給料は環境で決まる|元国税職員が転職と副業で得た気づき
【この記事でわかること】
・「給料が上がったのは能力のおかげ」だと思っていた私が、転職後に気づいた本当の理由
・組織を変えられなくても、自分の景色を変える方法
・公務員に厳しかった「自営兼業」のルールが、2026年4月にどう変わったか
・サラリーマン×個人事業の「二刀流」が持つ、リスク分散という強み
「公務員から転職して、給料が上がったんですね。よっぽど優秀だったんですね」——そう言われることが何度かありました。正直に言うと、最初は自分でもそう思っていました。でも今は、はっきり違うと言えます。私の能力が急に伸びたわけではありません。働く環境(場所・職場)が変わっただけです。
今回は、公務員から民間企業へ転職して感じたことの体験談シリーズ第2弾として、「給料は環境で決まる」という気づきと、その延長線上にある「副業」というもう一つの選択肢についてお話しします。(第1弾の残業の実態についてはこちらの記事をご覧ください)
資格の勉強を始めたら、周りが気にならなくなった
公務員時代、資格の勉強をしている職員は周りにほとんどいませんでした。私自身は宅建士やFP1級など、いくつかの資格をコツコツ取得していましたが、周囲には言わずに黙って勉強していました。理由は単純で、公務員の世界では資格取得そのものが「辞めるかもしれない」というシグナルとして周りに受け取られかねない空気があったからです。
公務員には、家庭の事情や仕事上の希望を書く「身上申告書」という様式が毎年あり、そこには取得資格を書く欄もありました。ここにあえて資格を書くという行為には、もう一つの意味があると感じています。国税の実務経験を理由に税理士試験の一部科目が免除される、といった業務に直結する資格であれば違和感はありません。
しかし、業務とは関係のない資格をわざわざ書くのは、多くの場合「辞めるかもしれない」という意思表示に近いというのが私自身の実感であり、連絡を取り合っていた同期や退職者からも同じような話を何度か聞きました。もっとも、それを人事側がシグナルとして受け止めているかというと、私の経験では単に「勉強熱心だな」で終わっていることがほとんどでした。
今、現職で人事を担当されている方がいたら、身上申告書の資格欄は一度気にしてみてもいいかもしれません。そしてもし今転職を考えていて、この申告書にあえて資格を書いている方がいるなら、おそらく私と同じ気持ちを抱えているのではないかと思います。
不思議なもので、勉強を続けて自分の中に積み上がっていくものがあると、それだけで気持ちが変わっていきました。周りを気にせず定時に帰れるようになったのは、規則が変わったからでも、職場の空気が変わったからでもなく、自分の中に「心の強さ」がついたからでした。
「周りを気にしていたら仕事はできないし、楽しくもない。自分は自分でいい」——そう思えるようになった頃には、職場への違和感が確かな輪郭を持ち始めていました。
⚠️ 「組織を変える」より「自分の職場を変える」
組織のルールや空気は、一個人の力ではなかなか変えられません。それでも、自分がその中で働き続けるかどうかは、自分で決められます。「組織を変えるのが無理なら、その職場を変えればいい」——つまり転職すればいい、と思えるようになったら、視界が一段階上がった感覚がありました。
給料は、能力よりも「どこで働くか」で決まっていた
転職してから一番大きかった気づきは、これに尽きます。給料が上がったのは、自分の能力が急に伸びたからではなく、働く場所が変わっただけだった。公務員時代と同じ自分のまま、環境だけが変わって評価も待遇も変わったのだとすれば、「どこで働いているか」は、自分が思っていた以上に重要だったということになります。
実際、今の転職先の周りを見渡すと、年収900万〜1,000万円を超えている人がごろごろいます。税務署の感覚で言うと、年収900万円台はだいたい課長職クラス、1,000万円を超えるとなると署長クラスの水準です。鬼のように超過勤務でもしていない限り、普通はそのクラスの年収には届きません。
これは現職の方からすればピンとくるかもしれませんが、そのクラスの年収の人が同世代の周りにゴロゴロいるというのは、私自身、今でもどこか不思議な感覚があります。少なくとも、前職で私と同世代の元同僚に、その年齢でその年収をもらっている人はいないはずです。同世代の元・公務員の同期と比べると、おそらく200万〜300万円は違うのではないかと思います。
皮肉なのは、仕事の中身や必要な知識・ノウハウの量だけで言えば、前職の公務員時代の同僚たちのほうが幅広くこなしていた実感があることです(誤解のないように言っておくと、これは私自身の年収の話ではありませんし、自慢したいわけでもありません)。
それでも給料に大きな差が出るのだとすれば、それこそが「能力ではなく、どこで働いているかで給料が決まる」ということの、一番わかりやすい実例だと思っています。
この視点は、転職理由として「成果を評価されない」を挙げる人にも通じる話だと感じています。個人の評価制度そのものを、社員一人の力で変えるのは簡単ではありません。詳しい公務員の人事評価の仕組みについては別記事でまとめていますが、ここで伝えたいのは「制度を変える」ことより先に、「環境を選び直す」という手段があるということです。
公務員に厳しかった「自営兼業」、2026年4月に変わったこと
環境を自分で選べるという発想は、転職だけでなく「副業」にもつながります。ここで、公務員時代の実体験を一つお話しします。公務員は、会社員のように副業を自由に選べる立場ではありません。国家公務員法第103条にもとづく「自営兼業」の制度では、承認を受けなければ自分で事業を営むこと自体ができない仕組みになっていました。
実際に承認され得る事業は、私が在職していた頃は不動産賃貸・太陽光電気の販売、そして家業を継いだ場合の農業などに限られており、「趣味や特技を活かして小さく事業をやってみる」といったことは、制度上そもそも想定されていませんでした。税金を扱う立場として、公正性や国民からの信頼を守るための制限であることは理解していますが、民間で当たり前になりつつある「副業」の感覚とは、かなりの距離があったのが実情です。
ところが人事院の発表によると、2026年4月1日から、この自営兼業のルールが見直されています。新たに「職員の有する知識・技能をいかした事業」と「社会貢献に資する事業」が、承認基準を満たせば認められるようになりました。
| 承認され得る自営兼業 | 2026年3月まで | 2026年4月から |
|---|---|---|
| 不動産賃貸・太陽光電気の販売 | 承認基準を満たせば可 | 承認が必要な規模の基準を一部緩和 |
| 農業等 | 家業を継承した場合のみ | 変更なし |
| 知識・技能をいかした事業(例:ハンドメイド品の販売、スポーツ・芸術の教室) | 対象外 | 新たに承認可能に |
| 社会貢献に資する事業(例:地域振興イベントの主催、高齢者の買物代行) | 対象外 | 新たに承認可能に |
出典:人事院「自営兼業制度の見直しについて(概要)」(令和7年12月)
ただし、ここで見直されたのはあくまで「自ら事業を営む」自営兼業の話です。民間企業で広がっている、会社に雇われる形の副業とはまだ別物で、公務員にとって自由な副業への道のりはこれからも長いというのが率直な感想です。それでも、在職中は想定すらされていなかった「趣味や特技を活かした小さな事業」が制度上の選択肢に入ったのは、時代が動いた証拠だと感じます。
実を言うと、いま読んでくださっているこのブログそのものが、私にとっての「副業」です。個人事業主として運営しています。前職で培った知識や経験、コツコツ取ってきた資格、それに子育てという私生活での経験——このすべてを何か一つの形にして残したいと思ったときに、たどり着いたのがブログでした。
経験がすべてなので、経験していないことは書けません。だからこそ、自分が実際に経験してきた「税務」「転職」「子育て」の3分野に絞り、そこで得たノウハウをわかりやすく伝えることを軸にしています。ブログというと「今さらありきたりな分野では」と思われる方もいるかもしれませんが、それでもあえてこの分野に飛び込みました。ブログは株式と同じで、育つまでには時間がかかりますが、間違いなく一つの資産——知的財産になるものだと考えているからです。
もう一つ、個人的な理由もあります。国税職員という仕事は、情報漏洩のリスクからインターネット環境そのものと切り離された環境で働くのが基本で、正直なところIT関連の知見が育ちにくい職場でした(もちろんDX化を進める動きは出てきていて、専門の試験区分でDX人材を採用する取り組みも始まっていますが、現場が追いつくのはこれからだと感じます)。
私自身もそのぶんITには弱いタイプだったので、ブログ運営を通じてSEOやサーバー・システムまわりの仕組み、AIの活用法まで一通り学べることは大きな魅力でした。資格の勉強のように机上で学ぶだけでなく、実際に自分で一から手を動かしてみると、学びの深さがまるで違います。だからこそ私はこれを「副業」だと胸を張って言えますし、副業をやることで、サラリーマンだけでは持てなかった視点を得られたことが、一番の収穫だと感じています。
おそらくこの副業も、国税職員のままだったら思いつきもしなかったでしょうし、間違いなくやっていなかったと思います。民間企業に転職して副業の制限そのものがなくなったからこそ、あえて挑戦してみようという気持ちになれました。
たまたま転職先が副業を認めてくれていたのも幸運でしたが、民間企業だからといって誰もが自由に副業できるわけではなく、いまだに副業禁止の会社もあります。そこは環境次第という意味で、簡単な話ではないと感じています。それでも、これまで仕事の中で積み上げてきたノウハウや知識を一度棚卸しして、何か形として残せるというのは、とてもいいことだと思っています。
このブログは子どもたちも協力してくれていて、子どもの成長とともにブログも育っていくところがあります。それも今、私自身がとても楽しみにしていて、好きになっている部分です。
公務員は副業がほぼ認められていない一方で、民間企業には副業を認める会社という選択肢そのものがあります。この「選択肢があるかどうか」自体に、大きな価値があると今は感じています。サラリーマンとして安定した収入を得ながら、個人事業という形で別の収入源を持つ「二刀流」は、収入をひとつの会社に依存させないためのリスク分散であり、お金持ちが会社を一つに絞らない理由にも通じる発想だと思っています。
✅ この記事のポイント
- 給料が上がったのは能力のおかげではなく、環境を選び直したから
- 組織そのものは変えられなくても、自分がいる環境は選び直せる
- 公務員の自営兼業は、2026年4月から「知識・技能を活かした事業」「社会貢献に資する事業」も新たに承認対象に(人事院・国家公務員法第103条)
- サラリーマン×個人事業の二刀流は、収入源を分散させるリスクヘッジになる
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まとめ
給料も評価も、能力だけで決まっているわけではありません。自分がどんな環境に身を置くかで、大きく変わります。組織そのものを変えるのは難しくても、自分がいる環境は選び直せます。そしてその選択肢は、転職だけでなく「副業」という形でも広がりつつあります。公務員に厳しかった自営兼業のルールですら、2026年4月には少しずつ動き出しました。転職活動は、ノーリスク。まずは踏み出す一歩を。
公務員時代、資格勉強をする職員はほとんどいませんでした。そんな中で、なぜ黙って資格を取り続けたのか。次回は「資格編」について解説予定です。お楽しみに!


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