特別の寄与とは?相続人ではない親族の介護と特別寄与料

【この記事でわかること】
・特別の寄与(特別寄与料)とはどんな制度か
・請求できる人と、認められるための4つの条件
・請求の流れ、6か月・1年の期限、家庭裁判所の手続
・特別寄与料にかかる相続税の扱い(もらう側・払う側)

義父や義母の介護を何年も続けてきたのに、亡くなったあとの遺産は相続人だけで分けられて、自分には何もない。長男の妻など、相続人ではない親族には、そんなやりきれなさがつきまといます。
以前はその状況を変える方法がありませんでしたが、2019年7月1日に始まった「特別の寄与」の制度で、一定の条件を満たせば相続人にお金を請求できるようになりました。前回の記事(遺留分侵害額請求とは)の最後に触れたこの制度を、今回は1本まるごと見ていきます。
🤝 特別の寄与とは?相続人以外の親族が相続人に請求できるお金
相続人ではない親族が、亡くなった方に無償で療養看護などをして、財産の維持や増加に特別に貢献したときは、その貢献に応じた金銭を相続人に請求できます。この金銭を特別寄与料といいます(民法第1050条、e-Gov法令検索)。裁判所も同じ内容を案内しています(裁判所「特別の寄与に関する処分調停」)。
法務省のパンフレットは、改正前後の違いを「亡き長男の妻が被相続人の介護をしていた場合」の例で説明しています。
| 項目 | 改正前 | 2019年7月1日以後 |
|---|---|---|
| 長男の妻の介護 | 分配にあずかれない(相続人ではないため) | 相続人に金銭を請求できる |
| 遺産分割 | 相続人だけで行う | 現行法と同様に、相続人だけで行う(特別寄与者は参加しない) |
出典:法務省「相続法についてのQ&A」(令和2年3月)8ページ
👥 だれが請求できる?対象者と4つの条件
請求できるのは、亡くなった方の「親族」です。民法は、親族を六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族と定めています(民法第725条)。たとえば長男の妻は、被相続人から見て一親等の姻族なので、親族に当たります。
そのうえで、条文は次の4つを求めています(民法第1050条第1項)。
| 条件 | 条文の内容 |
|---|---|
| ① 親族であること | 被相続人の親族。ただし相続人などは除かれる(下記) |
| ② 無償であること | 対価を受け取らずに行ったこと |
| ③ 労務の提供 | 療養看護その他の労務の提供をしたこと |
| ④ 特別の寄与 | その結果、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与があったこと |
除かれるのは、相続人、相続の放棄をした人、相続欠格(民法第891条)に当たる人、廃除で相続権を失った人です。相続人は、寄与分など別のルールで考えます。また、親族でない人(たとえば親族関係のない友人)は、この条文の請求の対象になりません。
条文には「同居していること」は書かれていません。ただし、その貢献が「特別」といえるかどうかは、家庭裁判所が事情を見て判断します。相続の実務に関わっていると、介護を担った家族とそうでない家族とで受け止め方が分かれる場面は少なくありません。
⏰ 請求の流れと期限|まず相続人と話し合い、まとまらなければ家庭裁判所
📅 手続きの流れ
被相続人の死亡
相続人と話し合う
家庭裁判所に申立て
調停不成立のとき
特別寄与者は、まず相続人に直接請求します。話し合いがまとまらないとき、または話し合いができないときは、家庭裁判所に「協議に代わる処分」を請求できます(民法第1050条第2項)。裁判所では「特別の寄与に関する処分調停」として申し立て、調停が不成立なら審判の手続に進みます(裁判所)。
家庭裁判所への申立てには、次の2つの期限があります。どちらか一方でも過ぎると申し立てられません。
| 期限 | 数え始める日 |
|---|---|
| 6か月 | 特別寄与者が、相続の開始があったことと相続人を知った時から |
| 1年 | 相続開始の時から |
出典:民法第1050条第2項、裁判所
申立先は相手方の住所地の家庭裁判所(または当事者が合意で定める家庭裁判所)で、費用は申立人1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です。なお、2019年7月1日より前に始まった相続では、この申立てはできません(裁判所)。
💡 特別寄与料の額はどう決まる?(民法第1050条第3項〜第5項)
- 家庭裁判所が、寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定める
- 上限は、相続開始時の財産の価額から遺贈の価額を差し引いた残りの額
- 相続人が複数いるときは、各相続人が特別寄与料の額に自分の相続分をかけた額を負担する

💰 特別寄与料にかかる相続税|もらう側・払う側の扱い
特別寄与料は、請求しただけでは相続税の課税関係は生じません。金額が確定した時点で、特別寄与者が被相続人から遺贈で取得したものとみなされ、相続税の対象になります(相続税法第4条第2項、国税庁「質疑応答事例」事例3-2)。国税庁のタックスアンサーも、相続税がかかる財産の1つとして「特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額で確定したもの」を挙げています(No.4105)。
| 立場 | 税務上の扱い | 期限 |
|---|---|---|
| もらう人(特別寄与者) | 確定額が遺贈とみなされ課税対象。新たに申告が必要になれば申告書、すでに申告していて不足が出れば修正申告書を提出する | 10か月以内(確定を知った日の翌日から) |
| 払う人(相続人) | 自分が取得した財産の価額から、特別寄与料のうち自分の負担分を差し引いて課税価格を計算する(相続税法第13条第4項)。すでに申告していて税額が過大になったときは更正の請求ができる | 4か月以内(更正の請求・確定を知った日の翌日から) |
出典:国税庁 資産課税課情報第17号(令和2年7月7日・令和2年4月1日現在の法令)
もう1点、気をつけたいのが2割加算です。相続税法第18条は、遺贈で財産を取得した人が被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった直系卑属を含む)と配偶者以外のときは、相続税額に2割を加算すると定めています(e-Gov法令検索)。長男の妻は一親等の血族ではないため、条文の文言どおりに読めば、加算の対象になり得ます。個別の判断は、税理士に確かめてください。
元国税職員の立場から言うと、名前は「寄与料」でも、税の世界では「遺贈」として扱われる点が最初のつまずきどころです。受け取った側にも相続税の申告の期限があることを、頭の片すみに置いておきましょう。
✍️ 気をつけたいこと|遺産分割には参加しない・遺言という選択
- 特別寄与者は遺産分割には参加しません。遺産分割は相続人だけで行い、特別寄与者は相続人に金銭を請求する形です(法務省)
- 期限は6か月と1年と短めです。介護が終わって気持ちの整理がつく前に、期限が進んでいきます
- 金額に決まった相場はありません。家庭裁判所が一切の事情を考慮して決めるため、具体的な見通しは弁護士などの専門家に確かめてください
財産を残す側からは、遺言で財産を渡すという選択肢もあります。遺言者は、包括または特定の名義で、財産の全部または一部を処分できます(民法第964条)。お世話になった人への気持ちを、遺言という形で残すことも考えられます。遺言の手続きは、遺言執行者の役割と報酬の記事も参考にしてください。
✅ この記事のポイント
- 特別の寄与は、相続人ではない親族が無償で療養看護などをしたとき、相続人に特別寄与料を請求できる制度(2019年7月1日施行)
- 請求できるのは親族(六親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族)。相続人・相続放棄をした人などは除かれる
- 話し合いがまとまらなければ家庭裁判所へ。期限は「知った時から6か月」「相続開始から1年」
- 金額が確定すると遺贈とみなされて相続税の対象。もらう人は確定を知った日の翌日から10か月以内
- 払う相続人は、自分の負担分を課税価格から差し引ける。2割加算は条文上の対象になり得る

まとめ|介護の貢献は「期限内に」「相続人へ」伝える
特別の寄与は、相続人ではない親族の介護などの貢献に報いるために、2019年7月1日に作られた制度です。大切なのは、請求の相手は相続人であること、期限が6か月と1年と短いこと、確定した金額には相続税がかかることの3点です。
制度を知っているかどうかで、選べる行動は変わります。介護を担った方も、財産を残す方も、相続人になる方も、この仕組みを一度だけでも頭に入れておくと、いざというときに慌てずにすみます。
自分で学ばないと、だれも教えてくれないからこのブログをきっかけに学ぼうと思っていただけると嬉しいです。
次回は「特別縁故者とは?相続人がいないときに財産を受け取れる人」について解説予定です。お楽しみに!


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