教育資金の一括贈与、2026年3月末で終了|既拠出分はどうなる?

【この記事でわかること】
・教育資金の一括贈与の非課税措置が、2026年3月31日で新規の適用を停止したこと
・すでに信託口座などに拠出した資金は、今後も引き続き非課税で使えること
・受贈者が30歳になるなどで契約が終了したとき、使い残した「管理残額」に贈与税がかかる仕組み
・これからの教育資金援助でおさえておきたい「都度贈与」という考え方

「孫の教育費のために、まとまったお金を非課税で渡せる制度があるらしい」——祖父母世代からそんな相談を受けたことがある方も多いのではないでしょうか。実はこの「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」、2026年3月31日をもって、延長されずに新規の受付を終えています。
信託実務として遺言執行者・遺産整理受任者に携わっていると、「祖父母が孫のために口座を作っていたはずだが、今どうなっているのか分からない」というご相談を受けることがあります。制度が終わったこと自体は報道でご存じの方も増えましたが、「もう入っているお金はどうなるのか」「使い残したらどうなるのか」まで正確に把握している方は少ない印象です。今回は国税庁・財務省の一次資料をもとに、制度終了後に押さえておきたいポイントを整理します。
教育資金の一括贈与とは?
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、平成25年(2013年)4月1日に創設された制度です。祖父母などの直系尊属から、教育資金管理契約を結ぶ日に30歳未満の子・孫へまとまった教育資金を贈与しても、金融機関の専用口座(信託等)を通じる形であれば贈与税がかからない、という仕組みでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 贈与する人 | 受贈者の直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母など) |
| 受け取る人 | 教育資金管理契約を結ぶ日において30歳未満の人 |
| 非課税限度額 | 受贈者1人あたり1,500万円まで |
| 学校等以外への支出 | 塾・習い事などは1,500万円の内数で500万円が上限 |
| 手続き | 取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出 |
この制度の根拠は国税庁タックスアンサー No.4510に明記されています。原文では次のように説明されています。
「受贈者(教育資金管理契約を締結する日において30歳未満の人に限ります。)が、教育資金に充てるため、金融機関等とのその教育資金管理契約に基づき、贈与者(受贈者の直系尊属である父母や祖父母など。)から信託受益権を取得した場合……その信託受益権または金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については……受贈者の贈与税が非課税となります」

2026年3月31日で「新規適用停止」に
この特例は創設以来、期限が来るたびに延長が繰り返されてきましたが、2026年度(令和8年度)税制改正で「延長せずに終了」することが決まりました。財務省の税制改正解説では、この改正を「新規適用停止」と位置づけています。
財務省「令和8年度税制改正の解説」には、廃止の背景として次のように書かれています。
「近年の新規契約数が制度創設時と比べ大きく減少していること、多額の資産を有する親・祖父母を持つ若年層に利用者が偏り『格差の固定化』を助長する懸念があること、そもそも祖父母等の扶養義務者が支払う教育費は、通常必要と認められる範囲であれば、いわゆる『都度贈与(相法21の3①二)』として非課税であること等の指摘がなされていました」(財務省「令和8年度税制改正の解説」p718)
つまり「そもそも必要な都度、教育費として直接支払う分は別の規定で最初から非課税」という前提があり、そのうえで「一括して非課税枠を確保できる」特例だけが役割を終えた、という整理です。この「都度贈与」については、まとめの前でもう一度取り上げます。
制度の変わり目を、拠出のタイミングで整理すると次のとおりです。
| 内容 | 2026年3月31日まで | 2026年4月1日以降 |
|---|---|---|
| 新規の口座開設・一括拠出 | 可能 | 不可 |
| 既存口座への追加拠出 | 可能 | 不可 |
| 既存口座からの教育費払い出し | 可能 | 可能(契約期間内) |
国税庁タックスアンサーの原文でも、この点は次のように明記されています。
「この特例は、令和8年3月31日までとされていた適用期限が延長されずに終了することとされたため、令和8年4月1日以後については、この特例の適用を受けることはできません。ただし、令和8年3月31日までにこの特例の適用を受けた信託受益権または金銭等については、引き続きこの特例が適用されます」
すでに拠出した分はどうなる?「管理残額」に要注意
ここまでで「もう入っているお金はそのまま非課税で使える」ことはわかりました。ただし、注意しておきたいのが契約が終了したときに使い切れず残ったお金(管理残額)の扱いです。
契約は、原則として受贈者が30歳に達した時点で終了します(在学中・教育訓練を受けている場合などは届出により最長40歳まで延長できる例外があります)。このとき、非課税で拠出した金額から実際に使った教育資金を差し引いて残額があると、その残額は契約終了の日に贈与を受けたものとみなされ、贈与税の課税対象になります。
📅 契約終了までの流れ
信託口座へ拠出
領収書提出で払い出し
原則、契約終了
贈与税の課税対象
財務省の解説では、この課税の根拠が次のように示されています。
「教育資金管理契約が終了した場合(受贈者が死亡したことにより終了した場合を除きます。)において、その教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額……を控除した残額があるときは、その残額は、その終了の日において贈与により取得したものとみなされ、その終了の日の属する年の贈与税の課税価格に算入されます」(財務省「令和8年度税制改正の解説」p718)
さらに見落としやすいのが税率です。祖父母から孫への贈与であれば、通常は税負担が軽い「特例税率」が使えますが、2023年(令和5年)4月1日以降に拠出された部分は、管理残額に課税される際、特例税率ではなく「一般税率」が適用されます。「祖父母からの贈与だから税率も軽くなるはず」と思い込んでいると、想定より税負担が大きくなることがあります。
国税庁タックスアンサー No.4408の速算表と計算例で、実際にどのくらいの税額になるか確認してみましょう。
| 項目 | 金額・計算 |
|---|---|
| 管理残額(例) | 500万円 |
| 基礎控除後の課税価格 | 500万円-110万円=390万円 |
| 一般税率・控除額(390万円は「400万円以下」の区分) | 20%・控除25万円 |
| 贈与税額 | 390万円×20%-25万円=53万円 |
この計算式・税率区分は国税庁タックスアンサー No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」に掲載されている一般贈与財産用の速算表・計算例(贈与財産の価額が500万円の場合の計算例)をそのまま当てはめたものです。500万円の教育資金が「余ってしまった」だけで、53万円もの贈与税がかかる可能性がある、というのは実感が持ちにくいのではないでしょうか。在学中に計画的に使い切ることが、想像以上に大切になります。
贈与者が亡くなった場合は相続税の対象に
もう一つ押さえておきたいのが、契約期間の途中で贈与した側(祖父母など)が亡くなった場合です。この場合、亡くなった日時点の管理残額は、贈与者から相続または遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象に含まれます。
財務省の解説には次のようにあります。
「教育資金管理契約に基づき信託をした日等から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合(一定の場合を除きます。)には、その贈与者に係る受贈者については、管理残額をその贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされるため、管理残額は、その贈与者の死亡に係る相続税の課税対象に含まれることとなります」(財務省「令和8年度税制改正の解説」p718)
相続の実務手続きをお手伝いする中でも、「祖父母が孫のために作っていた口座」の存在を、相続発生後に家族が初めて知るというケースは珍しくありません。管理残額があるまま贈与者が亡くなると相続税の申告に影響しますので、口座の有無・残高は家族間で早めに共有しておくことをおすすめします。
これからの教育資金援助は「都度贈与」で
2026年4月1日以降、新しく非課税の一括贈与口座を作ることはできません。ですが、教育資金を非課税で援助する方法自体がなくなったわけではありません。
先ほど引用した財務省の解説にあったとおり、祖父母等の扶養義務者が、入学金・授業料などを必要な都度、その支払いにあてるために直接支払う場合は、そもそも贈与税の対象になりません(相続税法21条の3第1項第2号)。これがいわゆる「都度贈与」です。
一括贈与の特例と都度贈与は、性質が異なります。両者の違いを整理すると次のとおりです。
| 項目 | 一括贈与の特例(終了済み) | 都度贈与(今後も利用可) |
|---|---|---|
| 非課税枠 | 最大1,500万円をまとめて拠出 | 上限なし(通常必要な範囲) |
| 手続き | 金融機関で専用口座を開設し申告書を提出 | 口座開設不要。必要な都度、学校等へ直接支払う等 |
| 使い残しの扱い | 契約終了時に残額があれば贈与税課税 | その都度使い切るため「残額」という概念がない |
都度贈与を行う際は、「必要な都度」「教育費として通常必要と認められる範囲」であることが前提です。まとめて多額を渡して使わずに預金しておくような使い方は、都度贈与の考え方から外れる可能性があります。学費の請求書が届いたタイミングで、その都度、祖父母から学校の口座へ直接振り込んでもらう、領収書を保管しておく、といった運用が実務上は安心です。

✅ この記事のポイント
- 教育資金の一括贈与の非課税措置は、2026年3月31日で新規の適用が停止(延長なし)
- すでに拠出済みの資金は、制度終了後も引き続き非課税で教育費に使える
- 30歳到達などで契約が終了した際、使い残した管理残額には贈与税(一般税率)がかかる
- 契約期間中に贈与者が死亡すると、管理残額は相続税の対象になる
- これからの援助は、必要な都度・直接支払う「都度贈与」が引き続き非課税で利用できる
まとめ
教育資金の一括贈与の非課税措置は、2026年3月31日で新規の受付を終えました。あわてて解約する必要はありませんが、すでに口座をお持ちのご家庭は、①受贈者が30歳に近づいていないか、②使い切れず残りそうな金額がないか、③贈与者に万一のことがあった場合の相続税への影響、の3点を早めに確認しておくと安心です。これから新たに教育費の援助を考える場合は、必要な都度、直接支払う「都度贈与」という選択肢を覚えておいてください。自分で学ばないと、だれも教えてくれないからこのブログをきっかけに学ぼうと思っていただけると嬉しいです。
次回は、「教育資金の一括贈与と混同されやすい『結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置』の現状」について解説予定です。お楽しみに!


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