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「公務員は楽」は本当か|元国税職員が明かす残業の実態

「公務員は楽」は本当か|元国税職員が明かす残業の実態
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【この記事でわかること】
・「公務員は定時で帰れる」というイメージと実務のギャップ
・超過勤務の「事前許可制」という建前が、なぜ実務で成り立たないのか
・仕事が早い人ほど損をする、公務員職場にありがちな空気
・基本給が高くても、労働時間単価で見ると印象が変わる理由

夜遅くまで灯りがついたままのデスクとランプ、公務員の残業を象徴するイメージ

「公務員は定時に帰れて楽そう」——これは、これから公務員を目指す方や、公務員に憧れや、時には嫉妬に近い感情を抱いている方からも、よく聞く言葉です。私自身、国税専門官として16年以上勤めていましたが、正直に言うと、このイメージにはかなりの誤解が含まれています。今回は、統計やランキングの話は別記事に譲り、私自身が体験した「サービス残業のリアル」だけを、包み隠さずお話しします。

定時で帰れるはずなのに、帰れなかった

建前上、公務員の勤務時間は8時半から17時までです。しかし実際は、朝も早くから出勤し、17時になっても仕事は終わらず、そのまま残って働くのが「普通」という空気が職場にありました。誰か一人が特別だったわけではありません。周りもみんな、同じように残っていました。

背景にあるのは、「公務員はゆるい」という単純な話ではなく、担当する業務量に対して人員が慢性的に不足しているという構造的な問題です。仕事の量が減らないまま人は増えないため、誰かが定時で切り上げれば、そのしわ寄せは他の誰かに回るだけでした。

そもそも超過勤務は「上司の事前許可制」という建前になっています。しかし実務では、上司が部下一人ひとりの仕事量を先読みして、正確に許可を出すことなど現実には不可能です。結果として、実際に残った残業時間を後から報告する「事後申告」にならざるを得ないのが実態でした。

⚠️ キャリア転職を考えている方へ
「公務員は定時で帰れて楽そう」というイメージだけで選択肢に入れると、実態とのギャップに戸惑うことになりかねません。業務量に対して人員が薄い職場では、公務員に限らず残業が常態化しやすいというのは、転職先を選ぶ際にも共通して見ておきたい視点です。「定時で帰れそうだから」という理由だけで職場を選ぶのではなく、人員配置や業務量の実態まで踏み込んで確認することをおすすめします。

実は、始業前の時間にも同じ構造がありました。建前上の始業時刻は8時半ですが、実際にはそれよりずっと前——早い人は7時半ごろから、遅くとも8時前には出勤して、電話や納税者対応が始まる前の準備を済ませているのが日常でした。資料を揃えたり書類を用意したりする作業は、最初は若手が、やがて中堅職員が担うようになりますが、実際に机に着き、パソコンを起動して作業している以上、これも間違いなく労働時間です。

制度上は、この「朝残業」も超過勤務として申告することができます。しかし実際にきちんと申告し、認めてもらっている人をほとんど見たことがありません。私自身、16年以上勤めた中で、朝残業を認めてもらったことは一度もありませんでした。同じ職場に長くいると、それが「普通」になってしまいます。

民間企業に転職して改めて感じたのは、朝残業という発想そのものが公務員の職場では驚くほど希薄で、それを労働として認めない空気すらあったということでした。

残業時間は、なぜか少なく申告されていた

建前 実務での実態
超過勤務は上司の事前許可制上司が仕事量を事前に把握するのは不可能なため、実際は「残った時間を事後申告」せざるを得ない
申告した時間=実際の残業時間本当は5時間残っていても1時間しか申告しない、というように少なめに申告する慣行がある

問題は、この少なめの申告を上層部がそのまま真に受けてしまうことです。「こんな短い残業時間でできているなら、まだやれるはずだ」という判断が生まれ、現場がさらに締め付けられるという悪循環につながります。管理職自身も同じ自己申告制の中で、少なめに申告しながら残っているのが実情でした。

ライオン
本当は残業時間って、上司が現場を見て把握するものじゃないんですか?
トラ
そう思うよね。でも上司だって預言者じゃないから、部下全員の仕事量を先読みするのは無理なんだ。だからこそ「事後申告」の運用にならざるを得なくて、その事後申告自体が少なめに書かれてしまう、という二重のズレが起きているんだよ
時計の針が示す時間、公務員の残業申告の矛盾を象徴するイメージ

早く終わらせた人ほど、損をする

この空気は、定時退庁そのものへの視線にも表れていました。5時に帰る時ですら「もう帰るんだ」という冷ややかな目で見られ、6時に帰るときも同じように見られていました(もちろん部署による差はあります)。皮肉なのは、仕事が早く終わって帰れる人ほど「余裕がある」と見なされ、さらに仕事を振られて結局残業するという本末転倒な構造です。

本来はそこで人員を増やすべき問題のはずなのに、効率よく働く人にしわ寄せが集中してしまう。これは公務員に限った話ではないかもしれませんが、私自身が身をもって感じた違和感でした。

自分の担当分が終わって帰ろうとする瞬間、職場には「帰りづらい空気」が確かにありました。一人だけ先に帰ることに、周囲の視線を感じる場面は何度もありました。

しかし本当に問題なのは、「人の分の仕事まで引き受けなければ帰れない」という状態そのものです。自分の担当業務が終わっても、他の誰かの仕事を肩代わりしないと職場が回らないのだとしたら、それは個人の頑張りでどうにかする話ではなく、人員が足りていないという組織的な問題のサインです。

実質的には「付き合いで残っている」という感覚に近く、業務量に対して人員が少なすぎるからこそ一人あたりの仕事量が膨らみ、それを効率よくこなして早く終わらせても「まだ余裕があるはず」という不思議な評価につながってしまう。それでも私自身は、周囲がどう見ているかを気にせず、仕事が終わればそのまま定時で帰るようにしていました。

公務員時代に評価されていたのは、正直なところ「残業せずに早く帰れること」ではなく「長時間残って仕事をこなせるスキルや体力」でした。これは辞める直前まで変わりませんでした。ワークライフバランスの観点からもどうかと思いますし、そもそも残業を前提にしないと業務が回らないこと自体が異常事態であり、組織としてかなりまずい状態だと思います。

上司や上からは「残業するな」と言われるのですが、それでも結果的には残業して仕事をしている人のほうが「頑張っているな」と評価されやすいという矛盾がありました。生産性という観点で見れば、それは明らかに間違った評価軸だと思います。これは特に、民間企業に転職してから強く感じるようになったことです。

それでも、データは見ない

ライオン
自己申告に頼らなくても、パソコンの起動・シャットダウンの記録を見れば実際の労働時間って分かりそうなのに、なぜやらないんですか?
トラ
本当にその通りで、ログを取れば自己申告との差はすぐ分かるはずなんだ。でも公務員は労働基準監督署のような外部の監視が入りにくく、そこまで踏み込む動機が組織側に働きにくいのが実情だと感じているよ

民間企業に転職してからは、勤務システムでパソコンの起動・シャットダウンの記録が自動的に残る仕組みになり、仕事が終わればすぐに退勤するという習慣が自然に根付きました。

💡 民間企業で働いている方へ
公務員には労働基準法の36協定が原則適用されませんが、民間企業で働く方には話が違います。もし今の職場でサービス残業が慢性的に続いているなら、それは労働基準法にもとづく労働者の権利の話です。労働基準監督署への相談という選択肢が、公務員にはない形で用意されています。「会社が変わらないから仕方ない」と一人で抱え込む前に、この違いは知っておいて損はないと思います。

基本給は高くても、時給で見れば

「労働時間あたりの単価」で考えると、この差ははっきりしています。時給換算で見ると、サービス残業が常態化しているので、基本給が高かったとしても実質的な労働時間単価はむしろ安いです。これが、転職を経験した今の実感です。

この傾向は、管理職になるとさらに強まります。統括官クラスになると超過勤務手当そのものが出なくなるため、部下より遅くまで残って働いても、その分の対価はどこにも計上されません。

しかも現場の人員構成は、若手職員と再任用・定年間際のベテランに偏りがちで、本来なら中堅層が担うはずの実務が薄い層になっています。その結果、「管理職が自ら手を動かさないと仕事が回らない」という状態に陥りやすく、若手の統括官クラスが中堅の穴を埋める形で働かざるを得ない場面が増えているのが実情でした。

税務職員の俸給表は、他の一般職(行政職)よりも高い水準に設定されています。「税務職員は給料が高い」と言われることもありますが、実際の労働時間まで含めた単価で見ないと、実態は見えてきません。基本給の比較や人事院統計に基づく詳しい解説は、「労働時間に不満」が転職理由2位に浮上|元国税職員が読む残業の実態で一次資料をもとにまとめていますので、あわせてご覧ください。

山道を進む一本道と朝日、転職後の新しい働き方を象徴するイメージ

✅ この記事のポイント

  • 超過勤務の「事前許可制」は建前で、実務は事後申告にならざるを得ない
  • 少なめの申告を上層部が真に受け、現場をさらに締め付ける悪循環がある
  • 仕事が早い人ほど「余裕がある」と見なされ、さらに仕事を振られやすい
  • 基本給の高さは、実労働時間まで含めた単価で見ないと実態が分からない

まとめ

「公務員は楽」というイメージは、建前としての勤務時間だけを見た印象にすぎません。事前許可制という制度と、実際には事後申告にならざるを得ない現場の運用にはズレがあり、そのズレが過少申告という形で積み重なり、悪循環を生んでいました。基本給が高くても、実労働時間まで含めた単価で見なければ、本当の待遇は見えてきません。転職活動は、ノーリスク。まずは踏み出す一歩を。

次回は「給料は環境で決まる」というテーマで、転職と副業から見えた気づきについて解説予定です。お楽しみに!

ライオントラ

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みるきー
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≫脱≪安定を求めし者
税務署・国税局に通算16年超勤務し、税務調査担当係長等を歴任。相続・贈与・譲渡といった資産税の実務にも精通。現在は民間企業へのキャリアチェンジも経験し、信託関係の事務に従事しています。「お金のことって、自分で学ばないと誰も教えてくれない」——そんな実感から、このブログを始めました。3人の子育てを経験しながら、育休も3回取得。転職・税金・子育てという、30代・40代がリアルに向き合うテーマを、むずかしい言葉を使わず、スキマ時間で読めるブログとしてお届けしています。【保有資格】1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)/宅地建物取引士/一種外務員資格/家族信託専門士
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