「労働時間に不満」が転職理由2位に|元国税職員が読む残業の実態
【この記事でわかること】
・doda「転職理由ランキング2025年版」で「労働時間に不満」が総合2位に浮上した事実
・公務員の残業時間の実態と、労働基準法の「36協定」が適用されない仕組み
・元国税専門官が見てきた繁忙期の働き方と、今日からできる残業実態の調べ方
「今日も終電か……」。パソコンを閉じる頃には、駅までの道もすっかり暗くなっている。頑張っているのに、生活は良くならない。そんな夜が続くと、ふと「この働き方、いつまで続けるんだろう」と思ってしまいますよね。
これまで転職理由といえば「給料が安いから」というイメージが強かったかもしれません。ですが、最新の調査データは少し違う実像を映し出しています。2025年、多くの人が転職を考えるきっかけになったのは「労働時間」そのものだったのです。
私は国税専門官として16年以上、税務署・国税局に勤めました。確定申告期の繁忙、税務調査の追い込み期——「公務員は定時で帰れる」というイメージとはかけ離れた時期も経験しています。今回は、最新のデータと公的機関の一次資料をもとに、「労働時間への不満」がなぜここまで転職理由の上位に来たのか、そして公務員の労働時間管理がどういう仕組みになっているのかを、元当事者の視点で整理します。
「労働時間に不満」が転職理由2位に浮上——doda調査が示す変化
転職サービス大手dodaが実施した「転職理由ランキング2025年版」(2025年8月1日〜8月8日実施、直近1年間に転職した20〜59歳の正社員978件を対象)によると、総合ランキングの上位は次のようになっています。
| 順位 | 転職理由 | 割合 | 前回順位 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 給与が低い・昇給が見込めない | 36.6% | 1位 |
| 2位 | 労働時間に不満(残業が多い/休日出勤がある) | 26.3% | 4位 |
| 3位 | 個人の成果で評価されない | 22.8% | 18位 |
注目したいのは、「労働時間に不満」が前回の4位から2位へ順位を上げ、割合も20.3%から26.3%へと6.0ポイント増加した点です(doda公式サイト)。さらに、20代だけの結果を見ると傾向はもっとはっきりします。
📊 20代の転職理由だけは違う
1位は「給与」
1位は「労働時間」44.6%
20代の転職理由1位は「労働時間に不満」で44.6%(前回27.5%から17.1ポイントの大幅増)。総合ランキングや他の年代、男女別の1位がすべて「給与」だった中、20代だけが異なる結果になりました。「頑張れば給料は上がる」よりも「自分の時間を大事にしたい」という価値観が、若い世代ほど強くなっていることがうかがえます。
なぜ公務員の残業は「見えにくい」のか——原因は3つ
「公務員は定時で帰れる」というイメージを持つ人は今も多いと思います。私自身、国税専門官として勤めていた頃、確定申告期(2月〜3月)は毎年、職場に灯りが遅くまで灯っていました。公務員の残業が「実態として存在するのに見えにくい」のには、構造的な理由が3つあります。
① 繁忙期が特定の時期に偏っている
国税庁が定める「税務運営方針」では、確定申告期のような繁忙期について「事務量の増加」への対応が明確な課題として位置づけられています。対応策として、非常勤職員の活用や、来署による納税相談を高額・重要案件に絞り込む「重点化」などが挙げられています。つまり、公式にも「この時期は事務量が増える」と認めた上で、人員配置の工夫で乗り切ろうとしているのが実態です。私が確定申告期に経験した忙しさは、まさにこの「時期の偏り」そのものでした。
② 部署によって残業時間の差が大きい
人事院「令和6年度年次報告書」によると、令和5年の国家公務員(一般職)の年間総超過勤務時間は次の通りです。
| 区分 | 年間超過勤務時間 |
|---|---|
| 全府省平均 | 230時間 |
| 本府省(霞が関等) | 382時間 |
| 本府省以外 | 194時間 |
本府省は本府省以外の約2倍の残業時間となっており、超過勤務が年360時間以下に収まっている職員の割合は78.3%です(人事院「令和6年度年次報告書」)。「公務員」とひとくくりにされがちですが、実際には配属先によって働き方は大きく異なります。すべての公務員が長時間労働というわけではない一方、一部の部署には明確に負荷が偏っているのが実情です。
③ 若手の離職が「組織の課題」として認識され始めている
人事院が2024年5月16日にまとめた「人事行政諮問会議 中間報告」では、国家公務員採用試験の申込者数がこの10年間で総合職・一般職とも約3割減少し、総合職試験採用者のうち採用10年未満の若手職員が毎年100人以上離職している実態が示されています。背景として、勤務環境・処遇面での魅力低下が要因の一つに挙げられており、これは民間の転職市場でのデータと重なる部分です。
公務員の労働時間管理は「36協定なき世界」
民間企業で残業をさせるには、労働基準法36条に基づく「36協定(サブロク協定)」を労使間で結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。ところが国家公務員には、この労働基準法の規定が原則として適用されません。代わりに、人事院規則15-14が超過勤務の上限を定めています。
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 原則 | 月45時間以下・年360時間以下 |
| 他律的業務が多い部署(特例) | 月100時間未満・年720時間以下(2〜6か月平均80時間以下、月45時間超は年6か月まで) |
ただし、「36協定の届出が不要=無制限に残業させてよい」という意味ではありません。各省各庁の長には職員への安全配慮義務があり、月100時間以上または2〜6か月平均で80時間を超える超過勤務を命じた場合には、本人からの申出がなくても医師による面接指導を行うことが義務づけられています。人事院は令和6年度、本府省20機関・地方4官署を直接訪問し、約1,800人分の在庁時間と超過勤務時間を突合する調査も実施しており、記録が適正でなかった事例には超過勤務手当の追給などの是正指導が行われています。
地方公務員の場合は労働基準法が原則適用されますが、同法第33条第3項の特例により「公務のために臨時の必要がある場合」は36協定なしで時間外勤務を命じることができる仕組みです。国家公務員・地方公務員のいずれも、民間企業とは異なる法的枠組みの中で残業が管理されているという点は、意外と知られていません。
変わり始めた公務員の職場——今日からできること
公務員の働き方は、何も変わっていないわけではありません。実際に成果を上げている自治体の取り組みもあります。
| 自治体 | 取組み | 成果 |
|---|---|---|
| 広島県呉市 | 令和3〜7年度「平時における時間外勤務ゼロ」目標、定時退庁日・休暇目標を設定 | やりがいを感じる職員の割合が67.0%→80.0%に上昇 |
| 奈良県生駒市 | 令和2年度〜管理職を含む全職員の「健康管理時間」を可視化 | これまで見えにくかった管理職の長時間勤務を把握 |
| 大阪府寝屋川市 | 令和元年〜コアタイムなしの完全フレックスタイム制 | 制度導入公表年の採用試験応募者数が例年の10倍以上に増加 |
こうした動きはまだ一部の自治体にとどまりますが、「労働時間の不満」が採用力に直結することを、行政側も認識し始めているのは間違いありません。とはいえ、組織全体が変わるのを待つだけでは、今の自分の時間は取り戻せません。読者のみなさんが今日からできることを3つ挙げます。
💡 今日からできる3つのアクション
- 直近3か月の残業時間を給与明細や勤怠記録から数字で棚卸しする(「なんとなく忙しい」を客観的な数字にする)
- 転職エージェントに登録し、応募前に「実際の残業時間」を担当者経由でヒアリングする
- 家族やパートナーと、今の働き方について一度きちんと話す時間を作る
- 自己都合退職の失業保険、給付制限は1ヶ月に短縮|公務員と民間の違い
✅ この記事のポイント
- doda調査で「労働時間に不満」が転職理由の総合2位(26.3%)、20代では1位(44.6%)に浮上
- 国家公務員の年間超過勤務は全府省平均230時間だが、本府省は382時間と部署差が大きい
- 国家公務員には労基法の「36協定」が適用されず、人事院規則が別枠で上限を規定している
- 「36協定なし」=無制限ではなく、健康配慮義務や面接指導の仕組みはある
- 呉市・生駒市・寝屋川市など、働き方改革で成果を出す自治体も出てきている
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まとめ
「労働時間に不満」が転職理由の2位に浮上し、20代では1位になったという事実は、単なる甘えやわがままではなく、時代の価値観が変わってきたことの表れだと思います。公務員の労働時間も、法律上の枠組みこそ民間と違いますが、「見えにくいだけで確かに負荷が偏っている部署がある」というのが実態です。大切なのは、今の働き方を「なんとなく」で片付けず、数字で実態を把握してみること。転職活動は、ノーリスク。まずは踏み出す一歩を大事にしてください。
次回は、相続が発生した後に必要な実務手続き(銀行口座の解約・不動産の名義変更など)について解説予定です。お楽しみに!


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