【令和8年分】路線価とは?5年連続上昇と一物四価を解説
【この記事でわかること】
・路線価とは何か(だれが・いつ・何のために決めるのか)
・「一物四価(五価)」=1つの土地に複数の価格がある理由
・令和8年分(2026年)路線価のポイント(全国平均・過去最大の上昇)
・令和元年分〜令和8年分(2019年〜2026年)の8年間の推移とコロナ禍の影響
・路線価が上がると相続税にどう影響するのか

2026年7月1日、国税庁から令和8年分の路線価が公表されました。ニュースで「路線価が過去最大の上昇」と聞いて、「そもそも路線価って何?」「自分の相続に関係あるの?」と感じた方も多いのではないでしょうか。
路線価は、ふだんの生活ではあまり意識しませんが、相続や贈与で土地を持っている(持つ予定がある)人にとっては、税額を左右する非常に大切な数字です。
私自身、元・国税局で資産税(相続・贈与・譲渡)の実務に携わってきました。さらに「評価専門官」という部署で、路線価そのものを定める評定事務に従事した経験もあります。その経験から、むずかしく思われがちな路線価を、はじめての方にもわかるようにやさしく解説します。
🖊️ 筆者の専門性について(少しだけ自慢させてください)
路線価の評定に携わる職員は、税務大学校(埼玉県和光市)の「評価特別研修」で、不動産鑑定士から本格的に不動産評価を学びます。全国の資産税・徴収の担当者が集まり、最後に修了試験があります。私はこの研修の修了試験で全国1位(最上位のS評価)を取得し、当時、私の勤務していた国税局では初のS評価取得者でした。さらに評価専門官時代には、路線価の記者発表(報道発表)の準備・対応にも携わりました。評定する側・発表する側の両方を経験したからこそ、路線価をできるだけわかりやすくお伝えします。(税務大学校の不動産評価研修について:国税庁 税務大学校)
① 路線価とは?だれが・いつ・何のために決める数字
路線価とは、道路(路線)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことです。国税庁が毎年1月1日を評価時点として定め、その年の7月1日ごろに公表します。(出典:国税庁「令和8年分の路線価等について」)
路線価が使われる一番の場面は、相続税や贈与税を計算するときの土地の評価です。亡くなった方の土地や、贈与された土地がいくらの価値になるかを、この路線価をもとに計算します。正式には「相続税路線価」と呼ばれます。
たとえば路線価が「30万円」と定められた道路に面する100平方メートルの宅地なら、おおまかに30万円 × 100平方メートル = 3,000万円が評価額の目安になります(実際には土地の形状などによる補正が入ります)。
なお、路線価が定められていない郊外や農村部などでは、「倍率方式」という別の方法で評価します。
💡 豆知識:土地を評価する前に必ずすること
路線価を見るときは、まず評価倍率表を確認し、その土地が「路線価地域」なのか「倍率地域」なのかを判断するのが最初のステップです。評価倍率表の「宅地」欄に「路線」と表示されていれば路線価地域(路線価図を見て評価)、倍率(数値)が書いてあれば倍率地域(固定資産税評価額×倍率で評価)です。いきなり路線価図を見にいくと、実は倍率地域だったというケースもあるため、最初に評価倍率表で地域区分を確認することが実務の基本です。(出典:国税庁「評価倍率表(一般の土地等用)の説明」)
② 一物四価(五価)|同じ土地に複数の価格がある
土地には「一物四価」という言葉があります。1つの土地に、実勢価格・公示地価・相続税路線価・固定資産税評価額という目的の異なる4つの価格が存在するという意味です。さらに、これに基準地価を加えて「一物五価」と呼ぶこともあります。「どれが本当の値段?」と混乱しがちですが、それぞれ役割が違います。
| 価格の種類 | 決める主体 | 主な使いみち | 水準の目安 |
|---|---|---|---|
| 実勢価格 | 市場(売買当事者) | 実際の売買 | 時価そのもの |
| 公示地価 | 国土交通省 | 取引の指標・公共用地取得 | 100(基準) |
| 基準地価(基準地標準価格) | 都道府県(知事) | 土地取引の指標・公示地価の補完 | 正常な取引価格(7月1日時点) |
| 相続税路線価 | 国税庁 | 相続税・贈与税の計算 | 公示地価の約80% |
| 固定資産税評価額 | 市町村 | 固定資産税などの計算 | 公示地価の約70% |
ポイントは、相続税路線価は公示地価のおよそ80%、固定資産税評価額はおよそ70%の水準に抑えられていることです。課税に使う価格は、納税者に配慮してやや低めに設定されています。
なお、基準地価(基準地標準価格)は公示地価とは別の調査です。公示地価が国土交通省の土地鑑定委員会による毎年1月1日時点の価格(3月に公表)であるのに対し、基準地価は国土利用計画法施行令に基づき都道府県知事が毎年7月1日時点で判定する価格(9月に公表)です。評価時点が公示地価の半年後にあたるため、公示地価を補完し、その後の半年間の地価の動きを把握する役割を担っています。どちらも路線価や固定資産税評価額とは違い、実勢価格に近い正常な取引価格を示すのが特徴です。(出典:国土交通省「都道府県地価調査」)

③ 令和8年分のポイントと8年間の推移|コロナ禍を経て加速する上昇
2026年7月1日に公表された令和8年分の路線価は、全国平均で前年比プラス2.9%となり、5年連続の上昇となりました。この2.9%という伸びは、現在の算出方法になってからの過去最大です。(出典:日本経済新聞 2026年7月1日)
| 項目 | 令和8年分の内容 |
|---|---|
| 全国平均の変動率 | 前年比プラス2.9%(5年連続上昇・過去最大の伸び) |
| 上昇率が最も高い都道府県 | 東京都 プラス9.4% |
| 全国で最も高い地点 | 東京都中央区銀座5丁目 鳩居堂前 1平方メートル5,336万円(前年比プラス11.0%・41年連続で全国一) |
| 上昇率が全国トップの地点 | 長野県白馬村 村道和田野線 プラス32.7%(3年連続で全国1位) |
直近3年間の全国平均変動率を見ると、上昇幅そのものが年々拡大していることがわかります。
令和6年分はプラス2.3%、令和7年分はプラス2.7%、そして令和8年分はプラス2.9%と、3年連続で上昇率そのものが拡大しています。1つの年だけを見るより、こうして推移を追うことで「地価上昇のペースが加速している」という流れがはっきり見えてきます。(出典:日本経済新聞 令和8年分/令和7年分/国税庁 令和6年分報道発表資料)
さらに期間を広げて、令和元年分(2019年)から令和8年分(2026年)までの8年間の推移も見てみましょう。
8年間で見ると——令和元年分はプラス1.3%、令和2年分はプラス1.6%で5年連続の上昇でした。しかし令和3年分は新型コロナウイルスの影響でマイナス0.5%となり、6年ぶりに下落に転じています。(出典:日本経済新聞 令和元年分路線価/日本経済新聞 令和2年分路線価/日本経済新聞 令和3年分路線価)
令和4年分は、新型コロナの影響が緩和されて2年ぶりに前年を上回った回復の年でした(プラス0.5%)。そこから令和5年分プラス1.5%、令和6年分プラス2.3%と、コロナ禍で下落した路線価が、回復から本格的な上昇局面へと変わっていく過程だったことがわかります。(令和4年分の出典:国税庁「令和4年分の路線価等について」/令和5年分:日本経済新聞)
短期(直近3年)で見ると——上昇率は2%台に乗ってからも毎年拡大しており、「上昇が続く」だけでなく「上昇のペース自体が速まっている」のが直近のトレンドです。報道で挙げられている背景は、国内外からの投資マネー・都市部の住宅需要・訪日客人気です。この流れが続けば、都市部や観光地の土地をお持ちの方の相続税評価額は、さらに切り上がっていくことになります。
上昇率トップの白馬村に続き、2位は野沢温泉村(プラス31.3%)、3位は北海道富良野市(プラス28.0%)でした。いずれも世界的なスキーリゾートや観光地で、訪日客(インバウンド)や海外資本による需要が地価を押し上げています。(出典:日本経済新聞 2026年7月1日)
また、都道府県庁所在地の最高路線価は44都市で上昇し、横ばいが3都市(青森・津・鳥取)、下落はゼロで、下落した都市がなくなるのはバブル期以来およそ35年ぶりでした。上昇の背景には、国内外からの投資マネー、都市部を中心とした住宅需要、訪日客人気など複数の要因があります。
④ 路線価が上がると、相続税はどうなる?
ここが一番のポイントです。路線価は相続税・贈与税の計算に使われるため、路線価が上がると、同じ土地でも相続税の評価額が上がり、税負担が増える方向に働きます。

とくに都市部や人気観光地に土地をお持ちの方は、数年前と比べて評価額が大きく上がっているケースがあります。「うちは相続税なんて関係ない」と思っていた家庭でも、地価上昇で基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えてしまう可能性が出てきます。
もちろん、土地には小規模宅地等の特例など評価を下げられる制度もあり、実際の税額は個別事情で大きく変わります。ここでは一般的な仕組みの紹介にとどめますが、「地価が上がっている今こそ、一度わが家の土地の評価額を確認しておく」ことが、将来の相続であわてないための第一歩です。
✅ この記事のポイント
- 路線価は国税庁が毎年1月1日時点で定め、7月1日ごろ公表する「相続税・贈与税の土地評価」の基礎
- 土地には一物四価(五価)=目的の異なる複数の価格がある
- 相続税路線価は公示地価の約80%、固定資産税評価額は約70%が目安
- 令和8年分は全国平均プラス2.9%・5年連続上昇で過去最大の伸び。令和3年分(コロナ禍)はマイナス0.5%と8年間で唯一の下落だった
- 路線価が上がると相続税の評価額も上がるため、都市部・観光地の土地は要注意
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まとめ:地価上昇の今こそ、わが家の土地を見直そう
令和8年分の路線価は全国平均で過去最大の上昇となり、土地の価値が全体的に高まっています。うれしいニュースである一方で、相続税の面では負担が増えやすくなっているという側面も忘れてはいけません。
路線価は国税庁の路線価図・評価倍率表で、だれでも自分の土地の路線価を調べることができます。自分で学ばないと、だれも教えてくれません。このブログをきっかけに、少しでも土地と税金のことを知っていただけたら嬉しいです。
次回は、国税の「査察(マルサ)」について、令和7年度の最新データをもとに「どんな脱税が摘発されているのか」を解説する予定です。お楽しみに!
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▶この続きは国税の査察(マルサ)とは?令和7年度は82件・84億円を告発で解説しています。


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