退職後の住民税はいつ払う?退職月で変わる3つの払い方

【この記事でわかること】
・退職したあと住民税の請求が「後から」届く理由
・退職した月で変わる住民税の払い方(一括徴収・普通徴収)
・転職先で給与天引きを続けるための手続きと期限

退職の手続きは、健康保険・年金・失業保険と、やることが次々に出てきます。その中で見落とされやすいのが住民税です。「辞めて収入が減ったのに、住民税の納付書が届いて驚いた」という話は珍しくありません。
私自身、公務員を辞めるときは「公務員は給料から天引き、民間は自分で納める」くらいに思い込んでいました。調べ直してみると、払い方を決めるのは勤め先の種類ではなく「いつ退職したか」でした。この記事では、地方税法の条文と自治体の手引きをもとに、退職後の住民税の払い方を整理します。
📌 退職後の住民税は「1年遅れ」でやってくる
住民税(個人住民税)は、都道府県民税と市区町村民税を合わせた税金です。東京都の特別徴収の事務手引きでは「1月1日現在お住まいの区市町村で課税、徴収される税金」と説明されています。
そして税額は、前年の所得をもとに計算されます。同じ手引きのQ&Aにも「個人住民税は前年の所得に対して計算しますので」とあります。会社員なら、6月から翌年5月まで12回に分けて給与から天引きされるのが基本です(地方税法第321条の5第1項)。
元国税職員として補足すると、所得税は国の税金で、その年の給与からその年のうちに源泉徴収されます。一方の住民税は市区町村の税金で、前年の所得をもとに翌年度に課税されます。同じ「給与にかかる税金」でも、計算の時期がまるごと1年ずれているのです。
このずれは国も課題として認識しています。総務省の「令和元年度 個人住民税検討会報告書」(2019年10月)には、翌年度課税について「転職や定年退職等により前年に比べて収入が大きく減少した者にとっては負担感が重くなるなどの課題が指摘されてきた」と書かれています。ただし、現在の地方税法も翌年度課税の仕組みのままです(賦課期日は1月1日・第318条)。
🔍 退職後に住民税で慌てる3つの原因
① 収入がなくても「前年の所得」で請求される
住民税は前年の所得で決まるため、退職して今の収入がゼロでも、前年に働いた分の住民税は残っています。退職した翌年も、前年の所得に対する住民税がかかります。
② 退職すると給与天引きが止まる
会社に勤めている間は、会社が毎月の給与から住民税を差し引いて市区町村に納めています(特別徴収)。退職すると、退職した月の翌月以降の分は会社が差し引く義務がなくなります(地方税法第321条の5第2項)。残りは自分で納付書で払う「普通徴収」に切り替わるのが基本です。
③ 退職した月によってルールが違う
残りの住民税を最後の給与や退職金からまとめて差し引く「一括徴収」になるかどうかは、退職した月で決まります。ここを知らないと、「最後の給与の手取りが思ったより少ない」「自宅に納付書が届いた」と慌てることになります。
住民税は、辞めた瞬間に終わる税金ではありません。次の章で、退職した月ごとの払い方を表で確認しましょう。

📅 退職した月で変わる住民税の払い方
地方税法第321条の5第2項と東京都の事務手引き(令和5年11月)をもとに、退職した時期ごとの扱いをまとめると次のとおりです。
| 退職した時期 | 残りの住民税の払い方 | 本人の申出 |
|---|---|---|
| 6月1日〜12月31日 | 原則は普通徴収(納税通知書・納付書で自分で納付)。申し出れば最後の給与・退職手当等から一括徴収 | 一括徴収にするなら必要 |
| 1月1日〜4月30日 | 5月31日までに支払われる給与・退職手当等から一括徴収(支払額が残りの税額に満たない場合などを除く) | 不要 |
| 5月中 | 最終月分として給与から特別徴収 | 不要 |
出典:地方税法第321条の5第2項(e-Gov法令検索)、東京都「個人住民税 特別徴収の事務手引き」(令和5年11月)
1月〜4月に退職した人は、本人が何も言わなくても最後の給与や退職金からまとめて差し引かれるのがポイントです。島根県のQ&Aも「納税義務者本人の申出がなくても」一括して天引きしなければならないと説明しています。最後の給与の手取りが大きく減るのはこのためです。
ただし、5月31日までに支払われる給与・退職手当等が残りの税額に満たないときは、全額を一括徴収する対象から外れます。東京都の手引きでは、死亡退職の場合も一括徴収の対象外とされています。
6月〜12月に退職した人は、一括徴収と普通徴収のどちらかになります。違いを並べると次のとおりです。
| 項目 | 一括徴収 | 普通徴収 |
|---|---|---|
| 払い方 | 最後の給与・退職手当等から会社が差し引く | 市区町村から届く納付書で自分で納める |
| 手続き | 退職時に会社へ申し出る | 申出は不要(自動で切り替わる) |
| 最後の手取り | 残りの税額の分だけ減る | 減らない(後で納付する) |
| 納め忘れ | 起きない | 納期限の管理が必要 |
出典:東京都「個人住民税 特別徴収の事務手引き」(令和5年11月)、浜田市「退職・休職される方の個人住民税一括徴収について」
📝 私の場合:退職時に翌年5月分までまとめて精算しました
ここまでは制度の話でした。実際にどうなるかの一例として、私が公務員を辞めたときの経験を書いておきます。退職した月は伏せます。扱いは退職の時期や勤め先で変わるので、上の表もあわせて確認してください。
私の場合は、退職時に住民税をまとめて精算する形でした。人事課の給与係から「退職するときは退職金から住民税が引かれます」と説明を受け、自分で選ぶ形ではありませんでした。翌年の5月分までの未納分を退職金から差し引いてもらい、一括で納めました。そのため、再就職したあとも、翌年5月までは住民税の支払いがありませんでした。給与からの天引きが再び始まったのは、翌年の6月の給与からです。
なお、このとき退職金から差し引かれたのは、前年の給与などにかかる住民税の未納分です。退職金そのものにかかる住民税(分離課税)とは別の話です。
プチ情報:私の場合は選ぶ余地がありませんでしたが、上の表のとおり、制度上は6月〜12月の退職で一括徴収を選ぶ形も想定されています。勤め先によって運用は違うかもしれないので、退職前に人事・総務へ確認しておくと安心です。
💡 転職先が決まっているなら、天引きを続けられます
すぐに次の会社へ移る場合は、新しい勤務先を通じて申し出ることで、住民税の天引き(特別徴収)を続けられます。期限は、前の会社から給与を受けなくなった日の属する月の翌月10日まで(その日が4月中なら4月30日まで)です(地方税法第321条の4第5項)。実務では、前の会社と新しい会社が「給与所得者異動届出書」をやり取りして市区町村に提出します。
📎 退職金にかかる住民税は別の仕組みです
退職金(退職手当等)にかかる住民税は、ほかの所得と分けて計算され、退職金を支払う会社が差し引いて納めます(分離課税)。この記事で扱っているのは、前年の給与などにかかる住民税の払い方です。退職金の税金の計算は退職金の税金はいくら?退職所得控除の計算式をやさしく解説で解説しています。

✅ 退職前後に今日からできる3つのこと
① 退職月を決めたら、住民税の扱いを会社に確認する
「一括徴収になるのか」「普通徴収に切り替わるのか」を、退職前に人事・総務へ確認しておきましょう。6月〜12月の退職なら、一括徴収を申し出るかどうかもこのときに決めます。
② 転職先が決まっているなら、天引きの継続を伝える
新しい会社の担当者に「前職で住民税を特別徴収されていた」と伝え、異動届出書の手続きを依頼します。期限は前の会社を辞めた月の翌月10日までなので、入社手続きと一緒に済ませるのが確実です。
③ 翌年度の住民税を取り分けておく
退職した年に得た給与にも、翌年度の住民税がかかります。翌年4月1日の時点で給与を受けていなければ特別徴収の対象にならず(地方税法第321条の3)、市区町村から納税通知書が届いて自分で納めることになります。普通徴収の納期は原則として6月・8月・10月・1月中で、市区町村の条例で決まります(同第320条)。
📅 タイムラインで見る(例:2026年9月30日に退職し、普通徴収になった場合)
最後の天引き
納付書で自分で納付
2026年中の所得の通知
この例では、2026年10月から2027年5月までの8か月分が普通徴収に切り替わります。さらに2027年度分として、2026年1月〜9月の給与などにかかる住民税の納税通知書が届きます。退職した年の翌年度まで、住民税の支払いは続くと考えておくと慌てずに済みます。
✅ この記事のポイント
- 住民税は前年の所得をもとに、1月1日の住所地で課税される(退職後も請求が来る)
- 6月〜12月の退職は原則普通徴収、申し出れば一括徴収
- 1月〜4月の退職は、申出がなくても最後の給与・退職金から一括徴収が原則
- 5月の退職は最終月分として給与から特別徴収
- 転職先で天引きを続けるなら、翌月10日までに新しい勤務先を通じて申し出る
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まとめ
退職後の住民税は、前年の所得をもとに「1年遅れ」でやってきます。払い方は退職した月で決まり、6月〜12月なら普通徴収か一括徴収、1月〜4月なら一括徴収が原則、5月なら最終月分の天引きです。転職先が決まっていれば、翌月10日までの申出で天引きを続けられます。
住民税のことを知っておくだけで、退職前後のお金の不安はかなり小さくなります。転職活動は、ノーリスク。まずは踏み出す一歩を。
次回は「40代の転職で年収は上がる?賃金変動のデータを読む」について解説しています。


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