結婚・子育て資金の一括贈与は廃止?2027年3月の期限

【この記事でわかること】
・結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の仕組みと、いまの適用期限
・こども家庭庁が令和9年度税制改正で出した「廃止の要望」の中身と、現時点で決まっていないこと
・使い残しや贈与者の死亡で、贈与税・相続税がかかるケース
・教育資金の一括贈与との違いと、「都度贈与」という考え方

「子や孫の結婚と子育てのために、まとまったお金を非課税で渡せる制度があると聞いた。でも最近、なくなるらしい」——そんな声を耳にする機会が増えました。3児の父として、結婚、妊娠、出産、保育料と、子育てにお金がかかる場面が次々に来ることは身をもって知っています。
信託実務として遺言執行者・遺産整理受任者に携わっていると、贈与や相続の相談の中で「子や孫のために口座を作っておいた」というお話が出ることがあります。ただ、この制度が「いま、どういう状態なのか」を正確に説明できる情報は意外と少ないと感じます。教育資金の一括贈与は2026年3月末で新規適用が停止しましたが、結婚・子育て資金の方はまだ期限が残っています。今回は国税庁・こども家庭庁・財務省の一次資料をもとに、現状を整理します。
結婚・子育て資金の一括贈与とは?
この制度は、祖父母や父母などの直系尊属が、子・孫の結婚や妊娠・出産・育児に使うお金をまとめて贈与しても、金融機関の専用口座(信託など)を通じる形であれば贈与税がかからない、という仕組みです。こども家庭庁のページによると、平成27年(2015年)4月1日に創設されました(こども家庭庁「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 贈与する人 | 受贈者の直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母など) |
| 受け取る人 | 契約を結ぶ日に18歳以上50歳未満の人 |
| 非課税の限度額 | 受贈者1人あたり1,000万円まで |
| 結婚関係の費用 | 1,000万円の内枠で300万円が上限(1,300万円になるわけではありません) |
| 所得の要件 | 贈与を受けた年の前年分の合計所得金額が1,000万円を超える受贈者は対象外 |
| 手続き | 取扱金融機関を経由して「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出 |
国税庁の説明では、非課税の対象となる「結婚・子育て資金」は次のようなお金です(国税庁「父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」)。
| 区分 | 対象となる費用の例 |
|---|---|
| 結婚(300万円まで) | 挙式費用・衣装代などの婚礼費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払うもの)、家賃・敷金などの新居費用、転居費用 |
| 妊娠・出産 | 不妊治療・妊婦健診の費用、分べん費・産後ケアの費用 |
| 育児 | 子の医療費、幼稚園・保育所などの保育料(ベビーシッター代を含む) |
なお、結婚関係の300万円は、1,000万円の枠の中の上限です。こども家庭庁のQ&Aでも「非課税限度額の総額は1,000万円です」と明記されています(こども家庭庁Q&A Q1-6)。

期限は2027年3月31日|国の「廃止要望」の中身
まず、法律上の現状から確認します。国税庁タックスアンサーNo.4511(令和8年4月1日現在法令等)には、対象期間が「平成27年4月1日から令和9年3月31日まで」と書かれています(国税庁 No.4511)。一方、令和5年5月版の国税庁パンフレットでは同じ箇所が「令和7年3月31日まで」でした。つまり期限は2年先に延びて、現在は2027年3月31日になっています。
📅 タイムラインで見る
制度が創設
2025年3月31日
2027年3月31日
国は延長しない方向を要望
そのうえで、2026年8月に各府省庁が財務省へ出した令和9年度税制改正の要望の中に、この措置の「廃止」が入っています。こども家庭庁の要望書(見直し事項)には、次のように書かれています(こども家庭庁「令和9年度税制改正見直し事項(廃止・縮減)」)。
「令和9年3月31日の適用期限の到来をもって、本特別措置を廃止するとともに、同日までに拠出された金銭等については、引き続き本特別措置を適用できることとする。」
金融庁の令和9年度税制改正要望の資料にも、「結婚・子育て資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の廃止〔こども家庭庁主担〕」という項目が載っています(金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」)。
| 項目 | 現行ルール | 国の要望 |
|---|---|---|
| 新しく拠出できる期限 | 2027年3月31日まで | 期限到来で廃止 |
| すでに拠出した資金 | 引き続き非課税で使える | 同日までに拠出された分は引き続き適用 |
| 現在の位置づけ | 法律の規定 | 要望の段階 |
ここで大事なのは、これはあくまで「要望」であって、すでに決まった廃止ではないという点です。要望は各府省庁が財務省に出す申し出で、実際の扱いは今後の税制改正の議論を経て決まります(令和9年度の要望の一覧は財務省の掲載ページで公開されています)。ただし、要望の内容は「期限を延長しない」ことですから、何も延長措置が取られなければ、2027年3月31日で新しい拠出はできなくなります。
こども家庭庁は、廃止を求める理由として「近年は利用件数が低迷しており、今後の利用増加も見込み難い状況」と述べています。同じ要望書には、年ごとの利用件数も載っています。
利用件数は年に200件台で推移しています。要望書の「自己点検」では、制度の認知率の目標値(令和8年調査で30.0%)に対し、令和4年19.4%・令和6年23.2%・令和8年22.9%といずれも届いていないとも書かれています。
使い残しや贈与者の死亡で課税されるケース
この制度は「使い切れば非課税」という性質があるため、口座にお金が残ったまま契約が終わるケースが重要です。国税庁のパンフレットは、契約が終了する事由を次の3つとしています(国税庁パンフレット)。
| 終了の理由 | 口座に残額があるとき |
|---|---|
| 受贈者が50歳に達した | 非課税拠出額から支出額を差し引いた残額があれば、終了した年の受贈者の贈与税の課税価格に算入される |
| 口座の残高がゼロになり、終了の合意をした | 上と同じ(残額があるときは、終了した年の受贈者の贈与税の課税価格に算入される) |
| 受贈者が死亡した | 贈与税の課税価格に算入されるものはない |
ここで注意したいのは、暦年課税で申告する場合、令和5年(2023年)4月1日以後に取得した部分に対応する残額には、一般税率が適用されるという点です。「特例税率」を使えるとは限らない、と覚えておくとよいでしょう。
もう1つは、口座に預けている間に贈与者が亡くなった場合です。次のように扱いが変わります。
| 場面 | 税金の扱い |
|---|---|
| 贈与者が死亡した | 死亡日の「管理残額」を、受贈者が贈与者から相続等により取得したものとみなし、相続税の課税価格に含める |
| 受贈者が孫など子以外のとき | 令和3年(2021年)4月1日以後に取得した部分に対応する管理残額は、相続税額の2割加算の対象 |
| 払い出したが使途が対象外 | 結婚・子育て資金に充てていなかった分は課税される(こども家庭庁Q&A Q1-9) |
管理残額は金融機関で確認できるとされています。個別の金額や申告の要否は状況により変わるため、判断が必要な場合は税理士などの専門家にご相談ください。
⚠️ 一般的な制度の説明です
ここまでは、国税庁・こども家庭庁の公表資料にある一般的な制度の説明です。ご自身の口座や贈与の状況によって結論は変わります。

教育資金の一括贈与との違いと「都度贈与」
名前が似ていて混同されやすい教育資金の一括贈与は、すでに2026年3月31日で新規の適用が停止しています(詳しくは教育資金の一括贈与、2026年3月末で終了|既拠出分はどうなる?で解説しています)。2つの制度を並べると、次のようになります。
| 項目 | 教育資金の一括贈与 | 結婚・子育て資金の一括贈与 |
|---|---|---|
| 受け取る人 | 契約日に30歳未満 | 契約日に18歳以上50歳未満 |
| 非課税の限度額 | 1,500万円まで | 1,000万円まで(結婚関係は300万円まで) |
| 新しく拠出できる期限 | 2026年3月31日で終了 | 2027年3月31日(国は延長しない方向を要望) |
2つは併用もできます。ただし、教育資金の特例のために提出した領収書は結婚・子育て資金では使えず、同じ支払いを両方から重ねて払い出すことはできません(こども家庭庁Q&A Q1-10)。
では、この制度が使えなくなったら、子育てや生活費の援助はどうなるのでしょうか。国税庁のタックスアンサーNo.4405には、贈与税がかからない財産として「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」が挙げられています(国税庁 No.4405)。ここでいう生活費には、治療費、養育費その他子育てに関する費用も含まれます。
ただし条件があります。非課税になるのは、生活費や教育費として必要な都度、直接それに充てるものに限られます。生活費や教育費の名目で贈与を受けても、預金したり株式や不動産の購入資金に充てたりしている場合は贈与税がかかる、と同じ国税庁のページに書かれています。これがいわゆる「都度贈与」の考え方です。
なお、結婚のお祝いとして個人から受ける金品は「祝物」にあたり、社会通念上相当と認められる範囲であれば贈与税がかかりません。国税庁のNo.4405には、贈与税がかからない財産として「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」が挙げられています(国税庁 No.4405の項目8)。何が「社会通念上相当」かは、金額や贈与する人との関係などの状況で判断される点にご注意ください。判断に迷った場合は、税務署や税理士などの専門家に確認してください。
ほかの贈与の制度との関係については、贈与税の超キホンや特例贈与と一般贈与の違いの記事も参考にしてください。
✅ この記事のポイント
- 結婚・子育て資金の一括贈与は、18歳以上50歳未満の子・孫へ1,000万円まで非課税(結婚関係は300万円まで)
- 法律上の期限は2027年3月31日。こども家庭庁は期限の到来で廃止(延長しない)を要望している
- 廃止は「要望」の段階で、決定事項ではない。同日までに拠出した分は引き続き適用する旨も要望されている
- 50歳到達などで残額があると贈与税、贈与者の死亡時は管理残額が相続税の対象になる
- 必要な都度、直接生活費・教育費に充てる贈与は、そもそも贈与税がかからない
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まとめ
結婚・子育て資金の一括贈与は、現時点では2027年3月31日まで使える制度です。ただ、こども家庭庁が期限での廃止を要望しており、利用件数も年200件台にとどまっています。すでに口座をお持ちの方は、①受贈者が50歳に近づいていないか、②使い残しそうな金額がないか、③贈与者に万一のことがあった場合の相続税への影響、の3点を早めに確認しておくと安心です。要望が実際にどうなるかは、今後の税制改正の議論を見守りましょう。自分で学ばないと、だれも教えてくれないからこのブログをきっかけに学ぼうと思っていただけると嬉しいです。
次回は「相続登記を自分で行う手順|書類集めと申請書の書き方」について解説しています。


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