「給与が低い・昇給が見込めない」転職理由1位36.6%|元国税職員が読む公務員の壁
【この記事でわかること】
・doda「転職理由ランキング2025年版」で5年連続1位の転職理由
・公務員の昇給が「頭打ち」に感じられる3つの構造的な理由
・「昇給を待つ」から抜け出すために今日からできること
「今年もボーナスは横ばい」「昇給どころか、来年の給料もほぼ読める」——そんな諦めに近い実感を抱えていませんか。頑張っても給料が上がる気配がない。かといって、何をどう変えればいいのか分からない。そんなモヤモヤを抱えたまま、今日も出勤している方は少なくないと思います。
私は国税専門官として16年以上、税務署・国税局で勤務した後、民間企業へ転職しました。「給料が上がらない」という感覚は、気のせいでも甘えでもありません。実は、多くの組織の給与制度そのものに、昇給を頭打ちにする「仕組み」が組み込まれています。今回は、転職理由の全国データと、私が実際に見てきた公務員の給与制度を重ねながら、その正体を解き明かしていきます。
📊「給与が低い・昇給が見込めない」が5年連続で転職理由1位
転職サイトdodaが公表した「転職理由ランキング【最新版】2025年版」(2024年7月〜2025年6月に転職した人が対象)によると、転職理由の総合1位は「給与が低い・昇給が見込めない」で、回答割合は36.6%でした。前回調査の33.6%から3.0ポイント上昇しており、2021年から2025年まで5年連続で1位という結果です(出典:doda「転職理由ランキング【最新版】」)。
| 順位 | 転職理由 | 割合 | 前回 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 給与が低い・昇給が見込めない | 36.6% | 33.6%(1位) |
| 2位 | 労働時間に不満(残業が多い/休日出勤がある) | 26.3% | 20.3%(4位) |
| 3位 | 個人の成果で評価されない | 22.8% | 10.9%(18位) |
年代別に見ると、30代〜50代はいずれも「給与が低い・昇給が見込めない」が1位(30代36.9%・40代39.6%・50代31.9%)です。唯一20代だけは「労働時間に不満」が1位(44.6%)で、「給与・昇給」は3位(37.0%)にとどまっています。売り手市場や初任給引き上げの流れで、若手ほど待遇への納得感が高まっている一方、キャリアを重ねた世代ほど「昇給の見込みのなさ」を強く感じている構図が見えてきます。
📅 年代別「給与が低い・昇給が見込めない」の順位
3位・37.0%
1位・36.9%
1位・39.6%
1位・31.9%
🔍 なぜ公務員は「昇給が見込めない」と感じやすいのか|3つの構造
「公務員は安定しているし、年功序列で給料も自然に上がるのでは」と思われがちですが、実際に中で働いてみると、むしろ公務員の給与制度こそ「昇給が見込めない」と感じさせる仕組みが色濃いと実感します。国家公務員の給与は、人事院が定める俸給表の「級」と「号俸」の組み合わせで決まります。ここには、昇給を頭打ちにする3つの壁があります。
①昇給の「枠」による頭打ち構造
国家公務員の人事評価そのものは、令和4年10月の改定で「卓越して優秀」「非常に優秀」「優良」「良好」「やや不十分」「不十分」という言葉(評語)で示されるようになりました(それ以前はS・A・B・C・Dの記号表記)。この評価結果の組み合わせに基づいて、昇給の号俸数を決める5段階の「昇給区分」(A・B・C(標準)・D・E。こちらは評語とは別の区分で、記号のまま運用されています)が決まる仕組みです。標準(区分C)の昇給幅は4号俸で、最も高い区分A(8号俸以上)に入れるのは、中間層(本省課長補佐・係長級)でわずか上位5%程度までと定められています(出典:人事院行政リーフレット令和8年度版。号俸数値・割合は平成25年の総務省・人事院資料時点から令和8年度時点まで変化がないことを確認済み)。つまり、どれだけ多くの職員が高い成果を出しても、上位区分に入れる人数はあらかじめ「枠」で決まっているのです。
②55歳を超えると昇給がほぼ止まる
中高年層に直接効いてくるのが、55歳を超えた職員への昇給抑制です。同じ総務省・人事院の資料には、55歳を超える職員の場合、標準(区分C)以下の評価だと昇給号俸数は0号俸(昇給なし)と明記されています。最も高い評価(区分A)を得ても2号俸以上、区分Bでも1号俸に抑えられます。若いうちにどれだけ頑張っても、55歳を境に「昇給の天井」が一段と低くなる仕組みです。
| 昇給区分 | 通常の昇給号俸数 | 55歳を超える職員の場合 |
|---|---|---|
| A(最上位) | 8号俸以上 | 2号俸以上 |
| B | 6号俸 | 1号俸 |
| C(標準)〜E | 4号俸〜0号俸 | 0号俸(昇給なし) |
③2026年4月、「在級期間表」の廃止で評価が唯一の通行証に
これまでは、昇格(級を上げること)には「今の級に最低〇年在籍する」という在級期間のルールがあり、どれだけ優秀でも年数が足りなければ昇格できませんでした。人事院はこの在級期間表を2026年4月1日に廃止すると発表しています(出典:人事院規則9―8(初任給、昇格、昇給等の基準)の一部改正について、公布日:令和8年2月13日、施行日:令和8年4月1日)。年数を重ねれば自動的に級が上がるという「保証」がなくなる一方、評価が低いままだと、これまで以上に昇格できない状態が長く続くリスクが表面化します。
⚠️ 誤解しやすいポイント
人事院勧告では2025年度、月例給を1万5,014円(3.62%)引き上げるなど、官民較差を埋める大幅な処遇改善も同時に示されています(出典:労働政策研究・研修機構「2025年度の人事院勧告」)。本府省採用の総合職(大卒)の初任給も30万円を超える水準まで引き上げられました。「入り口」の待遇は改善が進んでいる一方、①〜③で見た「昇給の枠」自体は変わっていないため、在職年数が長い職員ほど「昇給が見込めない」実感が残りやすい構造になっています。
💡「昇給を待つ」から「自分の市場価値を知る」へ
ここまで見てきたように、「給与が低い・昇給が見込めない」という感覚は、決して気の持ちようの問題ではありません。制度の設計そのものに、昇給の枠・年齢による抑制・評価一本化という頭打ちの構造が組み込まれているのです。これは公務員に限った話ではなく、年功序列型の給与体系を持つ多くの組織に共通する構造でもあります。
私自身、国税専門官として16年以上勤めた中で、「今の仕事を続けても、給与のカーブはだいたい見えてしまう」という感覚を強く持つようになりました。組織の制度を変えることは一個人にはできません。でも、自分の市場価値がどのくらいなのかを外の物差しで測ることは、今日からでもできます。これが、昇給の天井に頭をぶつけ続けるだけの状態から抜け出す最初の一歩です。
📝 今日からできる3つのアクション
「転職する・しない」を決める前に、まずは現在地を知ることから始めましょう。
✅ 今日からできる3つのこと
- 職務経歴書を書いてみる:応募する・しないに関わらず、自分が担ってきた業務・実績を棚卸しすると、思っている以上に「言語化できる強み」が見えてきます
- 転職サイト・エージェントに登録して求人票を眺める:応募は不要です。同じ職種・年齢層の求人にどれくらいの給与レンジが提示されているかを見るだけで、自分の立ち位置が把握できます
- 今の職場の昇給制度を数字で確認する:「なんとなく上がらない」ではなく、自分の号俸・評価区分・昇給幅を実際に確認すると、感覚ではなく事実として今の状況を捉えられます
- 「労働時間に不満」が転職理由2位に|元国税職員が読む残業の実態
🌱 まとめ|昇給の天井は、自分の外に出れば景色が変わる
「給与が低い・昇給が見込めない」が転職理由の1位であり続けているのは、多くの人が同じ壁にぶつかっているからです。公務員の給与制度を例に見てきたように、その壁は個人の努力不足ではなく、制度の設計そのものに組み込まれた構造であることがほとんどです。
だからこそ、まずは「知る」ことから始めてみてください。自分の市場価値を知ることは、転職を決めることとイコールではありません。今の場所にとどまる選択も、動く選択も、正しい現在地を知った上で選べば、どちらも納得のいく決断になります。転職活動は、ノーリスク。まずは踏み出す一歩を。
次回は、doda転職理由ランキング2位「労働時間に不満(残業が多い/休日出勤がある)」について解説予定です。お楽しみに!
✅ この記事のポイント
- 「給与が低い・昇給が見込めない」がdoda転職理由ランキングで5年連続1位(2025年版36.6%)
- 公務員の昇給には「人員分布率による枠」「55歳超の昇給抑制」「2026年4月の在級期間表廃止」という3つの構造的な壁がある
- 制度を変えることはできなくても、自分の市場価値を知ることは今日から始められる
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