簡易型DC廃止|企業型DCへ統合、2026年4月施行
【この記事でわかること】
・「簡易型DC」がすでに廃止され、通常の企業型DCに統合されたこと(2026年4月1日施行)
・簡易型DCで認められていた手続き簡素化が、全事業主に広がった中身
・すでに簡易型DCを導入している会社に用意された経過措置
「うちの会社、たしか簡易型DCってやつを入れてたはず…」。中小企業の経営者や人事担当の方から、そんな声を聞くことがあります。実はこの「簡易型DC」、2026年4月1日にひっそりと制度そのものが廃止され、通常の企業型DCに統合されています。前回の記事でご紹介した「マッチング拠出の上限撤廃」と同じ2025年の年金制度改正パッケージの一部です。「何が変わって、既存の会社はどうすればいいのか」をやさしく整理します。
簡易型DCとは?もう「通常の企業型DC」に統合されています
簡易型DC(正式名称:簡易企業型年金)は、中小企業が確定拠出年金(企業型DC)を導入しやすくするために2018年5月に創設された制度です。通常の企業型DCと比べて、以下のような手続きの簡素化が認められていました。
| 項目 | 通常の企業型DC | 簡易型DC(旧制度) |
|---|---|---|
| 対象企業の規模 | 制限なし | 加入者300人以下・全員加入が条件 |
| 事業主掛金の決め方 | 企業型年金規約で自由に設計 | 定額(政令の基準に従う) |
| 提示する運用商品の本数 | 3本以上 | 2本以上でよい |
| 承認申請時の添付書類 | 原則どおり | 労働協約・委託契約書等の一部を省略可 |
厚生労働省「2025年の制度改正」ページでも、「2018年に中小企業向けに創設された簡易企業型年金(簡易型DC)」と明記されています。厚生労働省の該当ページで全文を確認できます。
何がどう変わった?簡易型DCという区分そのものがなくなりました
2026年4月1日、簡易型DCという制度区分は廃止され、通常の企業型DCに統合されました。これに伴い、施行規則から簡易型DC専用の条文(添付書類の省略規定など)が削除されています。
ここでのポイントは、簡易型DCが単に消えてなくなったわけではないことです。簡易型DCで認められていた手続き簡素化のうち一部が、企業規模を問わずすべての事業主に適用範囲が広がりました。具体的には、企業型年金規約の変更のうち「厚生労働大臣の承認」が必要だった一部の事項について、これまで簡易型DCだけに認められていた「届出(軽微な変更)」で済む扱いが、通常の企業型DCを含むすべての事業主に拡大されています。
| 規約変更手続き | 2026年3月まで | 2026年4月1日〜 |
|---|---|---|
| 簡易型DC実施企業 | 一部の変更は届出のみでOK | 通常の企業型DCとして同じ扱いに |
| 通常の企業型DC実施企業 | 同じ変更でも厚生労働大臣の承認が必要 | 届出のみでOKに拡大 |
つまり今回の改正は、中小企業向けの特例を無くす改正ではなく、中小企業だけの特例だった簡素化を、大企業も含めた全事業主に広げる改正です。厚生労働省の資料でも「中小事業主を含めたすべての事業主が取り組みやすい設計に改善します」と説明されています。
すでに簡易型DCを導入している会社はどうなる?(経過措置)
「うちはすでに簡易型DCで運営している。今すぐ何か手続きが必要なの?」という疑問には、法律の附則(経過措置)に答えがあります。社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年法律第74号)附則第32条に、次のような経過措置が定められています。
| 状況 | 2026年4月1日以降の扱い |
|---|---|
| 施行日時点ですでに簡易型DCとして承認済みの会社 | 「事業主掛金は定額」「運用商品は2本以上でよい」という旧ルールがそのまま存続(グランドファザリング) |
| これから新規に企業型DCを始める会社 | 「簡易型DC」として新規に始めることはできない(最初から通常の企業型DCとして設計) |
つまり、すでに簡易型DCを導入している会社は、今すぐ規約を作り直す必要はありません。これまでどおり定額の事業主掛金・2本以上の運用商品提示で運営を続けられます。ただし新規に簡易型DCという枠組みで制度を始めることはできなくなったため、これから企業型DCの導入を検討する中小企業は、最初から通常の企業型DCとして設計することになります。
経営者・人事担当者が今できること
今回の改正は「制限がなくなる・自由度が増す」方向の改正なので、慌てて何かを届け出る必要はありません。とはいえ、以下の3点は確認しておくと安心です。
💡 確認しておきたい3点
- 運営管理機関(DCの管理を委託している金融機関等)から、簡易型DC統合に関する案内が来ていないか
- 社内規程・従業員向け説明資料で「簡易型DC」という表記のまま止まっていないか
- 今後、通常の企業型DCと同じ運用商品本数(3本以上)に切り替える予定があるか(義務ではなく任意の見直し)
これから新たに企業型DCの導入を検討している中小企業の場合は、「簡易型DCなら手続きが楽そうだから」という選び方自体がもうできない点に注意が必要です。ただし今回の改正で簡素化された手続き(規約の軽微な変更が届出で済む範囲の拡大)は、規模を問わず享受できるようになっているため、以前より導入のハードルは下がっている面もあります。
✅ この記事のポイント
- 簡易型DC(簡易企業型年金・2018年5月創設)は2026年4月1日に廃止され、通常の企業型DCに統合された
- 簡易型DC限定だった手続き簡素化(規約の軽微な変更が届出で済む範囲)は、全事業主に拡大された
- 施行日時点ですでに簡易型DCを運営していた会社は、経過措置により定額拠出・運用商品2本以上のルールを継続できる
- 新規に「簡易型DC」として制度を始めることはもうできない
まとめ:制度の名前が変わっても、やることの本質は同じ
簡易型DCという制度区分がなくなったと聞くと身構えてしまいますが、中身は「特例だった簡素化を、みんなが使えるように広げた」改正です。すでに簡易型DCを運営している会社は、経過措置でこれまでのルールを続けられるので、まずは落ち着いて社内の呼び方・案内文書が古いままになっていないかを確認するところから始めてみてください。元国税職員としても、こうした「静かに施行される改正」ほど、後から慌てないよう早めにキャッチアップしておくことをおすすめします。
次回は、同じ2025年の年金制度改正パッケージから「中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)の届出一本化」について解説予定です。お楽しみに!


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