電子帳簿保存法のスキャナ保存|レシートはスマホでOK
【この記事でわかること】
・レシートや領収書をスマホで撮影して保存できる「スキャナ保存制度」の仕組み
・2022年の大改正で不要になった「面倒な手続き」
・個人事業主がスマホで保存するときに守るべき3つの実務ポイント
確定申告の時期になると、シューボックスいっぱいの領収書を前にため息をついていませんか。「このレシート、いつのだっけ」「もう文字が薄くて読めない…」。紙の書類を溜め込んで、あとで整理するのが憂うつという個人事業主の方は多いはずです。
実は電子帳簿保存法の「スキャナ保存制度」を使えば、レシートや領収書はスマートフォンで撮影するだけで保存でき、紙の原本は処分してかまいません。しかも2022年の税制改正で、以前は必要だった面倒な事前手続きがなくなりました。私は国税局に勤めていた頃、記帳や証憑保存のルールを日常的に確認する立場でしたが、この制度は「知らないまま紙を溜め込んでいる」人がまだまだ多い印象です。今日は、スマホでレシートを保存する際に押さえておきたい実務のポイントを整理します。
📷 スキャナ保存制度とは?紙の原本を処分できる制度
スキャナ保存制度は、取引先から受け取った請求書・領収書などの国税関係書類を、スキャナやスマートフォンのカメラで読み取った画像データで保存することを認める制度です(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」問1)。国税に関する法律で保存が義務づけられている書類のうち、決算関係書類(棚卸表・貸借対照表・損益計算書など)を除くほとんどの書類が対象になります(同・問2)。
気になるのは「紙の原本はいつ捨てていいのか」という点だと思います。スキャナで読み取り、画像データと紙の記載内容が同じであることを最低限確認したあとであれば、原本は即時に廃棄してかまいません(同・問3)。ただし入力期間(後述)を過ぎてしまった書類だけは、電磁的記録とあわせて紙の原本も保存する必要があるので注意してください。
✅ 2022年の大改正で「面倒な手続き」が消えた
スキャナ保存制度は2005年に創設されましたが、以前は事前に税務署長の承認を受ける必要があり、社内で相互にチェックし合う「適正事務処理要件」の整備も求められる、ハードルの高い制度でした。個人で事業をしている方には特に負担が大きい仕組みだったのです。
この状況が令和3年度(2022年)の税制改正で大きく変わりました。国税庁の一問一答(令和8年7月改訂版)で確認できる主な変更点は次のとおりです。
| 項目 | 2021年12月まで | 2022年1月以降(現行) |
|---|---|---|
| 税務署長への事前承認 | 必要 | 不要 |
| 相互けんせい(複数人でのチェック体制) | 必要 | 廃止 |
| タイムスタンプ | 読み取り時に自署の上、付与が必要 | 訂正・削除履歴が残るシステムなら代替可 |
出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月改訂版)
一人で事業をしている個人事業主にとって最大の朗報は、相互けんせい(複数人での確認体制)の要件がなくなったことです。以前は「1人では要件を満たせないのでは」と悩む声もあった部分ですが、今はその心配自体がなくなりました。
📱 スマホで保存するときに守る3つの実務ポイント
手続きは簡単になりましたが、押さえておくべき技術的な要件は残っています。実務でつまずきやすい3点を整理しました。
📅 入力までのタイムリミット
スタート
完了
※記帳を月次サイクルで行っている場合は「最長2か月+おおむね7営業日以内」でOK(国税庁一問一答・問21〜23)
① 入力期間:領収書を受け取ってから「速やか」に入力する必要があり、これはおおむね7営業日以内が目安です。毎日経理処理をする時間が取れない方でも、記帳を月次サイクルで行っている場合は「最長2か月+おおむね7営業日以内」まで猶予があります(国税庁一問一答・問21〜23)。
② 解像度:スキャニング時の解像度は200dpi以上が必要です。A4サイズの書類なら約387万画素以上が目安になります。スマホのカメラで撮影すると解像度が「72dpi」と表示されることがありますが、これは規格上の仮の表示で、実際の解像度を示すものではありません。画素数さえ足りていれば問題ないとされています(同・問26)。なお2024年の税制改正で、この解像度などの情報をメタデータとして保存しておく義務自体はなくなりましたが、税務調査で聞かれたときに画像のプロパティ情報などで説明できるようにしておく必要があります(同・問27)。
③ タイムスタンプ:読み取った画像データの改ざんを防ぐためのタイムスタンプは、原則として必要です。ただし訂正や削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムで保存している場合は、タイムスタンプの代わりにその記録をもって要件を満たせます(同・問21・問32)。多くのクラウド会計・経費精算サービスはこの仕組みを備えているため、対応サービスを使っていれば意識せずクリアできていることが多いです。
⚠️ 気をつけたい2つの落とし穴
入力期間を過ぎてしまった場合は、その書類についてスキャナ保存の要件を満たさなくなるため、電磁的記録とあわせて紙の原本もそのまま保存しておく必要があります(国税庁一問一答・問24)。「スマホで撮ったから紙はもう捨てた」と早合点しないよう、7営業日を過ぎそうな書類だけは紙も残しておくと安心です。
もう一つ混同しやすいのが、「電子取引データの保存」との違いです。スキャナ保存は紙で受け取った領収書を画像化する制度である一方、メールやECサイトで受け取った請求書などの電子データは「電子取引データの保存」というまったく別のルールで、2024年1月からすべての事業者に保存が義務化されています。紙で受け取ったか、最初からデータで受け取ったかによって適用されるルールが違う点に注意してください。
✅ この記事のポイント
- レシート・領収書はスマホ撮影で保存でき、確認後は紙原本を即時廃棄できる
- 2022年の改正で事前承認・相互けんせいの要件が廃止され、個人事業主でも始めやすくなった
- 入力は受領後おおむね7営業日以内(月次サイクルなら最長2か月+7営業日)
- 解像度200dpi以上、タイムスタンプは訂正削除履歴が残るシステムなら代替可
- 入力期間を過ぎた書類は紙原本も保存しておく。電子取引データの保存とは別ルール
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📝 まとめ
スキャナ保存制度は「難しそう」というイメージだけが先行しがちですが、2022年の改正でハードルはぐっと下がりました。スマホで撮って、7営業日以内に処理して、あとは紙を捨てるだけ——ここまでシンプルになった制度を知らずに、シューボックスいっぱいの領収書を抱え続けるのはもったいないことです。自分で学ばないと、だれも教えてくれません。このブログをきっかけに、一つずつ制度を味方につけていきましょう。


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