確定申告・所得税

【令和7年分】確定申告状況を3年・5年で分析|譲渡所得や贈与税も

【令和7年分】確定申告状況を3年・5年で分析|譲渡所得や贈与税も
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【この記事でわかること】
・令和7年分の確定申告状況(最新データ)のポイント
・申告人員・納税額の3年/5年推移を比較図で分析
・納税人員が大きく動いた理由(定額減税の影響)
・土地・株式の譲渡所得の5年推移(資産市場の動き)
・贈与税を暦年課税と相続時精算課税に分けた内訳
・消費税・e-Taxから読み取れるこれからのトレンド

朝日に照らされる穏やかな海。確定申告のデータから税のトレンドを読むイメージ

2026年5月、国税庁から「令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況」が公表されました。確定申告というと「自分が申告する側」の話に思えますが、国全体の申告データには、いまの日本のお金の動きや将来のトレンドが映し出されています

私自身、元・国税局の職員として申告実務に携わってきました。とくに係長時代には、今回のような確定申告状況の報道発表資料について、元となる記事の作成や記者発表の準備・対応にも携わった経験があります。だからこそ、発表の裏側や「どこに注目して読むと面白いか」までお伝えできます。今回は5年間の推移と直近3年のトレンドを比較図つきで、できるだけやさしく分析します。

ライオン
確定申告の統計なんて、税理士さんが見るものじゃないの?ぼくらに関係ある?
トラ
それが大ありなんだ。件数や税額の動きを見ると、景気や制度改正の影響、これからのトレンドまで読めるんだよ。

① 令和7年分 確定申告状況のポイント

まず、令和7年分(2025年分・2026年3月申告)の全体像です。(出典:国税庁「令和7年分の確定申告状況等について」

項目令和7年分対前年比
所得税等の申告人員2,353万人プラス0.6%
納税人員(申告納税額がある方)628万人プラス21.3%
所得金額54兆9,617億円プラス7.4%
申告納税額4兆6,897億円プラス6.6%

申告人員は2,353万人と、平成28年分以降ゆるやかな増加が続いています。そして納税額の合計である申告納税額は4兆6,897億円と、前年をさらに上回りました。まずはこの「申告納税額」が3年でどう伸びてきたかを図で見てみましょう。

申告納税額の推移(所得税等) 4兆499億 4兆3,989億 4兆6,897億 令和5年分 令和6年分 令和7年分 単位:円(国税庁「令和7年分 確定申告状況」表2より作成)

申告納税額は令和5年分の約4兆円から、令和7年分の約4兆7,000億円へと3年連続で増加しています。所得金額(もうけの合計)も49兆円台から55兆円近くまで伸びており、全体としては申告する人の所得が増えていることがうかがえます。

② 3年と5年の推移を数字で読む

主要な数字を3年分の表にまとめると、次のとおりです。

項目令和5年分令和6年分令和7年分
申告人員2,324万人2,339万人2,353万人
納税人員668.7万人517.5万人627.6万人
所得金額49兆5,574億円51兆1,604億円54兆9,617億円
申告納税額4兆499億円4兆3,989億円4兆6,897億円

申告人員・所得金額・申告納税額は、いずれもゆるやかな右肩上がりです。ところが、納税人員(実際に納める税金が生じた人)だけが令和6年分でガクンと落ち込み、令和7年分で戻っているのがわかります。この動きにこそ、大きなヒントが隠れています。

納税人員の推移(申告納税額がある方) 668.7万人 517.5万人 627.6万人 令和5年分 令和6年分 令和7年分 令和6年分の落ち込みは定額減税の影響と考えられる(同 表1・2より作成)

さらに、国税庁の参考計表から5年間(令和3〜7年分)にさかのぼって見てみましょう。

項目令和3年分令和4年分令和5年分令和6年分令和7年分
申告人員2,286万人2,295万人2,324万人2,339万人2,353万人
納税人員656.8万人653.4万人668.7万人517.5万人627.6万人
所得金額46兆2,398億円46兆3,072億円49兆5,574億円51兆1,604億円54兆9,617億円
申告納税額3兆7,915億円3兆6,801億円4兆499億円4兆3,989億円4兆6,897億円
申告納税額の5年推移(所得税等) 37,915 36,801 40,499 43,989 46,897 令和3年分 令和4年分 令和5年分 令和6年分 令和7年分 単位:億円(国税庁「令和7年分 確定申告状況等について」表2より作成)

長期(5年)で見ると——申告納税額は一本調子ではなく、令和4年分に一度減少(3兆7,915億円→3兆6,801億円)しています。それでも5年間トータルでは約9,000億円の増加(3兆7,915億円→4兆6,897億円)となりました。申告人員は2,286万人→2,353万人と5年間一貫して増え続けており、国税庁も「平成28年分以降、緩やかな増加傾向」と説明しています。

短期(直近3年)で見ると——申告納税額は3年連続の増加で、増加が定着しました。背景には所得金額そのものの伸び(5年間で46兆円台→54兆円台)があります。納税人員だけは令和6年分の定額減税による一時的な急減を挟んでいるため、単年の増減よりも長めの期間で見ることが大切です。

③ 変動の大きいポイント|定額減税・消費税・贈与税

(1)納税人員のV字=定額減税の影響
納税人員は令和6年分に前年比マイナス22.6%と大きく減り、令和7年分はプラス21.3%と反動で戻りました。これは令和6年分に実施された「定額減税」(1人あたり所得税3万円)の影響と考えられます。本来なら納税額が生じる方も、定額減税で差引ゼロになったケースが多く、令和6年分だけ納税人員が一時的に大きく減ったのです。実際、統計上も「申告納税額がない方」が令和6年分にプラス53.5%と急増しています。(定額減税の出典:財務省

(2)消費税はインボイス以降ふえ続けている
個人事業者の消費税の申告件数は217万件(前年比プラス2.2%)、申告納税額は8,416億円(同プラス5.1%)。2023年10月のインボイス制度導入以降、件数・税額ともに年々増加傾向です。免税事業者だった小規模事業者が課税事業者になった影響が続いています。

(3)贈与税は「駆け込み」の傾向
贈与税の申告人員は47万人とほぼ横ばいですが、申告納税額は5,038億円(前年比プラス28.0%)と大きく伸びました。2024年からの生前贈与の加算ルール変更(3年→7年)などを背景に、まとまった額の贈与が増えている可能性があります。

消費税・贈与税それぞれの申告納税額を、直近3年間(令和5〜7年分)で比較すると次のとおりです。

申告納税額の3年推移 消費税(個人事業者) 贈与税 6,850 8,004 8,416 3,548 3,935 5,038 令和5 令和6 令和7 令和5 令和6 令和7 単位:億円・棒の高さは両者共通の縮尺(国税庁 各年分「確定申告状況等について」表5・表6より作成)

消費税の申告納税額は6,850億円→8,004億円→8,416億円と3年連続で増加し、インボイス制度導入(2023年10月)の影響がはっきり表れています。贈与税は3,548億円→3,935億円→5,038億円と、特に令和7年分で伸び幅が拡大しました。なお、令和5年分の贈与税の申告納税額(3,548億円)は、当時「平成13年分以来の高水準」と報じられており、駆け込み的な贈与がここ数年続いていることがうかがえます。(出典:国税庁 令和6年分確定申告状況等について(表5・表6)

こちらも5年間(令和3〜7年分)にさかのぼって、長期の動きを見てみましょう。数値はすべて国税庁の各年分報道発表資料(表5・表6)からの実数です。

消費税(個人事業者)令和3年分令和4年分令和5年分令和6年分令和7年分
申告件数113.5万件105.5万件197.2万件212.0万件216.8万件
申告納税額6,315億円6,277億円6,850億円8,004億円8,416億円
贈与税令和3年分令和4年分令和5年分令和6年分令和7年分
申告人員53.2万人49.7万人51.0万人47.4万人47万人
申告納税額3,327億円3,200億円3,548億円3,935億円5,038億円

長期(5年)で見ると——消費税は、インボイス制度が始まる前(令和3・4年分)は件数113.5万→105.5万件と減少し、税額も6,315億円→6,277億円と横ばいでした。それがインボイス初年度の令和5年分に件数197.2万件(前年比プラス86.9%)へ跳ね上がり、構造そのものが変わったことがわかります。贈与税も、令和3・4年分は3,200〜3,300億円台で足踏みし、令和4年分には一度減少(3,327億円→3,200億円)していました。

短期(直近3年)で見ると——消費税はインボイス定着後も件数・税額とも増加が続いています。贈与税は3,548億円→3,935億円(プラス10.9%)→5,038億円(プラス28.0%)と、伸び幅そのものが拡大しました。2024年(令和6年)1月に始まった生前贈与の7年加算・相続時精算課税の年110万円控除という制度改正と時期が重なっており、贈与の動きが活発になっていることが数字に表れています。(出典:国税庁 令和4年分令和5年分令和6年分令和7年分 各報道発表資料

秋の木立と道。制度の変化が申告のかたちを変えていくイメージ
トラ
数字が動いた裏には必ず理由がある。定額減税やインボイス、贈与ルールの改正——制度が変わると申告も変わるんだ。
ライオン
なるほど!ニュースの制度改正が、そのまま統計に表れてくるんだね。

④ さらに深掘り:譲渡所得と贈与税の内訳(5年の動き)

消費税は「事業者の税」、贈与税は「資産の移転の税」と性質が異なります。ここからは、資産の動きがよく表れる土地・株式の譲渡所得と、贈与税の内訳(暦年課税と相続時精算課税)を、それぞれ分けて5年間で見ていきます。

(1)土地・株式の譲渡所得|5年推移
確定申告のなかでも、土地や株式を売った利益(譲渡所得)は、景気や資産市場の動きを映す鏡です。所得金額の5年推移は次のとおりです。

所得金額令和3年分令和4年分令和5年分令和6年分令和7年分
土地等の譲渡4兆8,515億円5兆4,392億円6兆832億円6兆4,993億円6兆9,394億円
株式等の譲渡4兆5,639億円4兆630億円5兆6,641億円8兆854億円6兆8,603億円
譲渡所得(所得金額)の5年推移 ■ 土地等 ■ 株式等 4.9兆4.6兆 5.4兆4.1兆 6.1兆5.7兆 6.5兆8.1兆 6.9兆6.9兆 令和3令和4令和5令和6令和7 単位:兆円(国税庁 各年分「確定申告状況等について」表4-1・表4-2より作成)

土地等5年連続で所得金額が増加し、令和3年分の4兆8,515億円から令和7年分は6兆9,394億円へ。国税庁の資料でも令和7年分は前年比プラス6.8%とされており、地価の上昇が続くなかで土地取引に伴う所得の申告が増えていることがうかがえます。一方、株式等年による振れが大きいのが特徴です。令和6年分に8兆854億円まで膨らんだあと、令和7年分は6兆8,603億円へ減少しました(国税庁の資料では所得金額はマイナス15.2%、ただし所得のあった人員はプラス0.2%と増加)。相場の動きに左右されやすい資産であることが数字に表れています。(出典:国税庁 令和7年分令和6年分令和5年分令和4年分令和3年分 各報道発表資料 表4-1・表4-2)

(2)贈与税の内訳|暦年課税と相続時精算課税を分けて見る
贈与税は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つに分かれます。申告納税額の5年推移を内訳ごとに見ると、次のとおりです。

申告納税額令和3年分令和4年分令和5年分令和6年分令和7年分
暦年課税2,840億円2,693億円2,985億円3,274億円4,215億円
相続時精算課税487億円507億円563億円661億円823億円
合計3,327億円3,200億円3,548億円3,935億円5,038億円

贈与税は暦年課税が全体の8割超を占める柱です。令和7年分は暦年課税が4,215億円(前年比プラス28.7%)、相続時精算課税が823億円(同プラス24.6%)と、両方が大きく伸びました。とくに令和6年分から令和7年分にかけての伸びが目立ちます。これは、2024年(令和6年)1月の改正——暦年課税の相続財産への加算期間が3年から7年へ延長され、相続時精算課税には年110万円の基礎控除が新設された——という制度変更の時期と重なっています。制度が変わると納税額の動きにも表れる、という一例です。(出典:国税庁 令和7年分ほか各年分の確定申告状況等について 表6)

⑤ この数字から見える、これからのトレンド

3年間の推移からは、いくつかの流れが読み取れます。

1つ目は、e-Taxの定着です。令和7年分はe-Tax利用率が77.1%(4人に3人)に達し、確定申告はほぼ「オンラインが当たり前」になりました。国税庁は令和8年分から確定申告会場の休日相談を終了する方針で、この流れは今後さらに加速しそうです。

静かに流れる川。制度と数字が移り変わっていく時間をイメージ

2つ目は、申告する人の所得の増加です。所得金額が3年で49兆円台から55兆円近くまで伸びており、株式や不動産などの資産からの所得を申告する人が増えていることも背景にあります。今後も、投資や副業の広がりとともに確定申告をする人は増えていくと考えられます。

3つ目は、制度改正が数字を動かすという点です。定額減税・インボイス・贈与ルールの改正と、ここ数年の制度変更が申告データにくっきり表れました。制度の動きを知っておくことが、自分の家計を守る第一歩になります。

✅ この記事のポイント

  • 令和7年分の申告人員は2,353万人・申告納税額は4兆6,897億円で3年連続増加
  • 納税人員は令和6年分に急減→令和7年分に回復(定額減税の影響)
  • 消費税はインボイス導入以降、件数・税額とも増加傾向
  • 贈与税は申告納税額がプラス28.0%と大きく増加
  • e-Tax利用率は77.1%に達し、オンライン申告が定着

まとめ:統計は「未来を読む地図」になる

確定申告の統計は、一見すると無味乾燥な数字の集まりです。しかし読み解くと、定額減税やインボイス、贈与ルールの改正といった制度の動きと、私たちの暮らしのつながりが見えてきます。

数字の裏側を知ることは、これからの家計や資産づくりを考えるうえで大きな武器になります。自分で学ばないと、だれも教えてくれません。このブログをきっかけに、税と数字に少しでも親しんでいただけたら嬉しいです。

次回は、以前から予告している「生前贈与の3年→7年加算ルール|2024年改正」について解説する予定です。今回の贈与税の伸びとも深くつながるテーマです。お楽しみに!

🔭 もう一歩ふみこむ

▶この続きは生前贈与の「3年→7年」加算ルール|2024年改正をやさしく解説で解説しています。

ライオントラ

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みるきー
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≫脱≪安定を求めし者
税務署・国税局に通算16年超勤務し、税務調査担当係長等を歴任。相続・贈与・譲渡といった資産税の実務にも精通。現在は民間企業へのキャリアチェンジも経験し、信託関係の事務に従事しています。「お金のことって、自分で学ばないと誰も教えてくれない」——そんな実感から、このブログを始めました。3人の子育てを経験しながら、育休も3回取得。転職・税金・子育てという、30代・40代がリアルに向き合うテーマを、むずかしい言葉を使わず、スキマ時間で読めるブログとしてお届けしています。【保有資格】1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)/宅地建物取引士/一種外務員資格/家族信託専門士
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