黒字でもリストラされる時代|「安定」の定義が変わった2026年の転職市場

【この記事でわかること】
・「黒字リストラ(Quiet Restructuring)」とは何か
・好業績の企業が、なぜ今こぞって人を減らしているのか
・元国税職員が民間に転職して見えた、「安定」の意味の変化

「黒字リストラ」とは?
東京商工リサーチの調査によると、2025年度に「早期・希望退職募集」を行った上場企業は46社、募集人数は2万781人にのぼりました。これは前年度(8,326人)の約2.5倍で、2009年度以降で4番目に多い水準です(出典:東京商工リサーチ「2025年度の『早期・希望退職』は2万781人」2026年4月30日)。
注目すべきは中身です。実施した46社のうち黒字企業は32社(構成比69.5%)で、募集人数で見ても黒字企業分が全体の81.3%を占めました。業績が悪化してから慌てて人を減らすのではなく、業績が堅調なうちに将来の事業構成を見直す——これが「黒字リストラ」と呼ばれる動きです。

数字で見る2025年度の「黒字リストラ」
具体的にどの企業が、どのくらいの規模で動いたのか。東京商工リサーチの記事で名前が挙がっている企業を、一覧にしました。
| 企業 | 人数・対象 | 補足 |
|---|---|---|
| 三菱電機 | 4,700人(応募見込み) | ネクストステージ支援制度特別措置 |
| 三菱ケミカルグループ | 1,273人 | 50歳以上の応募者 |
| シャープ | 1,170人 | 亀山第2工場の生産停止に伴う社外転進支援 |
| 東芝 | 約3,500人 | 「東芝再興計画」に基づく早期退職・グループ内再配置(2024年11月末までの実績) |
| 日産自動車 | 約1,800人(対象見込み) | 国内5工場の事務系職員、2026年9月実施予定 |
出典:東京商工リサーチ「2025年度の『早期・希望退職』は2万781人」(2026年4月30日)、東芝公式ニュースリリース(2024年11月29日)、レスポンス(Response.jp)(2026年6月26日付)
日産は世界で2027年度までに2万人を削減する計画の一環として、2025年に続き2026年も国内で早期退職を募る方針です。東芝も2024年5月に発表した「東芝再興計画」に基づき、同年11月末までに約3,500人が早期退職や再配置の対象となりました。いずれも、業績不振に追い込まれた末の緊急対応ではなく、あらかじめ計画された組織の作り直しです。
なぜ好業績の企業が人を減らすのか(3つの背景)
① 働き手そのものが減っていく
日本の生産年齢人口は減少を続けています。今いる人数のまま同じ仕事を続けていては立ち行かなくなるため、重複業務を見直し、少ない人数で回せる体制に組み替える動きが出ています。
② AI活用を前提に、業務そのものを作り直す必要がある
生成AIの活用が広がる中、事務・管理系の業務は特に見直しの対象になりやすい分野です。単に人を減らすだけでなく、カゴメの5段階DX研修、サイバーエージェントの「CA AI Academy」、富士通の全社員デジタル教育のように、残る社員のスキルを底上げする投資とセットで進める企業が目立ちます。
③ 「業績が良いうちに動く」ほうが選択肢が広い
業績が悪化してから人員を削るのは、会社にとっても社員にとっても厳しい選択です。逆に業績が堅調なうちであれば、割増退職金や再就職支援を手厚くできるなど、双方にとって条件を整えやすいという事情もあります。

「安定」をどこに置くか|元国税職員として感じること
私自身、国税専門官として働いていた頃は、「公務員=定年まで会社(役所)が守ってくれる」という前提を疑ったことがありませんでした。民間企業への転職を考えたとき、周囲から「もったいない」「民間は不安定だから」と言われたこともあります。
実際に転職して見えたのは、少し違う景色でした。「会社が一生の面倒を見てくれる」という前提そのものが、公務員・民間を問わず揺らぎ始めているということです。黒字リストラは、その変化が民間企業でとりわけ数字にはっきり表れた例だと感じています。
だからといって、悲観する必要はありません。会社という「箱」に安定を預けるのではなく、自分のスキルや経験が、その会社の外でも通用するかどうかに意識を向けておく。それが、これからの時代の「安定」の作り方だと思います。
✅ この記事のポイント
- 2025年度の早期・希望退職募集は2万781人で前年度の約2.5倍、実施企業の約7割が黒字企業
- 三菱電機・三菱ケミカル・シャープ・東芝・日産など、名だたる企業が業績堅調なうちに組織を作り直している
- 背景には人手不足・AI活用による業務の作り直し・条件を整えやすいタイミングでの決断という3つの事情がある
- 会社に預ける安定から、自分のスキルに宿る安定へ。意識の向け方を変えることが今できる備え
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まとめ
黒字企業の約7割がリストラに踏み切る時代は、「安定した会社に入れば一生安心」という前提が、もはや成り立たないことを物語っています。公務員も民間も関係なく、これからは会社任せの安定ではなく、自分自身のスキルで選べる安定を育てていく発想が必要です。まずは自分の市場価値を知ることから、一歩を踏み出してみませんか。
転職活動は、ノーリスク。まずは踏み出す一歩を。
次回は「求人倍率2.38倍でも『動けない人』が増えている理由|2026年転職市場のもう一つの顔」について解説予定です。お楽しみに!


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