遺留分侵害額請求とは|請求方法と特別受益・寄与分

【この記事でわかること】
・遺留分が足りないときの「遺留分侵害額請求」のしくみ
・請求できる期限(1年・10年)と、調停の前にやっておくこと
・家庭裁判所の調停の申立先・費用・必要な書類
・特別受益(生前にもらった援助)と遺留分の関係
・寄与分(介護や家業の手伝い)と遺留分の関係、特別の寄与

前回の記事では、遺留分とは何か、だれにあるのか(兄弟姉妹にはない)、割合はどれくらいかを整理しました。今回は、実際に遺留分が足りなかったとき、どう請求するのかです。
あわせて、相続の話し合いでよく出てくる「特別受益」と「寄与分」が、遺留分とどう関係するのかも、民法の条文と裁判所の案内をもとに見ていきます。
🧾 遺留分侵害額請求とは|足りない分をお金で求める
遺言や生前贈与で遺留分より少なくされた相続人は、多く受け取った人に、足りない分に当たるお金の支払いを求めることができます。これを遺留分侵害額請求といいます(民法第1046条)。
お金で請求する形になったのは、2019年7月1日以後に亡くなった方の相続からです。それより前の相続では、改正前のルール(遺留分減殺請求)が使われます(裁判所)。
💡 遺留分侵害額の計算式(民法第1046条第2項)
遺留分侵害額 = 遺留分 − 自分が受けた遺贈・特別受益 − 自分が相続で受け取る遺産 + 自分が引き継ぐ借金
法務省の計算例では、長女の遺留分侵害額は1,854万8,242円でした(法務省「遺留分制度の見直し」)
請求を受けた人がすぐにお金を用意できないときは、裁判所に支払いの期限を延ばしてもらうよう求めることができます(民法第1047条第5項)。
⏰ 請求の進め方と期限|まず「請求します」と伝える
遺留分侵害額請求には、はっきりした期限があります(民法第1048条)。
| 期限 | 起算点 |
|---|---|
| 1年 | 相続が始まったことと、遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から |
| 10年 | 相続が始まった時から(知らなくても) |
出典:e-Gov法令検索 民法第1048条
⚠️ 調停を申し立てただけでは「請求」にならない
裁判所の案内には、家庭裁判所の調停を申し立てただけでは相手に対する意思表示にならないので、調停とは別に内容証明郵便等で意思表示をする必要があると書かれています。意思表示をしないまま1年がたつと、請求する権利は時効で消えてしまいます(裁判所「遺留分侵害額の請求調停」)。
内容証明郵便などで、多く受け取った人に意思表示をする
金額や支払い方法を話し合う
調停委員が事情を聞き、解決案の提示や助言をしながら話し合いを進める
出典:裁判所「遺留分侵害額の請求調停」をもとに作成
| 項目 | 遺留分侵害額の請求調停 |
|---|---|
| 申し立てる人 | 遺留分を侵害された人(兄弟姉妹以外の相続人)とその承継人 |
| 申立先 | 相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で決めた家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手 |
| 主な書類 | 申立書、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺言書の写し、遺産に関する証明書など |

👥 だれに請求する?|遺言で受け取った人が先
遺言で財産を受け取った人(受遺者)と、生前に贈与を受けた人(受贈者)の両方がいるときは、順番が決まっています(民法第1047条)。
| ケース | 負担する順番 |
|---|---|
| 遺言で受け取った人と、生前に贈与を受けた人がいる | 遺言で受け取った人が先 |
| 遺言で受け取った人が複数 | 受け取った財産の価額の割合に応じて |
| 生前に贈与を受けた人が複数(時期が違う) | 新しい贈与を受けた人から順に |
出典:e-Gov法令検索 民法第1047条をもとに作成(遺言で別の定めをしている場合はそれに従う部分がある)
🎁 特別受益と遺留分|生前の援助は計算に入る
特別受益とは、相続人が亡くなった人から受けた遺贈や、結婚・養子縁組のため、または生計の資本としての贈与のことです(民法第903条)。
| 場面 | 特別受益の扱い |
|---|---|
| 遺留分の計算のもとになる財産 | 相続人への特別受益にあたる贈与は、亡くなる前10年分を足す(民法第1044条第3項) |
| 遺留分を請求する人の侵害額 | 請求する人自身が受けた遺贈・特別受益の分は差し引く(民法第1046条第2項第1号) |
出典:e-Gov法令検索 民法第903条・第1044条・第1046条
つまり、ほかの相続人が生前に受けた援助が特別受益に当たれば、遺留分の計算に入ります。反対に、請求する自分が生前に援助を受けていれば、そのぶん請求できる額は小さくなります。

🤝 寄与分と遺留分|介護や家業の手伝いはどうなる?
寄与分とは、亡くなった人の事業を手伝ったり、療養看護をしたりして、財産の維持や増加に特別に貢献した相続人に、法定相続分に上乗せして認められる取り分です(民法第904条の2)。
| 項目 | 寄与分 |
|---|---|
| 決め方 | 相続人の話し合い。まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判 |
| 手続き | 遺産分割の中で決める。寄与分の調停がまとまらず審判になったとき、遺産分割の審判を申し立てていないと不適法として却下される |
| 上限 | 遺産から遺贈を差し引いた残りの額を超えられない |
| 遺留分の計算式 | 遺留分侵害額の条文(第1046条第2項第2号)が挙げる条文に、寄与分(第904条の2)は入っていない |
出典:e-Gov法令検索 民法第904条の2・第1046条、裁判所「寄与分を定める処分調停」
遺留分侵害額の計算式を定めた条文が挙げているのは、法定相続分(第900〜902条)、特別受益(第903条)、第904条までで、寄与分の条文は含まれていません。寄与分は、あくまで遺産分割の中で決める取り分です。介護などの貢献を主張したい場合に、どの手続きでどう扱われるかは、弁護士などの専門家に確かめてください。
📖 特別の寄与(2019年7月1日〜)
相続人ではない親族(たとえば長男の妻)が、無償で療養看護などをして財産の維持・増加に特別に貢献したときは、相続人に「特別寄与料」としてお金を請求できます(民法第1050条)。
家庭裁判所に求められるのは、相続の開始と相続人を知った時から6か月以内、かつ相続開始から1年以内です。
✅ この記事のポイント
- 遺留分が足りなければ、多く受け取った人にお金で請求できる(2019年7月1日以後の相続)
- 期限は「知った時から1年」「相続開始から10年」。調停の申立てとは別に、内容証明郵便などで意思表示が必要
- 調停は相手方の住所地の家庭裁判所へ。費用は収入印紙1,200円分と郵便切手
- 請求先は、遺言で受け取った人が先。生前贈与は新しいものから
- 相続人への特別受益は、亡くなる前10年分が計算に入る。請求する人自身の特別受益は差し引く
- 寄与分は遺産分割の中で決める取り分。遺留分侵害額の計算の条文には入っていない
まとめ|遺留分の請求は「期限」と「伝え方」が大事
遺留分侵害額請求は、足りない分をお金で求める仕組みです。大事なのは、1年という短い期限と、調停とは別に意思表示が必要なこと。特別受益は計算に入り、寄与分は遺産分割の中で決める、という違いも押さえておきましょう。
遺言執行の現場では、遺言の内容に納得できない相続人がいると、手続きそのものが長引くことがあります。遺言を書く側も受け取る側も、遺留分の仕組みを知っておくことが、家族のもめごとを小さくする一番の近道です。
自分で学ばないと、だれも教えてくれないからこのブログをきっかけに学ぼうと思っていただけると嬉しいです。
次回は「特別の寄与とは?相続人ではない親族の介護と特別寄与料」について解説予定です。お楽しみに!


最後まで読んでくれてありがとう
資料集めやサーバー代など、ブログ作成には費用がかかっています。応援していただいた分は、次の記事づくりに大切に使わせていただきます。またブログに遊びに来てくださいね。
応援する【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の個人・法人に対する税務・法律・社会保険上のアドバイスではありません。記載内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本記事を参考にした判断・行動による損害について当サイトは責任を負いかねます。個別の判断・手続きについては、税理士・社会保険労務士・弁護士・ファイナンシャルプランナーなど各分野の専門家にご相談ください。記載内容は2026年11月時点の情報に基づいており、法改正・制度改正等により変更となる場合があります。







