第3号被保険者とは?縮小の議論と現在地を整理

【この記事でわかること】
・第3号被保険者制度の仕組みと、対象になる条件
・2025年の年金制度改正法で、この制度がどう扱われたか
・いま報じられている「縮小」の議論と、確認できる範囲・できない範囲

「専業主婦(夫)は年金の保険料を払わなくていいって聞くけれど、それって今後も続くの?」——ニュースで「年金3号の縮小」という言葉を目にして、そんな不安や疑問を感じた方は多いのではないでしょうか。
この記事では、元国税職員・FP1級の立場から、第3号被保険者制度の仕組み・2025年改正法での扱い・現在報じられている見直しの動きを、官公庁の資料と新聞報道を分けて整理します。結論を先に言うと、いまのところ制度そのものは変わっておらず、見直しは「検討が始まった段階」です。
第3号被保険者とは?対象になる3つの条件
第3号被保険者とは、会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養されている配偶者のうち、一定の条件を満たす人のことです。自分で国民年金の保険料を納めなくても、将来は老齢基礎年金を受け取れる仕組みで、1986年(昭和61年)に始まりました。
対象となる条件は、厚生労働省の年金部会資料(国民年金法第7条)で次のように整理されています(厚生労働省 社会保障審議会年金部会 第7回資料)。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 年齢・配偶者 | 20歳以上60歳未満で、厚生年金保険の被保険者(第2号被保険者)の配偶者であること |
| 住所 | 日本国内に住所を有すること(国内居住要件) |
| 生計維持 | 第2号被保険者の収入で生計を維持していること(認定にあたっては年間収入が130万円未満であることが必要) |
ここでいう「130万円」は、健康保険の被扶養者認定の基準にあわせたものです。判定方法の変更については、別記事の130万円の壁の記事で整理しています。

加入者は半減した|数字で見る第3号被保険者
厚生労働省の資料(社会保障審議会年金部会 参考資料)によると、第3号被保険者の数は1995年度の1,220.1万人をピークに減少傾向にあります。
| 時点 | 総数 | うち女性 |
|---|---|---|
| 1986年度(制度開始時) | 1,092.9万人 | 1,089.8万人 |
| 1995年度(ピーク時) | 1,220.1万人 | 1,216.0万人 |
| 2024年7月末(厚労省資料の時点) | 669.6万人 | 656.5万人 |
出典:厚生労働省 社会保障審議会年金部会 参考資料(昭和61年度・平成7年度は厚生年金保険・国民年金事業年報、令和6年度は事業月報(速報)の7月末時点)
なお、読売新聞の社説(2026年9月27日)は、2025年度末時点の加入者を604万人と報じています(読売新聞『「年金3号」縮小 幅広く理解を得られるように』)。厚生労働省の資料とは時点が違うため単純には比べられませんが、ピーク時から半減しているという大きな流れは同じです。
数が減った背景には、女性の就業が進み、パートなどで働きながら勤務先の厚生年金に加入する人が増えたことがあります。一方で、同じ資料では、35歳以上の女性の約3割が今も第3号被保険者だと示されています。
2025年の年金改正法では「見直し」は行われなかった
2025年の年金制度改正法(令和7年法律第74号)は、同年5月16日に国会へ提出され、6月13日に成立、6月20日に公布されました(参議院 年金制度改正法案をめぐる国会論議、厚生労働省 年金制度改正法が成立しました)。パート・アルバイトの社会保険加入対象を広げる「被用者保険の適用拡大」などが柱です。
ただし、第3号被保険者制度そのものを変える規定は入りませんでした。代わりに、附則の検討規定として次の文言が置かれています。
📄 附則の検討規定(参議院資料による整理)
政府は、国民年金第3号被保険者の在り方について国民的な議論が必要であるという認識の下、その議論に資するような第3号被保険者の実情に関する調査研究を行い、その在り方について検討を行うものとしている。
出典:参議院「年金制度改正法案をめぐる国会論議 -被用者保険の適用拡大」
その前提には、社会保障審議会年金部会が2024年12月25日にまとめた「議論の整理」があります。そこでは、当面の方向性として「引き続き適用拡大を進めることにより、第3号被保険者制度の縮小を進めていくことが基本的な方向性」とされました。一方で、その先の見直しについては「意見がまとまらなかった」とも書かれています(同・参考資料)。
いま報じられている動き|2030年改正をめざす方針と調査
ここからは官公庁の資料ではなく、新聞報道に基づく内容です。読売新聞の社説(2026年9月27日)によると、次のような動きが報じられています(読売新聞)。
📅 見直しの流れ(報道・資料ベース)
年金部会が縮小の方向性を整理
改正法が成立
3号は検討規定のみ
自民・維新が縮小で合意
(読売の報道)
実現をめざす方針
(読売の報道)
- 厚生労働省が、対象者を縮小する検討を始め、2030年の年金制度改正での実現をめざす方針だと報じられています
- 厚生労働省は、第3号被保険者ら2万人を対象に調査を行い、就業状況や加入理由などを尋ねるとされています
- 自民党と日本維新の会が、制度の縮小で7月に合意したと報じられています。維新は「廃止」を主張している、とも書かれています
社説では、見直し案として「一定年収で線引きする案」「保険料の負担を求める案」「年金支給額を減額する案」が浮上していると紹介されています。ただし、これらはあくまで報じられている案で、どれかに決まったわけではありません。官公庁の一次資料では、この2026年9月時点の内容は確認できていないため、正式な発表を待つ必要があります(未確認)。

見直しで議論になる論点|年金部会が挙げた6つ
年金部会の「議論の整理」(2024年12月)には、今後の議論で考えるべき論点が挙げられています(同・参考資料)。制度を変えるなら何が問題になるのか、という「宿題リスト」のようなものです。
| 論点 | 問われていること |
|---|---|
| 所得保障の機能 | 制度を見直すとき、配偶者の所得保障の機能をどう損なわないようにするか |
| 給付と負担 | 年金給付と保険料負担をどのように設定するか |
| 特定の者への配慮 | 病気・育児・介護などで働けない人に、どんな措置が考えられるか |
| 第1号被保険者とのバランス | 配慮措置を設けたとき、同じ配慮を求める第1号被保険者とどう釣り合いをとるか |
| 年金財政の構造 | 保険料を徴収するなら、国民年金勘定と厚生年金勘定のどちらで扱うか |
| 付随する制度への影響 | 「夫婦で共同負担」という基本的認識を改める必要があり、3号分割制度の在り方も検討が必要 |
同じ「議論の整理」には、意見の対立もそのまま書かれています。「将来的には廃止すべき」という意見がある一方で、「第3号被保険者制度はセーフティネットに過ぎず、生涯収入において得をする制度設計にはなっていない」という意見も併記されています。
元国税職員として感じるのは、「得か損か」だけで語ると議論が荒れやすいということです。3人の子を育てる身としても、育児や介護のために働き方を選べない時期があるのは他人事ではありません。制度を変えるなら、そうした人への配慮がセットで語られるかどうかが大きなポイントだと考えています(これは私見です)。
すでに決まっていること|適用拡大のスケジュール
3号の縮小につながる「適用拡大」は、2025年改正法ですでに決まっている内容です。厚生労働省の資料では、企業規模要件が次のように段階的に撤廃されます(同・参考資料)。
| 時期 | 適用対象になる企業規模 |
|---|---|
| 2027年(令和9年)10月 | 従業員35人超の企業等まで拡大 |
| 2029年(令和11年)10月 | 従業員20人超の企業等まで拡大 |
| 2032年(令和14年)10月 | 従業員10人超の企業等まで拡大 |
| 2035年(令和17年)10月 | 従業員10人以下の企業等まで拡大(企業規模要件の撤廃) |
出典:厚生労働省 社会保障審議会年金部会 参考資料。このほか、賃金要件(月額8.8万円以上)は、令和8(2026)年10月1日に撤廃されます(法律では「公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされていた施行期日が、令和8年10月1日と定められました。日本年金機構の案内)。
パートで働く配偶者が勤務先の厚生年金に加入すれば、その人は第3号ではなく第2号被保険者になります。つまり適用拡大が進むほど、第3号被保険者の対象者は自然に少なくなるというのが、年金部会の基本的な考え方です。なお、あなたご自身の場合に何が当てはまるかは、勤務先や年金事務所、社会保険労務士などの専門家に確認してください。
✅ この記事のポイント
- 第3号被保険者は、20歳以上60歳未満で第2号被保険者の配偶者、生計維持(年間収入130万円未満)などの条件を満たす人
- 加入者は1995年度の1,220.1万人から、2024年7月末は669.6万人へと減少(厚生労働省資料)
- 2025年改正法(令和7年法律第74号)では制度の見直しは行われず、附則で「実情の調査研究と検討」が定められた
- 2030年改正での縮小をめざす方針は報道ベース。案は複数あり、決まったものはない
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まとめ
第3号被保険者制度は、いまのところ変わっていません。2025年の改正法は制度そのものに手を付けず、「実情を調べて検討する」という宿題を政府に課しました。そこへ2026年に入り、縮小をめざす動きが報じられている、というのが現在地です。
大切なのは、「決まったこと(適用拡大のスケジュール)」と「検討中のこと(3号そのものの見直し)」を分けて見ることです。新しい情報が出たら、このブログでも一次資料を確認しながらお伝えします。自分で学ばないと、だれも教えてくれないからこそ、このブログをきっかけに学んでいただけると嬉しいです。
次回は「遺言執行者の役割と報酬|選び方と決まり方を解説」について解説しています。


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