公正証書遺言の費用と手続きの流れ【2025年10月改正】

【この記事でわかること】
・公正証書遺言、総額でいくらかかるかの目安
・公正証書遺言を作るまでの5つのステップ
・事前に準備しておきたい必要書類
・2025年10月の手数料改正で費用がどう変わったか
・証人2名の要件と、身近にいない場合の対処法(証人費用の目安つき)

前回の記事では、法務局の自筆証書遺言書保管制度をご紹介しました。費用を抑えられる制度ですが、法務局が確認してくれるのはあくまで形式面だけで、内容の有効性までは審査してもらえません。「やっぱり内容までしっかり公証人にチェックしてもらえる公正証書遺言の方が安心かもしれない」——そう思っても、公証役場は敷居が高く感じられ、費用や手続きがわからず足踏みしてしまう方も多いのではないでしょうか。今回は公正証書遺言の作成費用と手続きの流れを、一次資料に基づいて整理します。
💰 結局、総額でいくらかかる?(ざっくり早見表)
| パターン | 総額の目安 |
|---|---|
| 証人も自分で用意(知人に依頼) | 公証人手数料のみ=数千円〜数万円(財産額により変動。正本・謄本代込み) |
| 証人を行政書士等の専門家に依頼する | 上記+1人5,000〜10,000円程度(2名で1万〜2万円)が目安 |
| 行政書士等の専門家にサポートを依頼 | 公証人手数料+専門家報酬5万〜30万円程度(証人手配込みのケースが多い) |
※財産3,000万円・相続人2名の例では公証人手数料の合計が約6.4万円(正本・謄本代込み)。証人費用は行政書士事務所5件の公開料金表を確認した実勢相場で、事務所や依頼内容(遺言作成サポートとのセット料金か単体かなど)により幅があります。本人確認資料・戸籍謄本などの取得費用(数百円程度)は別途かかります。詳しい内訳は次の見出しから解説します。
公正証書遺言を作るまでの5つのステップ
日本公証人連合会の公式回答によると、公正証書遺言は次の5つのステップで作成されます。士業や銀行を介さず、遺言者本人やその親族が直接公証役場に相談することもできます。
📅 作成までの流れ
相談・依頼
書類提出
案文の確認・修正
作成日時の確定
当日の手続き
当日は、遺言者本人が証人2名の前で遺言の内容を改めて口頭で告げ(口授)、公証人が原本を読み聞かせて内容を確認したうえで、遺言者と証人2名、公証人が電磁的記録に電子サインをして遺言公正証書が完成します。公証人が電子署名をすることで、その後の改ざんも防げる仕組みです。病気や高齢で公証役場に出向けない場合は、公証人が自宅や病院、施設に出張することもできます。
事前に準備しておきたい必要書類
日本公証人連合会が案内する必要書類は以下のとおりです。事案によって追加の資料が必要になる場合もあるため、詳細は最寄りの公証役場に確認しましょう。
| 書類の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 本人確認資料 | 3か月以内の印鑑登録証明書、または運転免許証・マイナンバーカード等の顔写真付き身分証明書 |
| 相続人との続柄がわかる資料 | 戸籍謄本・除籍謄本 |
| 第三者・法人へ遺贈する場合 | 受遺者の住民票/法人の登記事項証明書 |
| 不動産がある場合 | 登記事項証明書+固定資産評価証明書(または課税明細書) |
| 預貯金がある場合 | 預貯金通帳またはそのコピー |
| 証人を自分で用意する場合 | 証人予定者の氏名・住所・生年月日をメモしたもの |

作成費用はいくら?2025年10月の手数料改正
日本公証人連合会の解説によると、公正証書遺言の手数料は「公証人手数料令」という政令で法定されており、相続人・受遺者ごとに受け取る財産の価額(目的の価額)を算出し、それぞれの手数料額を合算して求めます。2025年10月1日の改正後、目的の価額の区分ごとの基本手数料は以下のとおりです。
| 目的の価額 | 基本手数料(2025年10月1日以降) |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超〜100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 49,000円 |
| 1億円超〜3億円以下 | 49,000円+超過額5,000万円までごとに15,000円を加算 |
| 3億円超〜10億円以下 | 109,000円+超過額5,000万円までごとに13,000円を加算 |
| 10億円超 | 291,000円+超過額5,000万円までごとに9,000円を加算 |
財産の総額が1億円以下の場合は、上記手数料の合計にさらに「遺言加算」として一律13,000円が加算されます。たとえば妻に6,000万円、長男に4,000万円を相続させる遺言の場合、妻分49,000円+長男分33,000円+遺言加算13,000円で合計95,000円となります(日本公証人連合会の計算例に基づく試算)。
2025年10月の改正では、区分によって値上げと値下げが混在しています。代表的な変化を見てみましょう。
| 目的の価額の区分 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 50万円以下 | 区分なし(100万円以下として5,000円) | 3,000円(新設) |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 17,000円 | 20,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 43,000円 | 49,000円 |
このほか、正本・謄本の交付手数料(紙1枚300円、電子データ1件2,500円)、証書が3枚を超える場合の枚数加算(1枚300円)も別途かかります。
💡 出張してもらう場合の注意
病気や高齢で公証役場に行けず、公証人に自宅や病院へ出張してもらう場合は、遺言加算を除いた基本手数料が50%増しになります。ただし遺言加算13,000円そのものには50%増しは適用されません。別途、公証人の日当(1日2万円、4時間以内は1万円)と交通費の実費が必要です(日本公証人連合会)。
証人2名の要件
公正証書遺言は、民法969条により証人2名以上の立会いが方式要件として義務づけられています。証人が立ち会うのは、遺言者の真意を確認し、手続きが適式に行われたことを客観的に担保するためです。ただし、誰でも証人になれるわけではありません。日本公証人連合会によると、以下の人は証人になることができません。
⚠️ 証人になれない人(民法969条の欠格事由)
- 未成年者
- 推定相続人(遺言者が亡くなったときに相続人になる予定の人)
- 受遺者(遺言によって財産を譲り受ける人)
- 推定相続人・受遺者の配偶者および直系血族
身近に適当な証人が見当たらない場合は、公証役場や行政書士等の専門家に証人を紹介・手配してもらうことも可能です。公証人や書記、紹介された証人には守秘義務が課されているため、遺言の内容が外部に漏れる心配はありません。ただし証人は無料とは限りません。知人に頼めば無償で引き受けてもらえることが多い一方、行政書士等に依頼する場合は日当・報酬が発生し、複数の行政書士事務所の公開料金表を確認したところ1人あたり5,000〜10,000円程度(2名で1万〜2万円程度)が相場でした。事務所や、遺言作成サポート自体の報酬に証人2名分が含まれるプランかどうかによって扱いが異なるため、依頼前に金額を確認しておきましょう。
✅ この記事のポイント
- 公正証書遺言は「相談・依頼→書類提出→案文確認→日時確定→当日手続き」の5ステップで完成する
- 必要書類は本人確認資料・戸籍謄本・財産資料が基本。証人を自分で用意するなら氏名等のメモも忘れずに
- 作成費用は財産の目的価額に応じた基本手数料+遺言加算13,000円(財産総額1億円以下の場合)が中心
- 2025年10月の改正で50万円以下は新設・値下げ、200万円超の多くの区分は値上げされた
- 証人2名には民法上の欠格事由があり、身近にいなければ公証役場・専門家が紹介してくれる
- 証人は知人に頼めば無料のことが多いが、行政書士等に依頼する場合は1人5,000〜10,000円程度の日当・報酬が別途かかる

まとめ
前回ご紹介した自筆証書遺言書保管制度は費用を抑えられる一方、内容までは審査されないという限界がありました。今回の公正証書遺言は、公証人が内容の法的妥当性まで確認してくれるうえ、家庭裁判所の検認も不要で、原本は公証役場で厳重に保管されるため紛失・改ざんの心配もありません。費用は財産額に応じて数千円から数万円が中心で、相談自体は無料です。まずは最寄りの公証役場への相談から、気軽に一歩を踏み出してみてください。自分で学ばないと、だれも教えてくれないからこのブログをきっかけに学ぼうと思っていただけると嬉しいです。
次回は「遺言執行者の役割と報酬」について解説予定です。お楽しみに!


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