いらない土地を国に返せる「相続土地国庫帰属制度」2026年最新版|負担金は評価額の7%に軽減
📋 この記事でわかること
- ・相続した土地を国に返せる「相続土地国庫帰属制度」の基本
- ・申請できる条件・費用の目安
- ・2026年6月に財務省が打ち出した「売却価格を最大93%引き下げ」という大きな変化
- ・元・国税局係長(税務署・国税局に通算16年超勤務)の視点から見た注意点

「相続した土地、どうすればいい?」と思ったことはありますか
親が亡くなって土地を相続したものの、「売れない」「使わない」「税金・管理費だけかかる」——そんな状況に困っている方は少なくありません。
特に地方の農地や山林は、買い手がつかないどころか、固定資産税を払い続けながら草刈りや境界管理まで求められます。
そこで2023年4月に始まったのが「相続土地国庫帰属制度」。一定の条件を満たせば、相続した不要な土地を国に引き取ってもらえる制度です。
さらに2026年6月、財務省がこの制度に関連する大きな方針を発表しました。「国が引き取った土地の売却価格を評価額の最大93%引き下げる」というものです(読売新聞「買い手のつきにくい『国の相続土地』、評価額を引き下げ売却促進…最大で93%オフ」2026年6月17日。日本経済新聞は見出しで「最大9割下げへ」と表現)。
今回は、制度の基本から2026年の最新動向まで、元・国税局係長の目線でわかりやすく解説します。
相続土地国庫帰属制度の基本:どんな制度?
相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈によって取得した不要な土地を、国に所有権を移す(帰属させる)ことができる制度です。2023年4月27日に施行されました。
所管は法務省で、申請窓口は法務局(各都道府県)です。
申請できる人
申請できるのは、相続または遺贈によって土地を取得した人です。売買などで取得した場合は申請できません。共有地の場合は、共有者全員で申請する必要があります。
申請できない土地(NG条件)
以下に当てはまる土地は、申請を受け付けてもらえません。
| NGとなる土地 | 具体例 |
|---|---|
| 建物がある土地 | 家・倉庫・車庫などが残っている |
| 担保権・使用収益権が設定されている土地 | 抵当権・賃借権などが残っている |
| 境界が不明確な土地 | 隣地との境界を巡るトラブルがある |
| 管理コストが著しく高い土地 | 急傾斜地・崖・土壌汚染がある土地など |

費用はいくら?審査手数料と負担金の目安
申請にかかる費用は、大きく「審査手数料」と「負担金」の2種類です。
| 費用の種類 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 審査手数料 | 14,000円/筆 | 申請時に納付(返還なし) |
| 負担金(宅地・農地など) | 原則20万円 | 承認後に納付。市街化区域内の宅地は面積に応じて算定 |
| 負担金(森林) | 面積に応じて算定 | 10年分の管理費相当額を面積区分ごとに算定(例:1,000㎡で約26万円) |
負担金シミュレーション(法務省の計算方式に基づく)
法務省が定める負担金の計算方式で試算できます(面積・土地種目ごとに異なります)。
| 土地の種目 | 負担金の計算方式 | 目安 |
|---|---|---|
| 宅地(原則) | 一律 | 20万円(面積を問わず) |
| 宅地(市街化区域・用途地域内) | 面積区分ごとに算定(㎡単価+加算額) | 100㎡の場合:約55万円 |
| 田・畑(原則) | 一律 | 20万円(面積を問わず) |
| 田・畑(市街化区域・用途地域内・農用地区域等) | 面積区分ごとに算定(㎡単価+加算額) | 1,000㎡の場合:約113万円 |
| 森林 | 面積区分ごとに算定(㎡単価+加算額) | 1,000㎡(10a)の場合:約26万円 |
| その他(原野など) | 一律 | 20万円(面積を問わず) |
出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」に基づく。宅地・田畑は原則20万円で、市街化区域・用途地域内等の宅地・農地および森林のみ、面積区分ごとの算定式(㎡単価+加算額)で計算します。正確な額は法務省の負担金自動計算シートでご確認ください。
審査手数料は審査の結果が不承認でも返ってきません。また、専門家(司法書士など)に依頼する場合は別途報酬(10万〜50万円程度)がかかることも念頭に置いておきましょう。
【2026年6月最新】財務省が売却価格を「最大93%引き下げ」へ
2026年6月、財務省が国庫に帰属した土地の売却価格を大幅に引き下げる方針を示しました。評価額をまず約30%下げ、その後も需要が乏しければ3か月ごとに10%ずつ減額し、最終的に評価額の7%(最大93%オフ)まで引き下げるという内容です(読売新聞・共同通信、2026年6月17日報道。日本経済新聞は見出しで「最大9割」と表現)。
なぜこんな話が出てきたのでしょうか。背景を整理します。
制度利用は急増しているのに、売れない問題が浮上
制度が始まった2023年4月から2026年2月末時点で、申請累計5,140件・帰属累計2,542件と利用が増えています。帰属率は約49%です。
ところが国が引き取った土地の多くが「売れない」状態です。評価額をそのまま売値にすると買い手がつかないケースが続出。国が管理費を負担し続けることになり、財政的な問題に発展しています。
出典:財務省理財局「相続土地国庫帰属制度等に係る現状と課題」(令和7年6月17日)
売却促進策:評価額を最大93%下げる(下限は評価額の7%)
そこで財務省が打ち出したのが、国庫帰属地の売却価格の大幅引き下げです。評価額をまず約30%下げ、需要が乏しい場合は3か月ごとに10%ずつ下げて、最終的に評価額の7%(最大93%オフ)まで引き下げます。安く買えるようにして購入者を呼び込み、管理コストを圧縮する狙いがあります。
この動きは相続土地国庫帰属制度そのものを「使いやすくする」方向ではなく、国が引き取った後の出口(売却)を整備するという方向の話です。申請条件・費用が変わるわけではない点に注意が必要です。

元・国税局係長から見た、この制度の活用ポイント
国税局・税務署に16年以上勤務した私の目線で、いくつか気になる点をお伝えします。
まず「使えない土地が多い」という現実。申請件数5,140件に対して帰属は2,542件(約49%)。つまり半数近くは審査で弾かれているか、申請途中で断念しているわけです。申請前に「この土地は本当に条件を満たすか」を専門家と確認することを強くおすすめします。
次に「相続登記との連携」。2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続土地国庫帰属制度を使うには、まず相続登記を済ませることが前提です。登記が未了のまま放置すると別途ペナルティ(10万円以下の過料)が生じる可能性があります。
最後に「固定資産税・管理コストの試算」。国に渡るまでの間、土地の固定資産税や管理費用は所有者が負担します。審査に時間がかかる(平均6〜12ヶ月程度)ことも含め、コストの全体像を把握してから動くのが賢明です。
税務署で勤務していた頃、窓口や調査先で「山を相続したけど、どうしたらいいか…」と頭を抱えていらっしゃる方に何度もお会いしました。使う予定もない山林や田舎の土地を、毎年固定資産税を払いながら持ち続けている方が本当に多かったです。
そしてもう一つ大切な視点があります。次に財産を引き継ぐ人のことも考えて、今の所有者の方が事前に対策を行っておくことです。不要な不動産を整理しておく・家族に財産の内容を伝えておく・この制度の活用を検討しておく。こうした備えが、将来の相続人の負担を大きく減らします。「自分が元気なうちは後回しでいい」と思いがちですが、次の相続が発生してからでは手続きはさらに複雑になります。
まとめ:制度を知って、早めに動こう
✅ この記事のポイント
- 相続土地国庫帰属制度は2023年4月施行。相続・遺贈で取得した土地を国に返せる
- 申請条件あり:建物なし・境界明確・担保権なし等。半数近くが審査で弾かれている
- 費用:審査手数料14,000円+負担金(原則20万円)。専門家報酬は別途
- 2026年6月、財務省が国庫帰属地の売却価格を最大93%引き下げる方針を発表(下限は評価額の7%・申請条件は変わらない)
- 相続登記の義務化(2024年4月〜)とセットで早めに確認しておくことが重要
「相続した土地をどうにかしたい」と思ったら、まずは法務局の窓口や司法書士への相談から始めてみましょう。この制度が使えるかどうかの判断は、土地の状態によって大きく変わります。
次回は「相続登記の義務化」について解説予定です。2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります。「知らなかった」では済まされないルール変更を、元・国税局係長がわかりやすく解説します。お楽しみに!


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