「106万円の壁」撤廃はいつから?2026年10月改正を元国税職員が解説
【この記事でわかること】
・「106万円の壁」が撤廃される時期と、何が変わるのか
・撤廃後に新しく意識すべき「週20時間の壁」の仕組み
・130万円の壁は残ること、2026年4月からの扶養認定方法の変更
・手取りが減っても加入した方がいいのか、判断のポイント
「扶養を外れないように、今月はあと〇時間しか働けない」——パートやアルバイトで働く方なら、一度はこうしたシフト調整の相談を受けたり、自分自身で頭を悩ませたりした経験があるのではないでしょうか。💡
私は元・国税専門官として、税務署や国税局で数多くの方の収入・扶養の相談に接してきました。「106万円を超えたら損」という言葉だけが独り歩きして、実際の仕組みを正確に理解しないまま働く時間を抑えてしまっている方を、これまで何人も見てきました。
その「106万円の壁」が、2026年(令和8年)10月に撤廃されます。ただし「壁がなくなる=もう何も気にしなくていい」わけではありません。今日は、元税務職員かつ3児の父として、この改正で何がどう変わるのかを、実務目線で整理してお伝えします。📝
「106万円の壁」とは?何が撤廃されるのか
「106万円の壁」とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者が、勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する基準の一つである月額賃金8.8万円以上(年収換算で約106万円)という賃金要件のことです。現在、短時間労働者が社会保険に加入するには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 現行(2026年9月まで) | 2026年10月以降 |
|---|---|---|
| 週の所定労働時間 | 20時間以上 | 20時間以上(変更なし) |
| 月額賃金(年収) | 8.8万円以上(年収約106万円) | 撤廃 |
| 雇用期間の見込み | 2か月超 | 2か月超(変更なし) |
| 学生でないこと | 対象外(例外あり) | 対象外(変更なし) |
| 企業規模 | 従業員51人以上 | 従業員51人以上(段階的に縮小) |
出典:厚生労働省「短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント」(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001633788.pdf)
撤廃の背景にあるのは、最低賃金の上昇です。2025年度の地域別最低賃金は全都道府県で時給1,016円を超え、週20時間働くだけで自動的に月額8.8万円(年収約106万円)を超える状態になりました。つまり「賃金要件」がすでに形骸化していたため、2025年6月成立の年金制度改正法により、この要件そのものが撤廃されることになったのです。
新しい基準は「週20時間の壁」。130万円の壁は残る
106万円の壁が撤廃されても、週の所定労働時間が20時間以上という要件はそのまま残ります。最低賃金の水準を踏まえれば、週20時間働けば賃金額にかかわらず自動的に社会保険加入の対象になるため、実質的には「週20時間」が新しい判断基準になります。
ここで見落としがちなのが、「130万円の壁」は撤廃されず引き続き存在するという点です。106万円の壁と130万円の壁は、そもそも性質がまったく異なる別の制度です。
| 項目 | 106万円の壁 | 130万円の壁 |
|---|---|---|
| 性質 | 勤務先の社会保険に加入させる基準 | 配偶者等の扶養に留まれる年収上限 |
| 2026年10月以降 | 賃金要件は撤廃 | 変更なし(残る) |
| 超えた場合 | 要件を満たせば加入義務が発生 | 扶養から外れる(国保・国民年金の可能性も) |
出典:厚生労働省「『年収の壁』への対応」(https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/)
さらに2026年4月からは、130万円の扶養判定の方法も変わっています。従来は「実際の収入」を過去・現在・将来の見込みから総合的に判断していましたが、給与収入のみの場合に限り、労働条件通知書に記載された時給・所定労働時間・勤務日数などから算出する「年間収入見込み」で判定する特例が追加されました。契約に明記のない時間外労働(残業代)は、この年間収入見込みに含めません。そのため、繁忙期の残業で実際の収入が一時的に130万円を超えても、契約上の年収が基準内であれば、直ちに扶養から外れることはありません。
企業規模要件は10年かけて段階的に撤廃される
社会保険の加入対象になるかどうかは、勤務先の企業規模(従業員数)にも左右されます。この「企業規模要件」も、2027年10月から2035年10月にかけて段階的に縮小・撤廃されるスケジュールが決まっています。
| 実施時期 | 企業規模要件 |
|---|---|
| 2026年10月まで | 従業員51人以上 |
| 2027年10月〜 | 従業員36人以上 |
| 2029年10月〜 | 従業員21人以上 |
| 2032年10月〜 | 従業員11人以上 |
| 2035年10月〜 | 企業規模要件を全面撤廃 |
出典:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html)
つまり「賃金要件(106万円)」は2026年10月に一斉撤廃、「企業規模要件」は2027年10月から10年がかりで段階的に撤廃という、2つの異なるスケジュールが同時に進みます。この2つを混同した解説も見られるため、勤務先の規模によって自分がいつから対象になるのかを、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトで確認することをおすすめします。
手取り減少と将来のメリット、どう考えればいい?
社会保険に加入すると、給与から健康保険料・厚生年金保険料が控除されるため、手取り額は減少します。一方で、加入することで得られるメリットも小さくありません。
- 将来の年金額が増える:国民年金(基礎年金)に加えて厚生年金が上乗せされます
- 傷病手当金:病気やけがで働けない期間の収入保障を受けられます
- 出産手当金:産前産後休業中の収入保障を受けられます
また、新たに社会保険加入対象となる短時間労働者を支援するため、事業主が追加負担した保険料の全額を国が3年間支援する「保険料調整制度」(対象:従業員数50人以下の企業等で働き、標準報酬月額12.6万円以下の方)も用意されています。手取りが急に大きく減らないよう、事業主・従業員双方への負担軽減措置が段階的に設けられている点も知っておくとよいでしょう。
大切なのは「壁を超えたら一律に損」という単純な話ではないということです。ご自身やご家族の働き方・将来設計に照らして、どちらが合っているかを考える材料にしていただければと思います。
✅ この記事のポイント
- 「106万円の壁(賃金要件)」は2026年10月に撤廃。新基準は「週20時間」
- 「130万円の壁(扶養の壁)」は撤廃されず残る。別の制度として要注意
- 2026年4月から、扶養判定は「労働条件通知書の年間収入見込み」ベースに変更
- 企業規模要件は2027年10月から2035年10月にかけて段階的に撤廃
- 手取り減少と将来の年金・保障のメリットは、両面を見て判断する
まとめ:壁がなくなっても「知らないと損」は変わらない
「106万円の壁」の撤廃は、パート・アルバイトで働く方の働き方の選択肢を広げる改正です。ただし、130万円の壁や扶養判定方法の変更など、あわせて押さえておくべきポイントも少なくありません。制度は変わっても「自分で学ばないと、だれも教えてくれない」のは同じです。このブログをきっかけに、ぜひご自身の働き方を見直すきっかけにしていただけると嬉しいです。😊
次回は、130万円の壁について解説予定です。お楽しみに!


最後まで読んでくれてありがとう
資料集めやサーバー代など、ブログ作成には費用がかかっています。応援していただいた分は、次の記事づくりに大切に使わせていただきます。またブログに遊びに来てくださいね。
応援する【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の個人・法人に対する税務・法律・社会保険上のアドバイスではありません。記載内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本記事を参考にした判断・行動による損害について当サイトは責任を負いかねます。個別の判断・手続きについては、税理士・社会保険労務士・弁護士・ファイナンシャルプランナーなど各分野の専門家にご相談ください。記載内容は2026年7月時点の情報に基づいており、法改正・制度改正等により変更となる場合があります。

