小規模企業共済とは?掛金は月7万円・全額控除|元国税職員が解説

【この記事でわかること】
・小規模企業共済に加入できる人の条件(業種別の従業員数の壁)
・掛金は月いくらから始められ、税金はどれだけ軽くなるか
・共済金を受け取るとき、受け取り方で税金の扱いがどう変わるか
・iDeCo・国民年金基金・中退共とは何が違い、併用できるのか

「従業員のための退職金制度(中退共)は整えたけれど、経営者自身の退職金はどうしよう」——前回の中退共の記事で触れたとおり、中退共は役員が加入できません。会社員なら退職金や厚生年金がありますが、個人事業主や小さな会社の役員は、自分で自分の退職金を用意する必要があります。
私は国税専門官として16年以上、税務署・国税局に勤務した後、民間企業へ転職しました。税務調査の現場では、個人事業主の方の確定申告書に「小規模企業共済等掛金控除」の記載があるかどうかで、老後への備え方の差を感じる場面が何度もありました。今回は、経営者自身のための退職金制度「小規模企業共済」について、加入資格・掛金・受け取り方まで、中小機構と国税庁の公式資料に基づいて整理します。
📋 小規模企業共済とは?加入できる人の条件
小規模企業共済は、国の機関である中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、経営者自身のための積み立て退職金制度です。加入できるのは、個人事業主本人・その共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)・小規模企業の役員で、常時使用する従業員の数が業種ごとに定められた基準以下であることが条件です(出典:中小機構「加入資格」)。
| 営む事業の種別 | 常時使用する従業員数の上限 |
|---|---|
| 建設業・製造業・運輸業・不動産業・農業・サービス業(宿泊業、娯楽業に限る)等 | 20人以下 |
| 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業、娯楽業を除く) | 5人以下 |
| 企業組合・協業組合・農事組合法人(農業経営が主) | 20人以下 |
| 弁護士法人・税理士法人等の士業法人 | 5人以下 |
この「常時使用する従業員」には、個人事業主本人・共同経営者(2人まで)・家族従業員・パート・アルバイト等の臨時雇用者・法人の役員は含まれません(出典:中小機構「加入資格」)。加入後に従業員が増えて基準を超えても、契約はそのまま続けられます。創業して間もない、従業員が少ないうちに加入しておくメリットがここにあります。
💰 掛金は月1,000〜70,000円|全額が所得控除に
月々の掛金は1,000円から70,000円まで、500円単位で自由に設定でき、加入後も増額・減額の手続きができます(出典:中小機構「掛金について」)。年払いに切り替えることも可能です。
最大のメリットは、支払った掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になることです(出典:国税庁 No.1135「小規模企業共済等掛金控除」)。確定申告(給与所得者は年末調整)で、その年に払った掛金がまるごと課税対象の所得から差し引かれるため、節税効果は小さくありません。

月額70,000円を満額で12ヶ月払うと、年間84万円がまるごと所得控除になります。掛金は「事業の経費」ではなく「個人の所得控除」という位置づけなので、事業所得を計算したあとの段階で差し引かれる点に注意してください。
🏦 共済金の受け取り方で税金が変わる
共済金の受け取り方には「一括」「分割」「一括と分割の併用」の3種類があり、受け取り方や請求事由によって税法上の扱いが異なります(出典:中小機構「共済金等請求・解約」)。
| 共済金等の受取方法 | 税法上の扱い |
|---|---|
| 共済金(死亡除く)・準共済金を一括で受け取る場合 | 退職所得 |
| 共済金を分割で受け取る場合 | 公的年金等の雑所得 |
| 65歳以上の方が任意解約する場合 | 退職所得 |
| 65歳未満の方が任意解約する場合 | 一時所得 |
| 遺族が共済金を受け取る場合 | 相続税法上の「みなし相続財産」 |
一括受取りが「退職所得」として税制上もっとも優遇されるのは、退職所得控除(加入年数に応じた控除額)を差し引いたうえで、さらに2分の1にしてから課税されるという計算方法だからです(出典:国税庁 No.1420「退職金を受け取ったとき」)。退職所得控除額の計算式は次のとおりです。
| 加入年数 | 退職所得控除額の計算式 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 加入年数 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(加入年数-20年) |
試算してみましょう。月70,000円を満額・30年間払い続けた場合、累計拠出額は70,000円×12ヶ月×30年=2,520万円です。このとき退職所得控除額は、800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円となります(国税庁の計算式に基づく試算・実際の控除額は共済金の額や他の退職金との重複調整の有無により変動します)。控除後の金額をさらに2分の1にしてから課税されるため、長く続けるほど税制上の優遇は大きくなります。
なお、分割受取り・一括と分割の併用を選ぶには、「共済金Aまたは共済金Bであること」「死亡による請求でないこと」「請求事由が発生した日に60歳以上であること」「共済金の額が分割は300万円以上・併用は330万円以上であること」のすべてを満たす必要があります(出典:中小機構「共済金等請求・解約」)。
⚖️ iDeCo・国民年金基金・中退共との違いと併用ルール
「退職金・年金の上乗せ」に使える制度は、小規模企業共済のほかにもiDeCo・国民年金基金・中退共・厚生年金基金があります。それぞれ対象者と掛金の仕組みが異なるため、違いを整理しました。
| 制度 | 主な対象者 | 掛金の目安 | 税制優遇の中心 | 現在の新規加入 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 個人事業主・共同経営者・小規模企業の役員 | 月1,000〜70,000円 | 掛金全額が所得控除 | できる |
| 国民年金基金 | 自営業・フリーランス等(国民年金第1号被保険者) | 月額上限68,000円(iDeCo等と合算) | 掛金全額が社会保険料控除 | できる |
| 中退共 | 中小企業の従業員(役員は加入不可) | 月5,000〜30,000円(事業主負担) | 事業主の必要経費+国の助成 | できる |
| 厚生年金基金 | 基金を設立した企業の会社員 | 基金ごとに異なる | 厚生年金保険料の一部を基金が代行 | できない(現存4件) |
出典:中小機構・国民年金基金連合会・厚生労働省・全国国民年金基金の各公式資料(確認日:2026-08-29/国民年金基金・中退共・厚生年金基金の数値は当サイトが別途調査時に一次資料で確認済みの数値を再掲)
特に押さえておきたいのは、小規模企業共済とiDeCoは掛金の上限が別枠で、両方を満額まで併用できるという点です(出典:中小機構特設サイト「小規模企業共済とiDeCoは併用できる?」)。個人事業主の場合、小規模企業共済の月70,000円とiDeCo(国民年金基金と合算枠)の月68,000円をあわせて、月138,000円・年間165万6,000円をまるごと所得控除にできます。
一方で、iDeCoは原則60歳まで引き出せないのに対し、小規模企業共済は廃業などの共済事由が発生すれば60歳前でも受け取れ、掛金の範囲内で契約者貸付制度も使えるという違いがあります(出典:中小機構特設サイト、前掲)。まとまった資金がすぐ必要になる可能性がある方は、まず小規模企業共済を優先し、余裕があればiDeCoを積み増すという順序が現実的です。

✅ この記事のポイント
- 加入できるのは個人事業主・共同経営者(2人まで)・小規模企業の役員。業種ごとの従業員数基準は加入時点のみ判定される
- 掛金は月1,000〜70,000円(500円単位)で全額が所得控除。年間最大84万円が課税対象所得から差し引ける
- 共済金は一括なら退職所得、分割なら公的年金等の雑所得。65歳未満の任意解約は一時所得になる点に注意
- iDeCoとは掛金上限が別枠なので併用でき、個人事業主なら合計で年165万6,000円まで所得控除を作れる
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まとめ:小規模企業共済は「経営者自身の退職金」の土台
小規模企業共済は、会社員なら当たり前にある退職金や厚生年金を、個人事業主や小さな会社の経営者が自分で用意するための制度です。掛金の全額が所得控除になり、共済金の受け取り方によっては税制上手厚い優遇も受けられます。中退共が「従業員のための備え」なら、小規模企業共済は「経営者自身のための備え」——両方を知っておくことで、会社と自分自身の退職金の全体像が見えてきます。自分で学ばないと、だれも教えてくれないからこのブログをきっかけに学ぼうと思っていただけると嬉しいです。
次回は、小規模企業共済とiDeCoを両方使っている場合に、共済金や一時金を「受け取る順番」によって退職所得控除がどう変わるかを解説予定です。お楽しみに!


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