【番外編】贈与税の歴史|暦年課税と相続時精算課税はこう変わってきた
【この記事でわかること】
・贈与税の「年110万円」はいつから始まったのか
・父母・祖父母からの特例税率は昔はなかったという事実
・相続時精算課税は当初、孫は対象外だった
・2つの制度が同じ年に大きく動いた「共通の転換点」

このブログでは、贈与税の基本(暦年課税・特例税率・相続時精算課税)を順番に解説してきました。今回は番外編として、これらの制度がどう変わってきたのか、その歴史をたどってみます。
じつは、いま当たり前に使われているルールの多くは、ここ20年ほどで形づくられたものです。「昔は違った」を知ると、いまの制度の意味がぐっと深く理解できます。元・国税局係長として資産税の実務に携わってきた筆者が、やさしく整理します。
暦年課税のあゆみ|110万円と特例税率はいつから?
毎年使える「年110万円の基礎控除」。これが今の金額になったのは、じつは2001年(平成13年)からです。それ以前は60万円でした。
では、その60万円より前はどうだったのでしょうか。じつは、もっと小さい時代がありました。贈与税がシャウプ勧告によって相続税から独立した税目になった昭和28年(1953年)当時、基礎控除はわずか10万円だったのです(この10万円を含む変遷は、日本税理士会連合会 税制審議会「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税のあり方について」(令和4年答申)に一覧で記載されています)。そこから物価や経済の成長に合わせて段階的に引き上げられ、60万円(昭和50年〜)を経て、いまの110万円にたどり着きました。
| 時期 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 昭和28年(1953年)贈与税の独立創設時 | 10万円 |
| 昭和33年(1958年)ごろ | 20万円 |
| 昭和39年(1964年)ごろ | 40万円 |
| 昭和50年(1975年)〜平成12年 | 60万円 |
| 平成13年(2001年)〜現在 | 110万円 |
基礎控除額の変遷の出典:日本税理士会連合会 税制審議会「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税のあり方について」(令和4年答申)
※出典について:この基礎控除額の変遷(10万円→20万円→40万円→60万円→110万円と、それぞれの適用期間)は、日本税理士会連合会 税制審議会「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税のあり方について」(令和4年答申)に一覧で明記されています。同答申では「昭和28年改正┉10万円(昭和28~32年分)/昭和33年改正┉20万円(同33~38年分)/昭和39年改正┉40万円(同39~49年分)/昭和50年改正┉60万円(同50~平成12年分)/平成13年改正┉110万円」と示されています。あわせて、昭和50年からの60万円と平成13年からの110万円は財務省「平成財政史」第9節でも確認できます。
贈与税の基礎控除は、10万円 → …… → 60万円 → 110万円と、70年近い時間をかけて約11倍に。時代とともに「非課税で贈与できる金額」が広がってきたことがわかります。
| 時期 | おもなできごと |
|---|---|
| 平成12年(2000年)まで | 基礎控除は60万円 |
| 平成13年(2001年) | 基礎控除が110万円に(租税特別措置法の特例。相続税法の本則は今も60万円) |
| 平成15年(2003年) | 相続時精算課税が創設され、暦年課税との「選択制」に |
| 平成27年(2015年) | 特例贈与・一般贈与の税率区分を新設。父母・祖父母からの贈与を優遇 |
| 令和6年(2024年) | 生前贈与の持ち戻しが「相続開始前3年→7年」に延長 |
注目したいのは2015年です。「父母・祖父母からの贈与は税率が安い」という特例税率は、もともと存在しませんでした。それまでは、誰からの贈与でも税率は一律だったのです。

相続時精算課税のあゆみ|2003年創設、孫は対象外だった
もう一つの制度、相続時精算課税は2003年(平成15年)に登場しました。こちらも当初は、いまとかなり条件が違っていました。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 平成15年(2003年) | 創設。当初は贈与者65歳以上の親→20歳以上の子(推定相続人)。孫は原則対象外 |
| 平成27年(2015年)※平成25年改正 | 贈与者の年齢を65歳→60歳に引下げ。孫も対象に拡大 |
| 令和4年(2022年)4月 | 成年年齢の引下げで、受贈者の年齢が20歳→18歳に |
| 令和6年(2024年) | 年110万円の基礎控除を新設(相続財産に加算されない) |
出典:国税庁 No.4103・平成15年度/平成25年度税制改正
創設当初、孫は原則として対象外でした。あげる人は65歳以上、もらう人は20歳以上。その後、贈与者は60歳以上に引き下げられ、孫も対象に加わり、成年年齢の引下げで受贈者は18歳以上に。そして2024年、年110万円の基礎控除が新設されました。

2つの制度の「共通の転換点」を並べて見る
暦年課税と相続時精算課税は、別々の制度に見えて、じつは同じ年に大きく動いてきました。並べると流れがよく分かります。
| 年 | 暦年課税の動き | 相続時精算課税の動き |
|---|---|---|
| 2003年(平成15年) | 精算課税の登場で「選択制」に | 制度が創設(贈与者65歳→子20歳・孫は対象外) |
| 2015年(平成27年) | 特例税率・一般税率の区分を新設 | 贈与者65→60歳・孫も対象に |
| 2022年(令和4年) | (変更なし) | 受贈者の年齢が20→18歳に |
| 2024年(令和6年) | 持ち戻しが3年→7年に延長 | 年110万円の基礎控除を新設 |
2015年と2024年は、どちらの制度も同時に見直された大きな節目でした。背景にあるのは一貫して、「高齢世代の資産を、若い世代へ早めに移してもらいたい」という国の狙いです。
✅ この記事のポイント
- 年110万円の基礎控除は2001年(平成13年)から。それ以前は60万円
- 父母・祖父母からの「特例税率」は2015年に新設。昔は税率が一律だった
- 相続時精算課税は2003年創設。当初は孫が対象外で、年齢要件も今と違った
- 2015年・2024年は両制度が同時に見直された大きな転換点
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まとめ:歴史を知ると、いまの制度が腹落ちする
贈与税のルールは、ここ20年ほどで「高齢世代から若い世代への資産移転」を後押しする方向に少しずつ整えられてきました。いまのルールは“完成形”ではなく、これからも変わっていく可能性があります。
だからこそ、最新の制度を正しく知り、早めに動くことが大切です。このブログをきっかけに、ご家族で財産の引き継ぎ方を話し合ってみてください。
次回予告
次回は「暦年課税と相続時精算課税の違い|2024年改正後に知っておきたい比較ポイント」をお届けします。歴史を踏まえたうえで、2つの制度を並べて整理します。お楽しみに!


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