特別縁故者とは?相続人がいないときに財産を受け取れる人

【この記事でわかること】
・特別縁故者とはどんな人か(条文の3つの類型)
・相続人がいないとき、財産がたどる流れ
・家庭裁判所への申立ての期限と費用
・分与を受けた財産にかかる相続税の扱い

長年いっしょに暮らしてきた人や、最期まで看病してきた人が亡くなったのに、その人には相続人が1人もいない。そんなとき、遺された財産はどうなるのでしょうか。
前回の特別の寄与とは?相続人ではない親族の介護と特別寄与料では、相続人がいる場合に、介護をした親族が相続人へお金を請求する制度を見ました。今回は反対に、相続人がいない場合に使われる「特別縁故者」の制度を、民法と家庭裁判所の案内をもとに整理します。
🤝 特別縁故者とは?相続人がいないときに財産を受け取れる人
特別縁故者とは、相続人がいないときに、家庭裁判所に請求して、亡くなった方の財産の全部または一部を分けてもらえる人です(民法第958条の2、e-Gov法令検索)。条文は、次の3つを挙げています。
- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
条文に「親族に限る」とは書かれていません。大阪家庭裁判所の手引きには、申立人が法人の場合の書類も案内されています(大阪家庭裁判所の手引き)。
前回の特別寄与料とは、使う場面がまったく違います。並べると次のとおりです。
| 項目 | 特別寄与料 | 特別縁故者への分与 |
|---|---|---|
| 使う場面 | 相続人がいる | 相続人がいない |
| 請求できる人 | 相続人ではない親族 | 生計を同じくしていた者・療養看護に努めた者など |
| 請求する相手 | 相続人 | 家庭裁判所 |
| 期限 | 知った時から6か月・相続開始から1年 | 相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内 |
| 根拠 | 民法第1050条 | 民法第958条の2 |
出典:民法(e-Gov法令検索)、裁判所
🧭 相続人がいないとき、財産はどうなる?|清算人選任から国庫まで
相続人がいるかどうか分からないとき、財産は「相続財産法人」になります(民法第951条)。そのうえで、家庭裁判所が相続財産清算人を選びます(民法第952条第1項)。相続人全員が相続放棄をして、相続する人がいなくなった場合もここに含まれます(裁判所)。
📅 手続きの流れ
家庭裁判所
6か月以上
満了後3か月以内
家庭裁判所は清算人を選んだあと、「相続人がいるなら一定の期間内に申し出てください」という公告をします。この期間は6か月を下ることができないとされています(民法第952条第2項)。清算人は、借金などの債権者や遺贈を受けた人への支払いを進めます(民法第957条)。
公告の期間内にだれも相続人として名乗り出なければ、特別縁故者の申立てができるようになります。家庭裁判所は「相当と認めるとき」に、清算後に残る財産の全部または一部を与えることができます(民法第958条の2第1項)。だれにも分与されなかった財産は、国庫に帰属します(民法第959条)。
清算人の選任を申し立てられるのは、債権者や特定遺贈を受けた人、特別縁故者などの利害関係人と、検察官です。費用は収入印紙800円分と郵便切手、家庭裁判所の指示があってから納める官報公告料5,582円です。財産から清算人の報酬などが足りないおそれがあるときは、申立人が予納金を納めることもあります(裁判所)。

📝 申立ての方法|期限は「公告期間の満了後3か月以内」
特別縁故者に対する相続財産分与の申立ては、次のとおりです(裁判所)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立期間 | 相続人を捜索する公告の期間が満了してから3か月以内 |
| 申立先 | 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙800円分と連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに違う) |
| 主な書類 | 申立書、申立人の住民票または戸籍附票(審理に必要なら追加の書類を求められることがある) |
⚠️ 期限の連絡は来ません
大阪家庭裁判所の手引きは、清算人には申立期間を連絡する義務がなく、家庭裁判所からも知らせることはない、と明記しています。
申立てを考えている人は、清算人が選ばれてからおおむね2〜3か月後を目安に、自分で家庭裁判所に期間を確認するよう案内されています(電話でも可)(大阪家庭裁判所の手引き)。
同じ手引きには、縁故を示す資料として、被相続人からの手紙や日記、写真、知人の陳述書、費用を負担したときの領収書などが例に挙がっています。ただし、何を出せば認められるかについて、裁判所は答えられないとしています。
💰 特別縁故者が受け取った財産と相続税
分与を受けた財産は、被相続人から遺贈で取得したものとみなされ、相続税の対象になります。金額は、財産を与えられた時の時価(評価に特別の定めがある財産は、その定めによる価額)です(相続税法第4条第1項、e-Gov法令検索)。国税庁のタックスアンサーも、相続税がかかる財産の1つとして「相続人がいなかった場合に、民法の定めによって相続財産法人から与えられた財産」を挙げています(国税庁 No.4105)。
| 項目 | 相続税法の定め |
|---|---|
| 扱い | 被相続人からの遺贈とみなす(第4条第1項) |
| 価額 | 与えられた時の時価(第4条第1項) |
| 申告期限 | 分与の事由が生じたことを知った日の翌日から10か月以内(第29条第1項) |
| 2割加算 | 一親等の血族と配偶者以外の人は、相続税額に2割を加算(第18条) |
2割加算は、遺贈で財産を取得した人が被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった直系卑属を含む)と配偶者以外のときにかかります(相続税法第18条)。特別縁故者が一親等の血族や配偶者でなければ、条文の文言どおりに読めば対象になり得ます。相続税がかかるかどうか、いくらになるかは財産の額などで変わるため、個別の判断は税理士に確かめてください。
元国税職員の立場から付け加えると、ふつうの相続税の申告期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」です(相続税法第27条第1項)。特別縁故者は数え始めが「分与の事由が生じたことを知った日の翌日」に変わります。同じ10か月でも起点が違う点は、見落としやすいところです。

✍️ 気をつけたいこと|自分から申し立てないと受け取れない
- 自動ではもらえません。特別縁故者が自分で家庭裁判所に請求して、はじめて分与が検討されます(民法第958条の2第1項)
- 必ず全部もらえるわけではありません。家庭裁判所が「相当と認めるとき」に、残った財産の全部または一部を与えることができる、という仕組みです(同条)
- 期限は自分で管理します。公告期間の満了後3か月を過ぎると申し立てられず、知らせも来ません(民法第958条の2第2項、大阪家庭裁判所の手引き)
財産を残す側からは、遺言で財産を渡すという方法もあります。遺言者は、包括または特定の名義で、財産の全部または一部を処分できます(民法第964条)。相続人がいない方が、お世話になった人に確実に財産を残したいなら、遺言を考える価値があります。遺言の手続きは、遺言執行者の役割と報酬の記事も参考にしてください。
✅ この記事のポイント
- 特別縁故者は、相続人がいないときに家庭裁判所へ請求して財産の分与を受けられる人(民法第958条の2)
- 条文の類型は、生計を同じくしていた者・療養看護に努めた者・その他特別の縁故があった者の3つ
- 申立ては、相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内。期限の連絡は来ないので自分で確認する
- 分与されなかった財産は国庫に帰属する
- 分与を受けた財産は遺贈とみなされ相続税の対象。申告期限は知った日の翌日から10か月以内
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📝 まとめ|相続人がいないときは「申し立て」と「期限の確認」がカギ
相続人がいない方の財産は、清算人による清算を経て、最後は国庫に帰属します。その手前で、生計を同じくしていた人や療養看護をした人などが家庭裁判所に申し立てれば、残った財産の全部または一部を受け取れる場合があります。
期限は公告期間の満了後3か月以内で、知らせは来ません。受け取った財産には相続税がかかることもあるので、申告期限もあわせて頭に入れておきましょう。
税金や制度の手続きは、自分で学ばないと、だれも教えてくれません。このブログをきっかけに学ぼうと思っていただけると嬉しいです。
次回は「相続放棄とは?期限と家庭裁判所での手続きの流れ」について解説予定です。お楽しみに!


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