求人倍率2.86倍でも「動けない人」が増える理由

【この記事でわかること】
・doda転職求人倍率が2026年8月に2.86倍まで上がった中身
・「転職したい」1,023万人のうち、実際に仕事を探している人の数
・求人が多いのに動けない人が増えている3つの原因
・元国税職員の私が、動けない時期に続けていたこと

「転職市場は売り手市場」「求人倍率が上昇」——そんな見出しを見るたびに、「じゃあ、なぜ自分は動けないんだろう」と少しモヤっとしたことはありませんか。
前回の記事「黒字でもリストラされる時代」では、業績が良い会社でも早期退職を募る時代になったことをお伝えしました。今回はその裏側、求人は増えているのに、動けない人も増えているという、転職市場のもう一つの顔を見ていきます。
私自身、国税の職場に16年以上いて、転職を意識してから実際に動くまでには、周りに言わずに準備を続けた期間がありました。その経験も交えながら、データを一緒に読み解いていきましょう。
📈 転職求人倍率とは?2026年8月は2.86倍に上昇
転職求人倍率とは、転職サービス「doda」が毎月公表している指標で、転職希望者1人に対して中途採用の求人が何件あるかを示す数値です。算出式は「求人数(採用予定人員)÷転職希望者数」で、分子・分母はいずれもdoda独自の定義によるものです(doda「転職求人倍率レポート」)。
2026年9月17日に発表された2026年8月の倍率は2.86倍。前月から0.15ポイント、前年同月から0.44ポイント上昇しました(パーソルキャリア株式会社プレスリリース(2026年9月17日))。前回予告でお伝えした「2.38倍」は2026年4月の数値で、そこから4か月連続で上がっています。
| 対象月 | 転職求人倍率 |
|---|---|
| 2026年1月 | 2.57倍 |
| 2026年2月 | 2.40倍 |
| 2026年3月 | 2.39倍 |
| 2026年4月 | 2.38倍 |
| 2026年5月 | 2.44倍 |
| 2026年6月 | 2.55倍 |
| 2026年7月 | 2.71倍 |
| 2026年8月 | 2.86倍 |
出典:doda「転職求人倍率レポート(データ)」(2026年9月17日発表)
ここで押さえておきたいのが中身です。2026年8月の求人数は前年同月比で18.7%増えた一方、転職希望者数は前年同月比0.3%増とほぼ横ばいでした(同レポート)。つまり倍率の上昇は、求人が増えた一方で、動く人がほとんど増えていないことの表れでもあります。
なお、この倍率はdoda会員をもとにした民間の独自指標で、以前の記事「40代の転職、実は過去最高水準」で紹介した厚生労働省の「有効求人倍率」(ハローワークの統計)とは別物です。数字の大きさを単純に比べないよう注意してください。

👥 「転職したい」1,023万人、仕事を探しているのは360万人
では、「動けない人」は本当に増えているのでしょうか。国の統計である総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年(令和7年)平均結果」を見てみます。
この調査の「転職等希望者」とは、今の仕事を辞めてほかの仕事に変わりたい人、または今の仕事のほかに別の仕事もしたい人のことです(同 要約)。副業を希望する人も含まれる点には注意が必要です。
| 区分 | 2024年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 転職者 | 331万人 | 330万人 | 1万人減 |
| 転職等希望者 | 1,000万人 | 1,023万人 | 23万人増 |
| うち仕事を探している人(求職者) | 344万人 | 360万人 | 16万人増 |
| うち仕事を探していない人(非求職者) | 656万人 | 663万人 | 7万人増 |
出典:総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年(令和7年)平均結果」(第5 就業異動の状況)
実際に転職した人は330万人で、4年ぶりに減少しました。一方で「転職したい」という人は1,023万人と2年ぶりに増えています。そして、そのうち663万人は、転職を希望しながら仕事を探していない人です。
📅 転職等希望者数の推移(労働力調査)
897万人
1,007万人
1,023万人
「辞めたい気持ちはあるけれど、探すところまではいかない」。これは決して一部の人の話ではなく、統計の上でもはっきり見える大きな層なのです。
🔍 求人倍率が高いのに動けない人が増える3つの原因
原因① 求人が一部の職種に集中している
全体の倍率が2.86倍でも、すべての仕事で求人が多いわけではありません。2026年8月の職種別の倍率を見ると、その差は歴然です。
| 職種 | 転職求人倍率(2026年8月) |
|---|---|
| エンジニア(IT・通信) | 12.04倍 |
| エンジニア(機械・電気) | 6.81倍 |
| 専門職(コンサル・金融) | 6.63倍 |
| 企画・管理 | 3.28倍 |
| 営業 | 3.14倍 |
| 販売・サービス | 0.82倍 |
| 事務・アシスタント | 0.65倍 |
出典:doda「転職求人倍率レポート(データ)」職種別(抜粋)。転職希望者の職種は、希望職種ではなく直近の仕事の職種で集計されています。
事務・アシスタントは0.65倍で、希望者のほうが求人より多い状態です。「全体の倍率」は、自分の職種の倍率ではない——ここを見落とすと、「売り手市場のはずなのに」と自分を責めることになりかねません。
原因② 採用が「数」から「即戦力」重視へ変わった
dodaの「転職市場予測2026下半期」(2026年7月6日更新)によると、コロナ禍以降は未経験者も含めて採用枠を広げる企業が増えていましたが、足元ではその拡大局面が一段落し、「入社後に早期に活躍できる人材かどうか」を重視する傾向に変わってきているとされています。
求人の数は多くても、「経験やスキルをどう活かせるか」を具体的に説明できないと選考に進みにくい。求人の多さと、自分が選ばれやすいかどうかは別の話なのです。
原因③ AIの浸透で、求められる人材像が変わった
同じ予測では、15の業界・職種のうち12分野が「求人増加」または「好調維持」と見込まれる一方、唯一「減少」とされたのが事務・アシスタントでした。背景として、企業がこれまで人の手で行ってきた定型業務をAIに任せる動きが進んでいることが挙げられています(doda「転職市場予測2026下半期」)。
同予測では、AIをどう活用して成果につなげたかを自分の言葉で語れることが、効果的なアピールになるとしています。これまでの経験がそのまま通用するのか分からない——その不安が、一歩目をためらわせる理由の一つになっているように感じます。

🌱 動けない状態から抜け出すには|今日からできること
私も国税にいた頃は、転職を意識してから、周りには言わずに資格の勉強をコツコツ続けていた時期がありました。FP1級や宅建は、その時期に取ったものです。すぐに動けなくても、「動ける状態」を準備しておくことはできると、今振り返って思います。
また、国税の職場は情報漏洩を防ぐためにインターネットと切り離された環境が基本で、正直なところITやAIには強くありませんでした。転職後、このブログの運営を通じてAIの使い方を実地で学んでいますが、机の上の勉強より手を動かすほうが身につくと実感しています。
💡 今日からできる3つのアクション
- 全体の倍率ではなく、自分の職種の倍率をdodaのデータページで確かめる
- 今の仕事で「改善したこと」「成果につながったこと」を3つ書き出し、ポータブルスキル(職種が変わっても活かせる力)として言葉にしておく
- 日々の業務で、AIツールを小さく1つ試してみる(試した経験そのものが、語れる材料になります)
転職活動のやり方そのものについては、転職エージェントの裏側と職務経歴書の書き方で、私が実際に3つの転職サイトを使ったときの体験をまとめています。
✅ この記事のポイント
- doda転職求人倍率は2026年8月に2.86倍。求人数は前年同月比18.7%増、転職希望者数は0.3%増
- 労働力調査では、転職等希望者1,023万人のうち663万人が仕事を探していない
- 職種別の倍率はエンジニア(IT・通信)12.04倍、事務・アシスタント0.65倍と大きな差がある
- 採用は「数」から「入社後に早期に活躍できる人材」重視へ。AIの浸透で求められる人材像も変化
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📝 まとめ|倍率より「自分の職種」と「語れる経験」を見る
求人倍率2.86倍という数字は、転職市場が活発であることを示しています。ただその裏では、転職を希望しながら仕事を探していない人が663万人いて、求人は一部の職種に集中しています。全体の数字に振り回されず、自分の職種の状況と、自分が語れる経験を確かめることが、動けない状態から抜け出す最初の一歩です。
転職活動は、ノーリスク。まずは踏み出す一歩を。
次回は「AI時代に評価されるポータブルスキルとは|公務員経験の棚卸し方」について解説予定です。お楽しみに!


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