険料納付済期間25年以上等 |
| 遺族厚生年金 | 子のある配偶者を最優先に、子・子のない配偶者・父母・孫・祖父母の順で1名 | 厚生年金保険の被保険者中の死亡、または受給資格期間25年以上等 |
遺族基礎年金は、子のある配偶者が受給している間、または子が父母と生計を同じくしている間は、子には支給されません。
遺族厚生年金は、遺族基礎年金と違って子のいない配偶者も対象になる点が特徴です。ただし、子のない30歳未満の妻は5年間のみの受給、子のない夫は55歳以上に限り60歳から受給開始と、現行制度では男女で扱いが異なります(この違いが2028年に見直されます。詳しくは後述します)。
いくらもらえる?令和8年4月分の年金額
令和8年4月分からの遺族基礎年金は、子のある配偶者が受け取る場合、基本額84万7,300円(昭和31年4月2日以後生まれ)に子の加算額を足した額です。
| 世帯構成 | 令和8年4月分からの年額 |
|---|---|
| 配偶者+子1人 | 1,091,100円 |
| 配偶者+子2人 | 1,334,900円 |
| 配偶者+子3人 | 1,416,200円 |
子の加算額は、1人目・2人目が各24万3,800円、3人目以降は各8万1,300円と、3人目から単価が下がる仕組みです(昭和31年4月1日以前生まれの方の基本額は84万4,900円)。
厚生年金保険に加入していた方が亡くなった場合は、これに遺族厚生年金(死亡した方の老齢厚生年金・報酬比例部分の4分の3)が上乗せされます。被保険者期間が300月(25年)未満でも300月とみなして計算する最低保障があるため、加入期間が短くても一定額は確保される仕組みです。
また、40歳から65歳になるまでの間、子のない妻(夫の厚生年金加入期間20年以上が条件)には、中高齢寡婦加算として年額63万5,500円(令和8年度)が上乗せされます。
✅ 年金額のポイント
- 遺族基礎年金は子の人数で加算額が変わり、3人目から単価が下がる
- 遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3が基本、加入期間25年未満でも最低保障あり
- 40〜65歳の子のない妻には中高齢寡婦加算(年額63万5,500円)が上乗せされる
自分の年金と両方もらえる?65歳の壁
「将来、自分の老齢年金と遺族年金は両方もらえるの?」という疑問もよく聞かれます。答えは年齢によって変わります。
📅 年齢で変わる併給ルール
どちらか一方を選択
両方を一部受給できる場合も
64歳以下は「1人1年金」の原則により、自分の老齢年金と遺族年金のどちらか一方を選んで受給します。
65歳以上になると、まず自分の老齢基礎年金・老齢厚生年金を全額受給したうえで、遺族厚生年金は次の①②のうち高い方の額から自分の老齢厚生年金額を差し引いた差額だけが上乗せされます。
①本来の遺族厚生年金額(死亡した方の報酬比例部分×4分の3)
②(本来の遺族厚生年金額×3分の2)+(自身の老齢厚生年金額×2分の1)
自分の老齢厚生年金額が遺族厚生年金額以上であれば、遺族厚生年金は全額支給停止(0円)になります。厚生年金への加入歴が長い方ほど、②の計算式が有利に働く場合があるため、自分の年金記録を確認しておくとよいでしょう。
遺族年金に税金はかかる?確定申告は必要?
国民年金法・厚生年金保険法などに基づいて遺族に支給される遺族年金には、所得税(復興特別所得税を含む)も相続税もかかりません。遺族基礎年金・遺族厚生年金はどちらも非課税です(出典:国税庁「No.1605 遺族の方に支給される公的年金等」)。
課税の対象ではないため、日本年金機構から遺族年金についての「公的年金等の源泉徴収票」は送られてきません。源泉徴収票が届くのは、老齢または退職を理由とする年金を受けている方だけです(出典:日本年金機構「障害年金や遺族年金を受けている人にも公的年金等の源泉徴収票は送付されるのでしょうか。」)。
そして国税庁は、非課税所得について「所得金額の計算から除かれますから、非課税の適用を受けるための手続は原則として必要ありません」と説明しています(出典:国税庁「No.2011 課税される所得と非課税所得」)。つまり、遺族年金を収入に含めて確定申告をする必要はありません。ただし、給与や自分の老齢年金など、ほかに課税される所得がある場合は、その分について申告が必要になることがあります。
💡 「未支給年金」は扱いが違う
亡くなった方が受け取るはずだった年金のうち、まだ支払われていなかった分(未支給年金)を遺族が請求して受け取った場合は、遺族年金とは別の扱いになり、受け取った遺族の一時所得として課税の対象になります。
なお、65歳以上になると、遺族年金と自分の老齢年金をあわせて受け取る方も増えます(前の「65歳の壁」の見出しを参照)。遺族年金は非課税ですが、老齢年金は課税の対象です。ただ、老齢年金などの公的年金等を受け取っている方には、次の条件をすべて満たせば所得税の確定申告をしなくてよい「公的年金等に係る確定申告不要制度」があります。
| 確定申告不要制度の条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 公的年金等の収入金額 | 400万円以下 |
| ② 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額 | 20万円以下 |
| ③ 年金の種類 | 源泉徴収の対象になる公的年金等であること(外国の法令に基づく年金を受け取っている方は対象外) |
ここでいう「公的年金等の収入金額」に、非課税の遺族年金は含まれません。日本年金機構も、公的年金等の収入額について「遺族年金・障害年金は含まれません」と説明しています。つまり400万円の判定は、自分の老齢年金などの金額だけで考えればよいということです。
出典:日本年金機構「収入が公的年金等の場合 所得金額の早見表」/日本年金機構「扶養親族等申告書を提出する際の所得計算における非課税所得とは、どのようなものですか。」
💡 「申告不要」でも申告したほうがいい場合
この制度で確定申告が不要な方でも、医療費控除や社会保険料控除などで所得税の還付を受けるための確定申告はできます。また、確定申告をしない場合は、公的年金等の源泉徴収票に載っていない控除(医療費控除・生命保険料控除など)が住民税の計算に入らないため、住民税の申告が必要になる場合があります。
出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」/政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」/鈴鹿市「年金が400万円以下であれば申告しなくてもよいのですか」
2028年4月、何が変わる?男女差解消の大改正
2025年6月13日に成立した年金制度改正法(令和7年法律第51号)により、遺族厚生年金は2028年4月から大きく見直されます。最大のポイントは「男女差の解消」です。
現行制度では、子のない配偶者が遺族厚生年金を受け取る場合、次のように男女で扱いが異なります。
| 配偶者の死亡時点 | 現行制度 | 2028年4月以降 |
|---|---|---|
| 妻が30歳未満 | 5年間のみ受給 | 原則5年間の有期給付(男女共通) |
| 妻が30歳以上60歳未満 | 生涯受給 | 原則5年間の有期給付(増額) |
| 夫が55歳未満 | 受給権なし | 原則5年間の有期給付(増額) |
つまり2028年4月以降は、配偶者の死亡時点で60歳未満・子がいない場合、男女とも原則「5年間の有期給付」に統一されます。60歳以上で受給権が発生した場合は、現行どおり無期給付のままです。
受給期間が短くなる代わりに「有期給付加算」がつき、月々の受給額は現行の約1.3倍に増額されます。あわせて年収850万円以上の方への支給停止要件も撤廃されるため、これまで対象外だった高収入の方も受け取れるようになります。
この改正で新たに受給対象となる男性は年間約1万6,000人と見込まれる一方、施行直後に対象となる女性(40歳未満・子なし)は年間約250人と、影響の大きさには男女で差があります。なお、18歳年度末までの子がいる間は現行どおり無期給付が維持され、この見直しの影響を受けません。2028年度に40歳以上になる女性や、既に受給権を得ている方も対象外です。
5年間の有期給付が終わったあとも、障害状態にある方や、収入が十分でない方には「継続給付」というセーフティネットが用意されています。単身で就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下なら継続給付が全額支給され、収入が増えるにつれて緩やかに調整されながら、概ね月額20〜30万円を超えると支給停止となります。
あわせて、遺族基礎年金の「子の加算額」も見直され、現行は1・2人目が各23万4,800円、3人目以降が各7万8,300円(2024年度価格)と差がありますが、改正後は人数を問わず一律28万1,700円に引き上げ・統一される予定です。
✅ 2028年改正のポイント
- 60歳未満・子なしの配偶者は、男女とも原則5年間の有期給付に統一(給付額は約1.3倍に増額)
- 子がいる間は現行どおり無期給付を維持、影響を受けない
- 有期給付終了後も、低所得者・障害状態にある方には継続給付のセーフティネットがある
- 遺族基礎年金の子の加算額は、人数を問わず一律28万1,700円に統一
まとめ
遺族年金は「亡くなった方が国民年金・厚生年金に加入していたか」「受け取る遺族に子がいるか」「年齢はいくつか」によって、もらえる金額も期間も大きく変わる制度です。2028年4月からは、この仕組みが「専業主婦モデル」から「共働き時代」に合わせて作り直され、60歳未満・子なしの配偶者は男女とも原則5年間の有期給付に統一されます。
制度の変化を「自分には関係ない話」と流さず、万一のときに家計がどう支えられるのか、一度確認しておくことが安心につながります。自分で学ばないと、だれも教えてくれないからこのブログをきっかけに学ぼうと思っていただけると嬉しいです。
次回は「脱退一時金の見直し」について解説予定です。お楽しみに!


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