産後ケア事業「ユニバーサル化」とは|令和9年度予算104億円の中身

【この記事でわかること】
・「産後ケア事業」とは何か、誰が使える制度なのか
・「ユニバーサル化」が実はここ数年かけて進んできたプロセスだということ
・令和9年度予算概算要求で計上された104億円の中身

「産後ケアって、大変な人だけが使うものでしょう?」——そう思っていませんか。実は国は数年かけて、この制度を「支援が必要な一部の人向け」から「必要を感じたら誰でも使える」制度へと少しずつ作り替えてきました。
そして2026年9月、こども家庭庁が公表した令和9年度予算概算要求で、産後ケア事業にさらに大きな予算が計上されたことがわかりました。妊婦健診の自己負担に地域差の記事で予告していたとおり、今回はこの「ユニバーサル化」の中身を、資料に基づいて解説します。
👶 産後ケア事業とは?
産後ケア事業は、母子保健法第17条の2に位置づけられた市町村の事業です。こども家庭庁の資料では、次のように説明されています。
「市町村が、出産後1年以内の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行い、産後も安心して子育てができる支援体制の確保を行う事業」(こども家庭庁「産後ケア事業について」より)
サービスの提供形態は3種類あり、家庭の状況に応じて選べる設計になっています。
| 提供形態 | 内容 |
|---|---|
| 宿泊型 | 病院・助産所等の空きベッドを活用し、宿泊による休養機会を提供(利用期間は原則7日以内) |
| デイサービス型 | 個別・集団で支援を行える施設で、日中来所した利用者へ実施 |
| アウトリーチ型 | 助産師・保健師・看護師等の担当者が利用者の自宅を訪問 |
実施主体は市町村(特別区を含む)で、費用は国・都道府県・市町村が分担して補助しています。
💡 元国税局職員として気になった点
産後ケア事業として提供されるサービスの譲渡等は、令和3年度から消費税が非課税とされています(前掲資料の制度年表より)。出産費用や助産に係る資産の譲渡等と同じく、母子の負担を増やさない仕組みとして税制面でも手当てされているわけです。
📈 「ユニバーサル化」は一夜にして起きたわけではない
今回の予算報道だけを見ると「急に対象が広がった」ように感じるかもしれませんが、実際はここ数年、段階を踏んで進められてきた流れです。こども家庭庁の資料が示す制度の歩みを整理すると、次のとおりです。
| 年度 | できごと |
|---|---|
| 平成26年度 | 予算事業として創設(モデル事業) |
| 令和元年度 | 母子保健法の改正により事業を法定化 |
| 令和3年度 | 改正法施行により市町村の努力義務に/サービスの消費税を非課税化 |
| 令和4年度 | 住民税非課税世帯への利用料減免加算を創設(1回5,000円) |
| 令和5年度 | 「ユニバーサルな事業」であることを明確化/対象者を「産後ケア事業を必要とする者」に見直し/すべての世帯向け利用料減免を追加(1回2,500円) |
| 令和6年度 | 子ども・子育て支援法の改正により「地域子ども・子育て支援事業」に位置づけ(令和7年4月施行) |
| 令和7年度 | 都道府県負担を導入(国1/2・都道府県1/4・市町村1/4に変更。従来は国1/2・市町村1/2) |
出典:こども家庭庁「産後ケア事業について」(第4回こども家庭審議会成育医療等分科会資料)の制度年表より作成
つまり「支援を必要とする人が申し込める」という建前自体は令和5年度の時点で既に整理済みで、今回の令和9年度予算は、その方針を実際に使えるようにするための「受け皿づくり」の段階だと言えます。

💰 令和9年度予算はいくら計上された?
こども家庭庁「令和9年度母子保健対策関係予算概算要求の概要」によると、産後ケア事業(子ども・子育て支援交付金)の概算要求額は次のとおりです。
| 区分 | 予算額 |
|---|---|
| 令和8年度予算額 | 77億円 |
| 令和9年度概算要求額 | 104億円 |
出典:こども家庭庁「令和9年度母子保健対策関係予算概算要求の概要」(p61・62)
この産後ケア事業単体の104億円は、もう少し大きな枠組みの一部でもあります。「概算要求の概要」の冒頭部分では、母子保健対策関係予算全体が188億円→407億円、そのうち「妊娠・出産支援等の推進」分野が136億円→280億円に拡充される中で、「産後ケア事業、妊娠・出産包括支援事業【拡充】」として115億円が計上されたと説明されています(内訳は、産後ケア事業104億円、妊娠・出産包括支援事業7億円、産後ケア施設改修費等支援事業4億円で、合計115億円と一致します)。
⚠️ 「予算がついた」は「制度が確定した」ではありません
これはあくまで概算要求の段階の金額です。実際の予算額は今後の予算編成過程(年末の政府予算案決定、翌年の国会審議)を経て確定します。資料内にも「記載の単価は令和9年度概算要求時点のものであり、今後の予算編成過程において変更があり得る」との注記があります。
🏠 受け皿を増やす新事業「施設改修費等支援」
「誰でも使える」と定義を広げても、実際に事業を行う施設がなければ絵に描いた餅です。そこで令和9年度予算には、産後ケアの受け皿そのものを増やすための新しい支援メニューが盛り込まれています。
📅 産後ケア施設改修費等支援事業(令和6年度補正で創設)
概算要求4億円
(新設・定員拡大)
対象になるのは、賃貸物件を活用して設置する施設等を含む、産後ケア事業を行う施設の新設・定員拡大等にともなう改修費です。実施主体は市町村で、設置主体が市町村の場合は国と市町村が1/2ずつ、民間団体の場合は国1/2・市町村1/4・民間団体1/4を補助する仕組みになっています。(出典:こども家庭庁 同資料 p42)

✅ この記事のポイント
- 産後ケア事業は母子保健法第17条の2に基づく市町村事業。宿泊型・デイサービス型・アウトリーチ型の3種類がある
- 「ユニバーサル化」は令和5年度に対象者の定義見直しという形で既に方針転換が起きている
- 令和9年度概算要求では事業費104億円(前年度77億円)に加え、施設改修費支援4億円が新設された
- 金額はあくまで概算要求段階。実際に使えるかは自治体の受け皿整備の進み具合次第
📚 あわせて読みたい
🌱 まとめ
産後ケア事業の「ユニバーサル化」は、ある日突然決まった話ではなく、令和元年度の法定化から令和5年度の対象者見直し、そして令和9年度予算での受け皿拡大まで、段階を踏んで進んできた制度です。「大変な人向け」というイメージのまま制度を素通りしてしまうのはもったいないかもしれません。自分で学ばないと、だれも教えてくれないからこのブログをきっかけに学ぼうと思っていただけると嬉しいです。
次回は「母子保健のデジタル化とは|乳幼児健診がマイナンバーで変わる」について解説予定です。お楽しみに!


最後まで読んでくれてありがとう
資料集めやサーバー代など、ブログ作成には費用がかかっています。応援していただいた分は、次の記事づくりに大切に使わせていただきます。またブログに遊びに来てくださいね。
応援する【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の個人・法人に対する税務・法律・社会保険上のアドバイスではありません。記載内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本記事を参考にした判断・行動による損害について当サイトは責任を負いかねます。個別の判断・手続きについては、税理士・社会保険労務士・弁護士・ファイナンシャルプランナーなど各分野の専門家にご相談ください。記載内容は2026年10月時点の情報に基づいており、法改正・制度改正等により変更となる場合があります。







