確定申告はどう変わった?令和2〜7年の6年間を振り返る
【この記事でわかること】
・確定申告のe-Taxが、令和2年〜令和7年でどこまで広がったか(55.1%→77.1%)
・申告人員・納税額・譲渡所得・贈与税の6年間の推移(すべて全国・国税庁データ)
・インボイス・定額減税・ミニマムタックスなど、毎年の制度変更が申告にどう表れたか

「確定申告」と聞くと、税務署の長い列に並んだ記憶がよみがえる方も多いのではないでしょうか。でも、この数年で、その”常識”は大きく変わりました。
私は元・国税局で税務の実務に携わってきました。その視点から令和2年分(2020年)〜令和7年分(2025年)の国税庁の確定申告状況を並べてみると、コロナ禍をきっかけに申告が「会場に行くもの」から「自宅・スマホで完結するもの」へと様変わりし、同時に株高・地価上昇を背景に譲渡所得や贈与税が過去最高を更新し続ける——そんな6年間の姿が数字ではっきり見えてきます。この記事では、国税庁が公表した全国データだけを使って、その変化をやさしく振り返ります。
① コロナ禍が変えた申告の「かたち」|e-Tax55%→77%へ
いちばん大きく変わったのが、e-Tax(電子申告)の利用率です。令和2年分は55.1%でしたが、令和7年分には77.1%まで上昇し、いまや4人に3人がe-Taxで申告しています(出典:国税庁 令和2年分/令和7年分 確定申告状況)。
| 年分 | e-Tax利用率 | うち自宅等からのe-Tax |
|---|---|---|
| 令和2年分 | 55.1% | 35.1% |
| 令和3年分 | 58.3% | 40.4% |
| 令和4年分 | 65.1% | 46.9% |
| 令和5年分 | 69.0% | 50.9% |
| 令和6年分 | 74.0% | 56.8% |
| 令和7年分 | 77.1% | 61.8% |
きっかけは、令和2年分のコロナ禍でした。申告期限が4月末まで延長され、会場の混雑を避けるために「自宅からのe-Tax」がすすめられたことで、自宅で申告を完結させる流れが一気に定着したのです。自宅等からe-Taxで提出した人は、令和2年分の約790万人から令和7年分には約1,454万人へと、6年でほぼ倍増しました(出典:国税庁 令和7年分/令和2年分)。さらに令和7年分では、自宅からのスマホ申告が497万人(全体の約4割)に達しています。
📌 数字の注意点:「77.1%」はあくまで令和7年分の全国のe-Tax利用率です。令和2年分の全国の利用率は55.1%でした。地域(各国税局管内)ごとの集計では別の割合が示されることもあるため、この記事では国税庁が公表した全国の数値に統一しています。

② 数字で見る6年間|申告人員と納税額の推移
申告する人の数も、納める税額も、この6年でじわじわと増えています。申告人員は令和2年分の2,249万人から令和7年分には2,353万人へ。申告納税額(所得税等)は3兆1,653億円から4兆6,897億円へと、約1.5兆円も増えました(いずれも全国・出典:令和2年分〜令和7年分)。下表の令和3年分・令和5年分の数値は、それぞれ国税庁 令和3年分資料・令和5年分資料で確認しています。
| 年分 | 申告人員 | 申告納税額(所得税等) |
|---|---|---|
| 令和2年分 | 2,249万人 | 3兆1,653億円 |
| 令和3年分 | 2,286万人 | 3兆7,915億円 |
| 令和4年分 | 2,295万人 | 3兆6,801億円 |
| 令和5年分 | 2,324万人 | 4兆499億円 |
| 令和6年分 | 2,339万人 | 4兆3,989億円 |
| 令和7年分 | 2,353万人 | 4兆6,897億円 |
人数の伸び(約4.6%増)以上に納税額(約48%増)が伸びているのがポイントです。背景には所得水準の上昇に加え、後で見る「資産インフレ」の影響があります。なお令和6年分は、定額減税の影響で納税人員が前年比22.6%減という特殊な動きも見られました(出典:国税庁 令和6年分)。制度変更が、その年の数字にそのまま表れているのがわかります。
③ 「資産インフレ」の実像|譲渡所得と贈与税の過去最高ラッシュ
資産税の視点でこの6年間を見ると、個人のお金の動きが非常に活発になっています。土地や株式を売った利益(譲渡所得)、そして贈与税の金額が、そろって大きく伸びました。
| 年分 | 土地等の譲渡所得 | 株式等の譲渡所得 | 贈与税の納税額 |
|---|---|---|---|
| 令和2年分 | 4兆2,160億円 | 3兆5,053億円 | 2,772億円 |
| 令和3年分 | 約4.9兆円 | 約4.6兆円 | 3,327億円 |
| 令和4年分 | 5兆4,392億円 | 4兆630億円 | 約3,200億円 |
| 令和5年分 | 約6.1兆円 | 約5.7兆円 | 約3,548億円 |
| 令和6年分 | 6兆4,993億円 | 8兆854億円 | 約3,935億円 |
| 令和7年分 | 6兆9,394億円 | 6兆8,603億円 | 5,038億円 |
土地等の譲渡所得は令和7年分で6兆9,394億円と、4年連続で過去最高を更新しました。全国的な地価の上昇や金(ゴールド)価格の高騰が要因とされています(出典:国税庁 令和7年分)。株式等の譲渡所得は、新NISAや株高を受けて令和6年分に8兆854億円と過去最高を記録しました(令和7年分は株式市場の影響で減少)。
そして贈与税の納税額は、令和7年分に5,038億円と過去最高に。令和2年分(2,772億円)から6年でほぼ倍増した計算です。令和6年分から相続時精算課税に「年110万円の基礎控除」が加わったことも、生前贈与を後押ししています。

④ 6年間の制度クロニクル|インボイス・定額減税・ミニマムタックス
この6年間は、大きな税制変更が毎年のように申告状況へ直接反映された期間でもありました。主なできごとを一覧にまとめます。
| 年分 | 主なできごと・制度変更 |
|---|---|
| 令和2年分 | コロナ禍で申告期限を4月末まで延長。自宅からのe-Taxが広がり始める |
| 令和3年分 | 簡易な方法での期限延長が可能に(コロナ対応)。マイナンバーカード方式の利用が拡大 |
| 令和4年分 | e-Tax利用率が65%を突破。スマホ・マイナポータル連携がさらに普及 |
| 令和5年分 | インボイス制度が開始。個人事業者の消費税申告件数が急増し始める |
| 令和6年分 | 定額減税で納税人員が前年比22.6%減。相続時精算課税に年110万円の基礎控除が導入 |
| 令和7年分 | ミニマムタックス(高所得者の負担適正化)を初適用(744人)。土地譲渡所得は4年連続、贈与税納税額も過去最高 |
特にインボイス制度の影響は大きく、個人事業者の消費税の申告件数は、制度開始前の令和4年分は約105万件でしたが、令和7年分には217万件と、およそ2倍に増えました(出典:令和4年分/令和7年分)。また令和7年分から始まったミニマムタックス(極めて高い所得への負担適正化措置)の適用者は744人でした。制度が複雑になるほど、正しい知識と早めの準備が大切になっています。
✅ この記事のポイント
- e-Tax利用率は令和2年分55.1%→令和7年分77.1%。申告は「会場」から「自宅・スマホ」へ
- 申告人員2,249万→2,353万人、納税額3.2兆→4.7兆円と、6年で着実に増加
- 土地譲渡所得は4年連続、贈与税納税額も過去最高。「資産インフレ」が数字に表れている
- インボイス・定額減税・ミニマムタックスと、毎年の制度変更が申告状況に直結
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まとめ:確定申告は「季節行事」から「スマホで完結」の時代へ
令和2年から令和7年までの6年間で、確定申告は「税務署へ行く季節行事」から、スマホやPCで「いつでもどこでも完結できるタスク」へと姿を変えました。便利になった一方で、インボイスや各種減税など制度そのものは複雑になっています。ツールが便利になったからこそ、その裏側にある正確な知識を持ち、早めに準備する姿勢がより大切になっています。
自分で学ばないと、だれも教えてくれません。このブログをきっかけに、毎年の申告を「なんとなく」ではなく「わかって」進めていただけたら嬉しいです。
次回は、「インボイス制度で個人事業者の消費税負担は実際どう変わったのか」を、数字を追いながらやさしく解説する予定です。お楽しみに。


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