厚生年金基金とは?現存4件に激減した理由を解説
【この記事でわかること】
・厚生年金基金の仕組み(代行部分とプラスアルファ部分の違い)
・2014年の法改正で新規設立ができなくなった経緯
・現存基金がわずか4件まで減少した最新の統計
・自分の勤務先の基金が解散・代行返上した場合、上乗せ給付はどうなるか
「厚生年金基金」という名前を、会社の先輩や親の世代から聞いたことはあっても、「今も入れる制度なの?」と聞かれると答えに詰まる方も多いのではないでしょうか。実はこの制度、現在は新しく加入することも、企業が新たに設立することもできません。
私は国税専門官として16年以上、税務署・国税局に勤務した後、民間企業へ転職しました。現職では遺言信託関係の実務にも携わっており、お客様の年金・退職金の全体像を整理する機会が少なくありません。今回は、制度としては縮小が進んでいる「厚生年金基金」について、仕組み・現状・解散時の注意点を、厚生労働省の一次資料に基づいて整理します。
📋 厚生年金基金とは?「代行部分」と「プラスアルファ部分」
厚生年金基金は、会社員が加入する厚生年金保険の一部を、国に代わって基金が給付する仕組みの企業年金制度です(出典:厚生労働省「厚生年金基金制度」)。
| 部分 | 内容 |
|---|---|
| 代行部分 | 国の老齢厚生年金(報酬比例部分)を、国に代わって基金が支給する部分。事業主は厚生年金保険料のうち「免除保険料」を国へ納めなくてよい代わりに、その分を基金へ納める |
| プラスアルファ部分 | 代行部分に上乗せして基金が独自に支給する年金。企業ごとに内容が異なる「3階部分」にあたる |
出典:厚生労働省「厚生年金基金制度」(確認日:2026-08-23)
📉 2014年法改正で新設ゼロに|代行割れ基金への対応
2013年(平成25年)6月に成立した法改正が2014年(平成26年)4月1日に施行され、厚生年金基金の新規設立は認められなくなりました(出典:厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(平成26年4月)」)。あわせて、施行日から5年間(2019年3月末まで)を、積立金が国の代行部分を下回る「代行割れ基金」に集中的に対応する期間と定め、早期の自主解散や確定給付企業年金(DB)・確定拠出年金(DC)など他の企業年金制度への移行が促されました。
すべての基金が一律に解散・代行返上を義務づけられたわけではありません。2019年4月以降、以下のように扱いが分かれています。
| 基金の状態 | 扱い |
|---|---|
| 存続要件を満たす健全な基金 (代行部分債務の1.5倍以上の資産、または代行+加算部分の最低積立基準額以上の資産) | 基金として存続可能(他制度への移行も選択できる) |
| 存続要件を満たさない基金 | 代行部分を国へ返上して他制度へ移行、それができない場合は厚生労働大臣が解散を命令 |
出典:厚生労働省・企業年金連合会 審議会資料(確認日:2026-08-23)
📊 現存基金はわずか4件|最新の統計(2026年3月末)
法改正から10年以上が経ち、厚生年金基金の数は大きく減少しました。信託協会・生命保険協会・全共連が共同で取りまとめた最新の受託概況によると、2026年(令和8年)3月31日現在の状況は次のとおりです。
| 項目 | 2026年3月末 | 前年同期(2025年3月末) |
|---|---|---|
| 基金数 | 4件 | 4件 |
| 加入者数 | 11万人 | 11万人 |
| 資産残高 | 16.5兆円 | 15.4兆円 |
出典:信託協会・生命保険協会・全共連「企業年金(確定給付型)の受託概況」令和8年3月末現在(確認日:2026-08-23)
参考までに、法改正が検討されていた当時の社会保障審議会年金部会「厚生年金基金制度に関する専門委員会」資料(平成24年11月27日)では、平成23年度末(2012年3月末)時点で562基金(代行返上中を除く。登録総数は577基金)が存在していたことが示されています。そこから現在の4件まで、10年余りで基金数は1%以下にまで減少したことになります。
🔍 基金が解散・代行返上したら、上乗せ給付はどうなる?
ご自身や親の勤務先に厚生年金基金があった(ある)方にとって、一番気になるのは「解散したら、上乗せ分の年金は消えてしまうのか」という点でしょう。代行部分(国の老齢厚生年金相当)と、基金独自の上乗せ給付(プラスアルファ部分)とで、扱いが分かれます。
| ケース | 上乗せ給付(プラスアルファ部分)の扱い |
|---|---|
| 基金が「解散」 | 残余財産の範囲内で分配(清算)が原則。本人の選択により、分配金を企業年金連合会へ移換すれば、将来「通算企業年金」(終身年金)として受給できる。他のDB・DC・中小企業退職金共済への移換も選択可 |
| 基金が「代行返上」して他制度へ移行 | 上乗せ部分の積立金をそのまま持って確定給付企業年金(DB)・確定拠出年金(DC)など新しい制度へ引き継がれ、給付は継続して保障される |
| 上乗せ部分にも積立不足(代行割れ等)がある場合 | そのままでは受給権が保全されないため、事業主がDB等のスキームで退職金原資を再建する、または不足分を分割納付するなどの対応が求められる |
出典:厚生労働省・企業年金連合会 資料(確認日:2026-08-23)
📌 忘れずに確認したいこと
- 企業年金連合会に移換された年金は、請求しなければ受け取れません。転職・退職の経験がある方は、企業年金連合会に「もらい忘れ」がないか確認する価値があります
- 移換された年金は月数千円程度のケースもありますが、生涯にわたって受け取れる終身年金です
まとめ
厚生年金基金は、新規設立が認められなくなって10年以上が経ち、現存するのはわずか4件(2026年3月末時点)という、いわば「過去の制度」になりつつあります。ただし、勤務先に基金があった(ある)方にとっては、解散・代行返上時に上乗せ給付がどう扱われるかは実利に関わる話です。企業年金連合会への移換手続きを忘れていないか、この機会に確認してみてはいかがでしょうか。自分で学ばないと、だれも教えてくれません。このブログをきっかけに、少しずつ学んでいただけると嬉しいです。
次回は「遺族年金」について解説予定です。お楽しみに!
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